|
今回は蚊の話を書いてみようと思います。熱帯モンスーン気候に属するカンボジアは、1年を通して日本より気温が高く、年間平均気温は27℃です。そのため、季節を問わずやかましい隣人「蚊」と付き合わなければなりません。
カンボジアの気候は大きく雨季(5月〜10月)と乾季(11月〜4月)に分かれますが、招かざる「隣人」は乾季より雨季に多数押し寄せてきます。雨が降り、各地で水がたまって蚊の産卵する場所ができるため、雨季に蚊がたくさん発生するのです。
ところが、今年は乾季に入ったにもかかわらず、無作法な「隣人」たちの訪問が減るどころか、雨季よりも多くの知人を誘って我が家に押し寄せてくるのです。下の階に住む大家さんも、「最近、蚊が本当に多いねえ」と顔をしかめます。困ったものです。
どのくらい多いのかといいますと、部屋の中には常に二桁の数の蚊がいて、すべて葬ったと思ったその数分後にはまた、耳元で新しい訪問客が「ぷ〜ん、ぷ〜〜ん」とやかましいおしゃべりを始めるのです。起きているときはまだしも、これでは安眠できません。
蚊との付き合いが長いカンボジア人は、この睡眠をも妨げる無礼な「隣人」の訪問を巧みにかわす術を知っています。都市部でも農村でも使われる最も効果的な方法が、蚊帳を吊ることです。カンボジア人にとって蚊は単なるやかましい「隣人」ではなく、時に恐ろしい菌を媒介し、人間をデング熱やマラリアといった病気に陥れる恐ろしい存在でもあるのです。
首都プノンペンやバッタンバン州、コンポンチャーム州、シェムリアップ州などの各州都でマラリアに感染することはまずないでしょうが、デング熱の危険はあります。また、タイやベトナムと国境を接する山岳部や丘陵部は未だマラリアの汚染地域であり、「マラリアの感染を防ぐために蚊帳を使いましょう」といった内容の看板を見かけます。
このような恐ろしい「隣人」の訪問を断るためには、蚊帳は必須の道具と言えます。ジーンズの上からですら刺す蚊ですが、蚊帳を吊られてしまってはどうしようもありません。
もうひとつが日常的に料理に用いられる香草のレモングラスです。レモングラスには「隣人」の嫌いな成分が含まれているため、カンボジアでは昔から虫除けとして利用されてきました。使用方法は単純です。蚊を来させたくない場所や照明があって虫が集まりやすいような場所に吊るすだけ。虫除けの成分を出すために、レモングラスを軽く叩いてから吊るす場合もあるようです。虫除けスプレーとは異なり、いわゆる生薬であるため、ものによって含まれる虫除け成分の量や質が異なりますが、使用例から判断する限り、それなりに効果があるようです。
もうひとつが魚の飼育です。農村部では水道がないため、雨水が貴重な水資源となっています。雨水は水瓶に溜めて使うのですが、その水瓶が蚊の産卵場所となり、ボウフラが発生してしまうことがあるのです。そこで、水瓶の中で魚を飼い、発生したボウフラを食べさせるのです。私見ではグッピーを飼っている家が多いように感じられます。丈夫で育てやすく、卵胎生なので増えやすいといったメリットがあるからでしょうか。
さて、都市部では「隣人」を効果的に撃退できるもうひとつの強力な武器があります。「蚊とりラケット」です。小さなテニスのラケットの形をしたもので、グリップにあるスイッチを入れると、針金のような細い金属でできたガットに電気が流れるようになっています。スイッチを入れ、ガットに電気を流した状態でテニスボールを打つように蚊を「打つ」のです。見事ガットにヒットすると、「バチバチバチッ」という激しい音と光を放ち、「隣人」を撃退できるのです。蚊の多い季節になると、近所の家からはこの「バチバチバチッ」という蚊とりラケットの音が響き渡ります。
この蚊とりラケット、輸入品ですが市場で一般的に売られています。価格は3ドル程度で、プラスチックでできているため軽く、小さな子どもでも使うことができます。グリップの内部に充電池を内蔵しているスグレモノです。同じくグリップ部にライトを付属するものもあり、停電の多いカンボジアでは懐中電灯としても活躍するのです。
画像上右:自宅の庭にある照明にレモングラス(イネ科の多年草)を吊っているところ(バッタンバン州の農村にて撮影)。
画像上左:市場で買った蚊とりラケット。
画像下右:蚊とりラケットの使用後。わずか15分程度で多くの蚊が床に「墜落」した。
画像下左:蚊とりラケットを充電しているところ。グリップの先端部分を直接コンセントに挿し、充電できるようになっている。 |