■カンボジアには1年に3回の正月がやって来る? 2008.2.19 update

現在の日本ではお正月は1年に1回ですが、こちらカンボジアでは1年に3回、お正月がやってきます。ひとつは1月1日のお正月で、カンボジア語ではチョール・チュナム・サコール(チョールは「入る」、チュナムは「年:とし」、サコールは「世界」の意)と言います。もうひとつは4月中旬のカンボジア正月で、こちらはチョール・チュナム・クマエ(クマエは「カンボジア、クメール」の意)、そして最後が、中国正月のチョール・チュナム・チェン(チェンは「中国」の意)です。2月、その中国正月が今年もカンボジアにやってきました。

カンボジアでなぜ中国のお正月を祝うのか、疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、古くからカンボジアには中国からの移民があったため、中国の文化や習慣も入って来ているのです。13世紀に中国・元朝の使節としてカンボジアを訪れた周達観も、その著書『真臘(しんろ=カンボジア)風土記』のなかで中国人移民の存在について記しています。

また、フランス人の学者ジャン・デルヴェールはその著書『カンボジアの農民』のなかで、「いやしくも商業生活の兆しのある所には、少なくとも1人の中国人がいる」「王国内のすべての都市に中国人街がある」(及川浩吉・訳)と記しています。

さて、中国正月です。中国正月は旧暦にそって決められますが、今年(西暦2008年)は2月6日から8日の3日間です。この間、首都プノンペン市内の市場や多くの商店は扉を閉ざし、中国正月を祝います。プノンペンで商売を営んでいる人と中国とのつながりの深さを実感する3日間です。

中国正月を祝う家庭では、爆竹を鳴らしてお正月を祝ったり、実物に似せて作った紙幣を燃やして新年の金銭的な成功を願ったり、自宅でお祝いの食事をとったりします。お祝いの食事は家庭によっていろいろ異なるようですが、今までの経験上、麺を食べるところはほぼ共通していると考えてよさそうです。その背景には、「麺(長いもの)を食べると長生きすることができる」という考え方があります。家庭によっては、カンボジアでお祝いの席によく登場するソムローカリー(カンボジアのカレー)とバゲット(フランスパン)を楽しむところもあります。

さて、一通りお祝いが終わったら、お正月の遊びです。中国正月の際にもっとも人気がある遊びは賭けトランプではないかと思います。大人も子供も混じって、自宅や路上で賭けトランプを楽しむのです。とはいえ、一般に家庭で家族や友人らを招いて行なわれる賭けトランプの賭け金は小額で、1回あたり500リエルとか1,000リエル(約14円から28円)程度です。家族と賭けトランプをしたことがない自分にとって、自宅で親とお金を賭けてトランプをしているカンボジア人を見ていると、なんとも不思議な感覚にとらわれます。

日本だったら近所迷惑で顰蹙(ひんしゅく)ものだと思うのですが、自宅で大音量カラオケを楽しむ家庭もあります。この文章を書いている今も、自宅の二軒隣の家で、まさにその大音量カラオケが行なわれ、老若男女の熱唱が近所に響き渡っています。

首都プノンペンから車で20分ほど走ったところにある商業都市タークマウ(カンダール州の州都)は、昔から中国人や中国系の住民の多いところとして知られ、ここでは中国正月を祝うお祭りハエネアックターチェン(「中国の土地の神を祀る行列」の意)が行なわれます。タークマウのハエネアックターは、プノンペン近郊で最大規模と言われ、「バンバンバンバン!」と爆竹が激しい音を立てる中、漢字で書かれた旗や獅子舞、中国の楽器が鳴り響きます。まるで中国に迷い込んだかのような気分です。

今年は大家さんの家に招かれて、一緒に食事をしながら中国正月を祝いました。1年に3回も正月があると、正月気分がなかなか抜けないかもしれませんが、正月にしろ何にしろ、おめでたいことが多いのはいいことなんじゃないかと思っています。新年もめでたいことがたくさんありますように!

画像上右:中国正月のごちそう。
画像上左:自宅に友達を招いて賭けトランプを楽しむ人たち。
画像下右:プノンペンのカンボジア人家庭でよく見かける神棚のようなもの。中国の影響の強さを示すもののひとつ。
画像下左:タークマウ市場の横を練り歩くハエネアックターの行列。


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