■宗教色濃くも楽しいイースター 2006.5.16 update

各都市に教会があり、世界遺産でも修道院が有名なルーマニア。ルーマニア人の約90%は 東方正教会(Eastern Orthodox)に属するルーマニア正教会です。同じキリスト教のカトリックやプロテスタントと比べ日本では馴染みがない正教会ですが、大きな特徴はマリア像などの偶像ではなく「イコン」というマリアやイエスなど描かれた絵を崇拝すること。また、祝祭日の前に動物性食品を避ける断食習慣がよく守られているということです。彼らの信仰深さは教会の前を通るだけで十字を切る人が多いことからも垣間見られ、そんなルーマニアのキリスト復活祭「イースター」はクリスマスよりも信仰心を感じる宗教色の濃い行事です。

今年のイースターは4月23日。イースターの夜の祝いの食卓に向け各家庭では毎年大忙しです。まずはイースターエッグの製作。イースターシンボルとして大量のタマゴをどの家庭でも買い込み、食用絵の具で色づけ、田舎の地域では野菜と一緒にタマゴを煮込む自然染色をします。タマゴを使ったお料理、マヨネーズを使用する伝統サラダ、肉料理と仕込みは続きます。断食期間の調理だから味見は無し!というママが多く、又もや彼らの厳格さそしてお料理の上手さに感動する一面も多く見られます。

中でもケーキ作りはママの腕の見せどころ! 元々故人のために小麦の粒を煮て砂糖と混ぜて作る簡素な丸いケーキを作る習慣があり、その一種が現在のイースターケーキであるパスカ(Pasca)となりました。シンプルなパウンドケーキ生地に自家製ジャムやクリームやチーズを中に、そして飾りつけに表面に十字架を形どるのが特徴です。どんどん焼き上がるケーキを楽しみに、イースターの日を迎えます。

ルーマニア人の伝統的なイースターの過ごし方はやはり修道院へ行くこと。シンプルな生活を営む修道女達が一般人を個人宅に受け入れ神聖な日を過ごして心身清めるのです。イースター前日の深夜、修道院には(街の教会にも)大勢の人が集います。聖職者の語りに耳を傾け、聖歌の合唱、そして夜中12時になると一斉に鐘が奏でられ、聖職者が「キリストは復活した!」と告げ人々は「本当に復活した」と応えるのです。

修道院からはろうそくの光が運ばれ人々に配られ、人々はそれを他の人に分け与え、その聖なる光を手に修道院の周りを周るのです。オレンジ色の光が修道院の壁を照らし、修道院から流れる聖歌の合唱に合わせゆらゆらと揺れて流れていく様は本当に幻想的、老若男女問わずこの集まりに集う一面は日本の初詣を思い出させもしますが、最近の初詣では減ってしまった厳かな雰囲気が感じられるイベントです。

更に自分のろうそくの聖なる光を絶やさず自宅の祝いの食卓まで持って帰るのも大切な習慣なのですが、これにはあるエピソードが。ユダヤ人の有名な聖職者による言い伝えで、聖地イスラエルのキリストの墓にイースターの夜多くのキリスト教信者が集まっていた時、正教会の信者のろうそくにだけ偶然光が灯ったと言われています。正教徒は選ばれた宗派、その選ばれた者への聖なる光を守らなくてはいけない、そんな想いを人々は強く持っているそうです。

さて、イースター後も「キリストが復活した」という文句を挨拶代わりに使う人たち。そしてイースターから40日後のキリスト昇天の日にも「キリストは昇天した!」、「本当に昇天した!」、人々はまたこんな風に挨拶し合いイースターと同じようにお祝いをします。つくづく敬虔だと感心すると同時に、そんな行事ごとに仕事も中断する彼らを見ていると、信仰深いのは楽しいことなのかもしれない、と思ったりもします。

画像右上:正教会のイコン。イコンに描かれるのは宗教画家の思い思いのマリア様やイエスである。
画像左上:丸いケーキがイースター伝統ケーキのパスカ。細長いケーキもルーマニアの伝統行事に必ず登場するコゾナック。
画像右中:修道院地方も早春のイースターには春が感じられ穏やかな休暇が過ごせる。
画像左下:イースター前夜から当日深夜の修道院での集いの様子。聖なる火を自宅へ運ぶ。
画像右下:聖なる光と共に頂く、深夜からの盛大なイースターの食卓。


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