|
日本でクッキングオイルといえば一般的にはサラダオイルが使われていますが、ここフィリピンではココナツオイルが使われています。このココナツオイルは現在フィリピンが国を挙げて取り組んでいる“ココナツ産業”で作られる製品のひとつです。日本の方が過剰に摂取すると一時的におなかがゆるくなるなどの症状もありますが、コレステロール値が低いなどの利点があり、近年では欧米諸国でも注目されているオイルのひとつでもあります。
そして、食用以外に洗浄剤、つまり石けんの原料としては欠かせないオイルとなっているのは以外に知られていません。石けんを作る時の固さ、泡立ちには必要不可欠なオイルなのです。ずいぶん前から私は趣味で石けんを作っていました。フィリピンで採れるココナツオイルは製品の質もよく、石けんつくりにはとても適しています。
話は少し変わりますが、大学を卒業してもなかなか仕事に就けないこの国で、小学校だけ、もしくは高校を卒業しただけなどの子供たちにはほとんどまともな仕事はありません。仕事にありつけたとしても下働きなどでもらえる賃金はごくわずか。道にはストリートチルドレンがあふれかえっている地域もたくさんあります。
15年もこの国とかかわってきて、こんな現状を毎日目の当たりにしてきた私に何かできることをと考えていた時に、“石けんつくり”が頭に浮かびました。仕事をしたくても、手に職のない人にはなかなか仕事がありません。もし、私がこの石けんつくりを島の人々に教えて生活の糧になれば、と思い数年前から少しずつ知り合いの女の子達に教え始めました。
お世話になっているこの国の人たちに何か少しでも恩返しが出来ればという気持ちと、もし私がここからいなくなったり、自分たちの故郷に彼女たちが帰った時に手に職があれば自立して収入を得られるようになるのでは、という考えがありました。原料費や道具、場所は私が提供し、出来上がったものは私の会社のスタッフや友人に配って使ってもらい、意見を聞きながら改良していくという地道な作業が始まりました。
石けんは、油脂と苛性ソーダを混ぜ、その化学反応で作られます。はじめはオイルをうまく計れなかったり、均一に混ざらなかったりと失敗作を繰り返していた子達ですが、作る回数を重ねるにつれだんだん良いものが作れるようになりました。納得のいくものが作れるようになったら、次はそれを売って収入を得る、ということを実際に体感してもらいたいと思い、石けん工房を作ることにしました。工房といっても、自宅の裏にあったダーティキッチンを改装して作った小さな工房です。現在セブ島から1人、ボホール島から1人、レイテ島から2人、計4人の女の子が月曜日から土曜日までやってきて石けんを作っています。
島の小さなペンションのオーナーさんがゲストソープにと置いてくださったり、私の友人が個人的に買ってくださったりと、ほんの少しずつではありますが石けんが売れ始めました。もちろん、女の子たちは石けんが売れても売れなくても給料はもらえますが、自分たちの作った製品が誰かに喜ばれるということを感じると彼らのパワーもアップするようで、石けん作りにもさらに熱が入るようになったようです。
現在はセブ島、ボホール島、ミンドロ島にある私の友人が経営するダイビングショップ、ペンション、リゾートに少しずつ置いていただいています。自立して収入を得て満足な生活が彼女たちに出来るようになるにはまだまだ時間がかかりそうですが、私がこの島にいる間、できるだけのことをして1人でも多くの人たちが仕事を得て、収入を得て、笑顔で暮らせるようなお手伝いをしていけたらいいなと思っています。
画像上:笑顔のまぶしい女の子たち
画像中:出来上がったおよそ6キログラムの石けん
画像下:小さく製品用にカットした愛情たっぷりの石けん
|