ラオス

■♪おお〜ドゥワンチャンパー〜 ラオス人の魂の花 2007.11.6 update

チャンパーの花は、南の島を想起させるハワイの首飾りとして、または「プルメリアの伝説 天国のキッス」(主演:松田聖子/中井貴一 1983年)の映画の表題として、あるいはアロマテラピーのエッセンシャルオイル「フランジュパニ」の原料として知られる。

チャンパーは、学名をプルメリア(Plumeria)といい、和名をインドソケイという。ラオスで最も親しまれている花である。プルメリアを国花と定めているのは世界でラオスとニカラグアの2ヵ国ある。「ドゥワン」は「丸いもの」や「漏斗(ろうと)状の形」を表す類別詞。ドゥワンチャンパーでチャンパーの花の意。「ドゥワン」を「手紙、信書、公文書」ととればチャンパーの便りという意味にもとれる。

《チャンパーの4類型》
西インド諸島、メキシコ、ベネズエラが原産で原種は7〜8種類あるといわれている。ラオスには4種類のチャンパーがあるが、この分類はラオス独自の分類で原種の区分とは必ずしも一致しない。白チャンパー(ランサーン王国の花)、赤チャンパー、黄チャンパー、ラトムチャンパー(涙の花)の4種類だが、白チャンパーが国家のシンボルとしてよく用いられる。

(1)白チャンパー(別名;ランサーン王国の花)は、ラオス国営航空のシンボルマークで知られる。一年を通じて花を咲かせるが、実はつけない。葉は30センチ程度で細長。苗をつくるには、枝を折り苗床か地面に挿せばよい。やや大き目の石と一緒に植えて土をかぶせ、植え込みの周りに石を置くとよい。温暖で多少乾燥した土地や小高い丘を好む。高さが8メートル程になる。ラオスでは北から南までメコン河に沿って植えられている。またプーシー(ルアンパバーン県)、ロオンマー(サムヌア県)、ムアンカム(シェンクワン県)、ホーパケオ寺院、国立博物館、タートルアン(ビエンチャン)、ワットプー(チャンパーサック県)、パープーカオケオ寺院(コーン島)などが見どころとして知られる。ボリヴェン高原(アタプー県)とムアンプワン高原(シェンクワン県)には見られない。

(2)赤チャンパーは、白チャンパーとほぼ同じ形状であるが葉の長さがやや短い。一年を通じて花を咲かせ、実をつける。10〜20粒の実を水牛の角のように実らせる。増やす場合は挿し木してもこの種を植えても、どちらでもよい。ルアンパバーンやビエンチャン、サワンナケート、パクセーなど都市部で見られるが、その他の地域で探すのは難しい。17〜18世紀にインドネシアのジャワ島との交易がありそのころ伝えられたといわれる。先月9月9日、ラオス退役軍人連盟は創立5周年を迎え、赤チャンパーを連盟の公式マークにすると発表した。連盟会長のワンカム・サイムンティ大佐は、「赤チャンパーを選んだ。チャンパーは国花で、数百年にわたり伝統行事に使われてきた。赤を選んだのは解放戦争での兵士たちの犠牲を表す」とコメントした。同連盟は造花を1本6,000キープで販売する。退役軍人への感謝の気持を表すために、また国家の偉大な勝利を祝福するために、誰でも買い求めることができる。造花には2種類あり、ひとつは花が開いたもので退役軍人と国家に命をささげた兵士たちを表す。もうひとつは花のつぼみで、未来の国の防衛を志す兵士たちを表す。

(3)黄チャンパーは幹の高さが3〜4メートルにしかならず、葉が短い。4月にのみ花を咲かせる。実をつけない。ルアンパバーンとビエンチャンにのみ見られる。植樹の祭には、湿気が多く温暖なところがよいが、沼があるような湿地は適さない。

