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水かけ祭りとして知られるラオ正月は、毎年4月中旬に3日間(地方によっては7日間)行なわれる。初日は大晦日にあたり、2日目が旧年と新年の間の日、3日目が元旦にあたる。今年(仏歴2550年/西暦2007年)は4月14〜16日が祭日、4月17日、18日が休日とされた。ラオス独自の暦はすでに使われておらず、いまは仏暦と西暦とが使われている。暦上の数字が更新しない「新年」を祝う。
ビエンチャンには独自の伝統行事というものがなく20世紀になってから全国各地の新年の儀式が習合して起こり、ここ数十年ほど行なわれているものらしい。新年の祝い方は地方色が濃く、また家庭ごとにも異なるので一般化するのは難しい。よって以下に記すのはビエンチャンの正月の一例である。
新年を迎えるこの時期には誰でもかまわず水を掛けていいことになっている。首筋から背中の中に水を注ぎ入れるようにして、祝い事を述べつつ数回ペシペシペシと濡れゆく背中を軽くたたくようにする。
民謡からヒップホップまで道端ににぎやかな音楽があふれ、ビールやジュースを飲みながら通行人を待ち構え、水鉄砲や手桶、ホースの水が浴びせられる。道を行くバイクや乗用車、トゥクトゥク(三輪バイク)、公共バスが一時停止して水を掛けられ、ビールを振る舞われることもある。小さいビニール袋に水を入れてボール状にして投げる者や、赤や青の色水、ゼリーが混ざった水、氷を投げる者もある。
ベビーパウダーで顔や頭の一部を白くする。中にはススで黒くしたり、赤や青でペイントする姿も見られる。麦わら帽子のような袈裟の大きい南国調の帽子とアロハシャツを着る人が多く、正月の雰囲気を演出する。正月でありながらシン(伝統的な民族衣装で巻きスカート)を着る女性の姿は普段より少なくなる。この時期の必需品はビニール袋。携帯電話や財布など自己防衛が暗黙の了解で、大切なものが濡れても壊れても文句が言いにくい。
《正月1日目》
家庭内では、白い花とロウソク2本とを葉でくるんだものを、表玄関、裏玄関、台所に供える(家を守る神様に)。また炊事場の鍋や風呂場に備えつけの甕(カメ)に白い花が結わえられる(食や水の恵みを祈願)。自家用車やバイクに黄色い花とロウソクが結わえられる(交通安全を祈願)。
10時30分:近くの寺から僧侶が到着。この日に来たのは7人。村の宗教係1人。読経して途中で米と菓子、それから紙幣に米を包んだものがまかれ、集まった30人ほど(親類と近所の人)がこれを拾った。
11時30分:僧侶に食事が振る舞われる。もち米、スープ、ラープ、生野菜、ゆで野菜、揚げ物、ナムワーン、果物、タバコ、ジュース、菓子など。僧侶たちが食事している間に、集まった人たちだけ(僧侶なし)で読経とバーシー(伝統的な祈りの儀式)。大皿の上にロウソクと花を置き、さい銭する。
12時00分:僧侶がもう一度読経して終了。僧侶が退場。その後みなで昼食。僧侶のお下がり(食べ残し)も有難くいただく。アルコール解禁。
14時00分:家族の代表が寺へ。持参するものは、ロウソク※(1)、聖水※(2)、木綿糸(2メートル以上)、砂、花、お盆、ロウソク、ライター、供え物※(3)。
寺に着くとまず境内の前面に並べられた複数の甕に持参した聖水を注ぎ分ける。境内の隅に備え付けられた五重の塔のような造形物の中に持参した供え物を入れ分ける。
境内には、床から2メートルほどの位置に木綿の糸が四方八方に張り巡らされている。自分の座る場所を決めたら頭上の木綿糸に持参した木綿糸を結わえつける、盆に砂を盛って花を添え、ロウソクをたくさん立てる。このうち2本に火をつける。
