チリ

■チリの歴史が体験できる日 2007.6.19 update

チリは16世紀から1810年9月18日に独立するまでスペインの植民地であり、ヨーロッパ色の濃い建物がたくさん建てられた。20世紀初期にも、まだ街のあちらこちらにヨーロッパ様式の建物が造られ、その多くはスペイン系上層階級の住居であった。天井は高く、4mもある。当時の人々は、夜、ドアを閉めて就寝してから翌朝目覚めるまで窒息しないよう、室内には十分な空気を確保しておかなければならないと信じており、そのため天井を多角したとされる。それらの建物の中ではきっと様々な物語が生まれ、歴史に刻まれていったことだろう。

このようにロマンを醸し出す歴史的な建築ではあるが、内部は隙間だらけで、冬は温まりにくく底冷えがし、また老朽化が進んでいるため維持するのが大変である。城館のようなたたずまいであっても、あまり実用的でなく、その多くが都市開発の名目で取り壊され、また、取り壊しを免れても、あまり実用的ではなく、その多くが都市開発の名目で取り壊され、また、取り壊しを免れても、地震に耐えられずに朽ちていったものである。

幸いにも現在まで残った建物は、国の機関や民間企業に使用されているケースが多く、維持管理がしっかりされていて、チリらしい町並みの中心的存在であり、人々を穏やかな安らぎへと誘う。しかし、これらの建物は、数年前まで関係者以外立ち入り禁止で、特別な理由がない限り、中に入ることはできなかった。国民共有の歴史的遺産をもっと知りたい、理解したい、味わいたいと多くの人が願ったことだろう。

こうした国民の気持ちが伝わったのか、1999年の法律で5月の最終日曜日が「国家遺産の日」と定められ、更に翌2000年からは、「国家遺産の日」に建物内部が一般市民に公開されることとなり、その日一日は自由に内部を見学し、そこで働いているスタッフに案内してもらえるようになった。

案内係の中には当時の服装をして歴史上の登場人物に扮して説明する人もいるが、もう既に歴史的存在そのものになっている人もいる。運が良ければ、貴重な逸話や裏事情も聞ける。もっと運のいい人は、現職の大統領に案内されることだってある。今年、大統領官邸のモネダ宮殿では、案内係の中にミチェル・バチェレ大統領が交じっていたからだ。

国家遺産のどの建物も内部はやはり冷やりとしていて、足を踏み入れた瞬間、タイムスリップしたような錯覚に陥る。また、裁判所では思わず背筋が伸びる。この特別な日には、裁判官が案内してくれるので、天秤に乗せられて正しい行いをしているかどうか量られている気がする。

首都サンチャゴだけでも見学できる建物は220ヶ所以上あるが、人気のある建物の前にはやはり長蛇の列ができる。一番人気は造幣局。金の延べ棒や、裁断される前のお札がたくさん展示されている。そんなにあるなら少しくらい分けてくれてもいいのに・・・と思うのは、私も含めそこを訪れた全員の感想に違いない。

今年は大統領官邸であるモネダ宮殿も1位、2位を争う人気だった。ちなみに、ここは教会と同様に「国家遺産の日」でなくても入れる。ただし、中庭を通り抜けるのみで、大統領の執務室や会議室などには入れない。ラゴス前大統領の就任以来、普段でも中庭の見学が可能となった。モネダ通りからアラメダ通りに向かって中庭を通り抜けできる。

「国家遺産の日」の見学者は、恋人、友人同士に加え、この日を待っていた観光客の姿が目立つが、なんといっても家族連れが大半である。歴史好きなのか朝早くから親をひっぱってやってくる子、逆に教育ママに連れてこられる子などいるが、どの子供も案内係の話を真剣に聞き、すごい体験ができたと喜んでいる。こうした場所を訪れることによって将来何になりたいかが決まるほど、子供達への影響力は大きいようだ。

チリの歴史を肌で感じることのできる1年に一度の貴重な一日である。見学時間は、午前10時から午後3時まで。

-文中の画像-
画像上右:国家遺産の日に配布されたパンフレット。内容は建物の写真と住所。
画像上左:サンチャゴ裁判所。1858年〜1911年、2期に分けて建設工事が行われた。当初から裁判所であった。
画像中右:外務省。1857年に着工、数多くの難題を乗り越えて1876年に完成。当時は国会議事堂であったが、現在は外務省として利用されている。
画像中左:1913年〜1917年の間に建てられた4階建ての建物。現在は証券取引所となっている。
画像下右:サンチャゴ州庁舎。1902年完成。
画像下左:モネダ宮殿(建設期間:1784年〜1805年)。当時は造幣局であったが、現在は大統領官邸。

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画像左:郵便局本社の中にあるエレベーター。古い建物にモダンなエレベーターのコントラスト。吹き抜け天井の高さに注目。
画像中:左を教会、右を郵便局本社に挟まれた近代的な建物の共存。
画像右:老朽化が進み、壁のみ残されたヨーロッパ的建物。修復される日を待つ。


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