(4)ラトムチャンパー(別名;涙の花)は高さが3〜4メートル、葉は短く丸みを帯びている。白チャンパーに比べて花の中心の黄色が弱く、花びらがあまり重ならない。一年を通じて花を咲かせ、実をつける。挿し木しても種子を植えても、どちらでもよい。成長が早いが、乾燥地ではやや遅い。この花は死者や愛する人の死を嘆き悲しむ意味で植えられる花である。タイなど一部の地域では、この花は再び逢うことのない離別の愛を象徴するとされる。死や悲しみを連想させるゆえに涙の花とも呼ばれる。幸運をもたらす花として植えられることはない。住宅の近くや神聖な場所に植えられることはない。仕事や旅行で遠方に出かけるときに、この花を飾ったり、贈ったり、無事を祈る儀式に使われることは忌避されている。この樹の下を通ると不幸が訪れるとも言われる。

《仏教とチャンパー》
黄色は仏教徒の色である。白色は寛大、純真、広々とした心の平安、苦痛のない、互いに妬みや嫌がらせのない人間関係を表す色である。チャンパーの花は5つの花びらを持つため、これに仏教の五戒がしばしば重ねられる。

(一) パーナーティバーット 殺してはいけない。互いに争ったり、傷つけあってはいけない。
(二) アティナターン 他人のものを盗んではいけない。奪ってはいけない。
(三) ムサーワータ 嘘をついてはいけない。密通、扇動、中傷、侮辱、軽蔑してはいけない。怒らせたり、名誉を傷つけてはいけない。
(四) カーメースニットサチャーン 契約や約束事があれば、それを破ってはいけない。たとえば自分の妻、夫以外と交わってはいけない。
(五) スラメライニャマットサパマー 注意力をなくしたり、まったく正気でなくなる類ものを食べたり飲んだりしてはいけない。たとえば自らの力や信条にうぬぼれるような酒、麻薬、毒を飲んではいけない。

チャンパーの花は敬虔な花として仏への献花に用いられる。またヒーットシップソーン(12の年中行事)とコーンシップシー(長老の教え14ヵ条)にあるラオスの習慣において、チャンパーの花はとりわけ重要な役割を担っている。正月やバーシー(仏教儀礼)での聖水と小さいモニュメントの装飾に用いられ、親や兄弟姉妹への敬愛と来客への幸運の象徴となる。また僧侶や国家の犠牲者への敬意と祈りを表すとされる。

《音楽とチャンパー》
チャンパーの花を歌った歌で最もよく知られているのは「チャンパー・ムアンラオ(故郷の花チャンパー)」である。教育スポーツ省副大臣で作曲家としても著名なウッタマ・チュラマニー氏が1942年に作曲し、国の代表的な歌となった。舞踊の振りがあり、歌とともに広く人目に触れるようになったため、チャンパーの花がしだいにラオ人の誇りを象徴する花になったようだ。左手にチャンパーの花を持った女性が1人または3人で踊る。

「チャンパー・ムアンラオ(故郷の花チャンパー)」
作詞:ナハープーミー・チッタポン
作曲:ウッタマ・チュラマニー

ああ チャンパーの花 君を見ると 心を励ます道を知る
君の香りに 力がわいてくる いつか父が植えた 庭に咲いた花が目に浮かぶ
寂しいとき 心をなぐさめる花 君よ チャンパーの花
昔から 私に寄りそって咲いた花

君の香りが 郷里の人の心を結ぶ 寂しいとき 清らかな君の香を探す
チャンパーが香る すると昔の恋人を思い出す…註(1)
いつか 君は美しい花になった 君よ チャンパーの花
ただかけがえのない 私の心の故郷の花

ああ チャンパーの花 ラオスの花 星のように美しい花
ラオス人の心をなぐさめる花 ランサーン王国の地に咲いた花
故郷を追われ 遠く異国の地に暮らすとき…註(2)
寂しさを分かち合う 君は生涯の友になる 君よ チャンパーの花
この上なく美しい花 故郷に幸運をもたらしたまえ (拙訳)

註(1):「昔の恋人」の箇所が「古い友人」と言い換えられて歌われることが多い。
註(2):「故郷を追われ」の箇所が「故郷を後にして」と言い換えられて歌われることが多い。