※註(1)【ロウソク】:1本1メートルほどある細長いロウソクが家族に配られる。これで頭の周囲を測りロウソクに軽く印をつける。同様にのど元からヘソまで、ひじから指先まで測り印をつける。親指大の間隔でロウソクの端から自分の年齢の分だけ数を数えながら印をつける。それぞれが印をつけてから家族全員のロウソクを1本に束ねてねじり込みこれを寺にもっていく。
※註(2)【聖水】:井戸水を使う。しかし近年では水道水も使われている。黄花とスダチ、生姜のすり身、薬草、乾燥果実などを混ぜたもの、それと香水が入っている。
※註(3)【供え物】:十二支を描いたのぼり、さい銭、線香、花、菓子、果物、種々の料理、タバコ、葉を三角に折って串に刺したもの等。
《正月2日目》
午前中に寺を歩いて廻る。いくつ寺を廻るという決まりはなく、多ければ多いほどいいらしい。小さいバケツを持参。道端で聖水が売られている(1杯2,000キープ)。
小さい仏像が境内の庭に並べられており順に聖水を掛ける。花を花ごとバケツの聖水に浸して花についた水を振り掛けるようにして聖水を掛ける。仏像の台座からこぼれ落ちる水滴にご利益があるとされ、手ですくって自分の頭や身体につける。あるいは別に持参したもう一つのバケツにとってこの水を家に持ち帰る。龍の背中が雨どいのようになったものがあり、これは尾っぽの方から水を掛ける。
境内の大仏には、できるだけ高い位置に水がかかるようにする。境内の中は土足厳禁。女性も入ることができる。シンをはいていなくともよい。近くに座っている僧侶には、肩や足に水を掛ける。念仏を唱えてもらってから手に木綿の腕輪をしてもらう。これは右手でも左手でもよい。このとき差し出さなかったもう一方の手で祈りのポーズをする。両膝は床につける(立ったままはバツ)。
境内の庭でコインが盛られた皿を購入して(喜捨、定価なし)小さな鉢に1枚ずつ喜捨する。ラオスにはコインがないためタイの通貨を使用している。
おみくじを引く(喜捨、定価なし)。割りばし立ての割りばしのようなくじ棒から1本引く。容器を両手で持って上下左右に傾けながら振り1本を落とす。くじ棒には番号がかいてあり、同じ数字の紙を僧侶から1枚もらう。
午後は車の荷台に5人で乗り込み寺をハシゴした。車には水を常備して沿道で待ち構える水掛隊を迎撃しつつ街を凱旋した。
《正月3日目》
午前中は食事の準備。兄弟姉妹、親戚がそろって昼食。ビールあり、音楽あり、水かけあり。通行人からの迎撃あり。
15時00分:法要。そろって寺へ行く。墓から骨壷を出してそれぞれ布で覆ったふたを取る。木綿糸で骨壷をつなぐ(橋渡す)。年に一度の再会。骨壷の中に香水を振り掛ける。僧侶と村の宗教係とを呼んで読経。僧侶には飲み物がまかなわれる。背中に水がかけられる。
小山をつくって水を掛けて固め、白い粉をかける。頂上にはバナナの葉を立てる。階段を作る。竹ひごに赤、青、黄、白、ピンク、緑、紫、橙、水色などの色紙を巻きつけたものと十二支ののぼりとを山肌に立てる。ふもとは椀1杯分の小山をたくさん作って一周めぐらす。集った人がそれぞれ欲しい子どもの数だけつくるとも。小山にはロウソクを1本ずつ立てて火をつける。
骨壷に新しい布をかぶせて納骨。また来年、会いましょう。
画像説明文
画像上段右:沿道で通行人を狙い撃ち
画像1日目左:供え物を、五重の塔のような造形物の中に
画像1日目右:家族全員が1本のロウソクに
画像2日目左:聖水
画像2日目右:こぼれ落ちる水を頭に
画像3日目左:糸で結ばれた骨壷たち
画像3日目右:一族でひと山つくります |