《文学とチャンパー》
チャンパーの花にまつわる伝説として最もよく知られているのが「チャンパーシートーン(4本のチャンパーの樹)」である。ラオス文学が花開いた17世紀、ランサーン王国時代に作品化された。国王の第二夫人に対するアキー夫人の嫉妬の物語である。

「チャンパーシートーン(4本のチャンパーの樹)」のあらすじ
アキー夫人はタキン村に生まれた。あるときタキン村が鷹に襲撃され多くの人が死んだ。アキー夫人はチュラニー王が治めるベンチャン王国に連れてこられ、やがて国王と結婚した。のちに国王の第二夫人となったカムコンが妊娠し出産したため、アキー夫人はカムコンの4人の赤ん坊を連れ去り川に捨てた。幸運にも赤ん坊は国王の庭師の老夫婦に拾われた。アキー夫人は赤ん坊が生きていることを知り、毒をもらせて殺した。老夫婦は死んだ赤ん坊を庭に埋めた。そこからチャンパーの樹が育ち花を咲かせた。4本のチャンパーの樹は青々と茂り国中を芳香でつつんだ。アキー夫人がそれを知って護衛の兵士にこの樹を切らせ、川に捨てさせた。不思議なことに4本のチャンパーの樹は川をさかのぼって川の上流にある寺院に流れ着いた。僧侶が川のチャンパーの樹を見つけるとその花を手にとった。花びらを1枚ちぎると血が流れるように白い樹液が流れ出た。僧侶が花を聖水に生けると4枚の花びらが赤ん坊になった。4人の赤ん坊は僧侶とともに暮らして、あらゆる芸術と学問とを習得した。末っ子がもっとも強かった。末っ子は人を指差してはその人の吉凶を言い当てた。僧侶は少年になった3人の兄を3つの王国政府にそれぞれ推挙した。また末っ子を両親の住むベンチャン王国とタキン王国に推挙した。

《世界のプルメリア》-参考-
ラオス名 Champa  
中国名 Zhanba(占芭)  
インド名 Champa、またはTemple Tree、Pagoda Tree 註(1)
カンボジア名 Champi  
スリランカ名 Araliya、またはPansal Mal 註(2)
タイ名 Lilarwadee(数年前にLantomから名称変更)  
フィリピン名 Kalachuchi  
インドネシア名 Kembang Kamboja  
オーストラリア名 Dead man's fingers 註(3)
ニカラグア名 Sacuanjoche  
和名 Indosokei 夾竹桃(きょうちくとう)科インド素馨(そけい)属 註(4)
英語名 Plumeria、またはPlumeria acutifolia、Frangipani 註(5)

註(1):インド名の「テンプル(Temple )ツリー」、「パゴダ(Pagoda)ツリー」は寺院や墓地の近くに植えられることが多いことから。
註(2):スリランカでは樹液を歯痛薬に利用する。樹皮は弛緩剤、利尿薬とされ、性病の薬に用いるところもある。
註(3):オーストラリア名の「デッドマンズ・フィンガー(Dead man's fingers)」は、幹と枝が死者の指に見えることから。
註(4):和名の「そけい(素馨)」は、中国の絶世の美女の名に由来か。夾竹桃は竹の葉とよく似た葉を持つことから。
註(5):英語名の「プルメリア(Plumeria)」はフランス人修道士で植物学者のプリュミエ(Charles Plumier、1646-1704年)を記念したもの。「フランジュパニ(Frangipani)」はイタリアのフランギバニ公爵から。数種の花の香りをブレンドして16世紀にプルメリアに似た香料を作り出した。

-文中の画像-
画像上右;白チャンパー(ランサーン王国の花)
画像上左;赤チャンパー、退役軍人連盟のマーク
画像中右;ラトムチャンパー(涙の花)
画像中左;チャンパーの舞踊=画像提供;城戸賀代(芸術教員養成学校)=
画像下右;チャンパーの楽譜
画像下左;ラオス国営航空。尾翼に印されたロゴはチャンパーの花。=画像;Wikipedia より=

参考資料:サーニャン・ドンデン著「ドックチャンパー」『ムアンラオNo,32』(国家観光庁、2007年3-4月号)


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