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果物の王様と呼ばれるドリアン。匂いがきついことで、多くの日本人には敬遠されているようですが、こちらカンボジアでは人気のある果物で、国産ドリアンの栽培地として有名なカンボジア南部のカンポート州では、3月から5月にかけて多くのドリアンの木が実を結び、大消費地であるプノンペンへ出荷されます。この時期、プノンペンの市場の果物売場には、豊かなドリアンの香りが漂い、ドリアン好きを誘います。
表面がとげとげしたドリアンの実は果物売場で何度も見かけたことがありますが、ドリアンの木やドリアンの実がなっているところを見たことがなかったた め、先日、知人と一緒にカンポート州とその隣のカエプ市(ケップ市)を訪れた際、ドリアン畑を見に行ってみることにしました。
カンポート州の州都カンポートから最も近いドリアン畑は、カンポート州のリゾート地として名高いタックチュー(カンポートの町から約8キロ)へ向かう途中にあります。タックチューはかつて避暑地として賑わったボーコー高原を水源とする清らかな水の流れで、付近には涼み小屋が建ち並んでいます。地元の人たちはここで飲み食いしながら水遊びをしたりして、さわやかな休日を過ごしています。ここを紹介している旅行ガイドブックもあるため、外国人旅行者の姿も 見かけます。
泊まっていたゲストハウスの従業員にドリアン畑の位置を聞き、バイクを借りてドリアンの「故郷」を目指すツーリングに出かけました。畑までの道はわかりやすく、すぐにたどり着くことができたのですが、残念ながら教えてもらったドリアン畑では、すでに出荷作業が終わってしまい、実のなっているところを目にすることができませんでした。
ほかにも畑があるかもしれないと思い、付近の住民に尋ねてみたところ、「ここからもっと先、山道を登って行った高地のほうならまだドリアンが残っているかもしれない」という情報を入手。教えられた道をバイクでさらに進んで行きました。
田植えの終わった青々とした田を眺めながらしばらく走って行くと、前述のタックチューに着きます。涼み小屋の周りではマンゴスチンが栽培されており、タックチューへ遊びにきた人たちが熟したマンゴスチンを買い求めて行きます。それを横目にさらに進み、中国の企業がダム建設をしている現場を通り越して山間部の道を登って行くと、ドリアン畑に到着しました。
雨季だったこともあり、途中の道はぬかるんでいて、小型のオンロードバイクでは走行が辛いところもありましたが、たどり着いたところは山の多いカンポートの豊かな自然を凝縮したような場所で、聞こえてくる音はそよぐ風に応える葉のささやき、透明度の高い水が岩の上を流れる音、遠くから響く鳥の鳴き声だけで、人工的な音は耳に届きません。登ってきた方向を眺めると、立体的な雲を浮かべた青空と山の稜線がくっきりとした境界を見せています。
さっそく、畑の持ち主の許可を得て、ドリアンの畑を見せてもらいました。時期が過ぎているため、大部分は収穫されてしまっていましたが、それでもまだいくつかの木は実を残しています。初めて見るドリアンの木に興奮し、何枚もの写真を撮らせてもらいました。この当たりは、地元の人たちの間ではチョムカーオーバイと呼ばれています。チョムカーとは畑や果樹園などを意味する言葉で、オーバイとはドリアン畑の横を流れる清流の名前です。
畑の持ち主の男性は5、6ヘクタールの果樹園を所有し、10年ほどドリアンの栽培を手がけているそうです。ドリアンのほかにも マンゴー、ザボン、パパイヤ、バナナ、ジャックフルーツ、マンゴスチンなどを育てていますが、ドリアンの木が最も多く、約1,000本所有しています。
使う肥料は牛糞です。男性が「前はタイから輸入した化学肥料を使っていたんだけど、化学肥料を使うと土や樹木を痛めてしまうし、甘い実がならないので牛糞に切り替えたんです」と言います。肥料用の牛糞は1袋(約50kg)を3,000リエル(約90円)で購入しています。自分たちのところでも3頭の牛を飼っていますが、これだけでは肥料として使う分を賄えず、十分な糞を得るためには15頭から20頭くらいの牛を飼育する必要があると聞きました。しかし、たくさん牛を飼うと放して草を食ませているときにドリアンの枝や実に牛の体がぶつかって傷つけてしまうため、現状では3頭だけにしているそうです。
男性の出身地はカンボジア南東部のプレイベーン州で、10年前、親戚を頼ってカンポート州に移住してきたといいます。「この辺りは豊かな森に囲まれているので涼しくて過ごしやすいんです。故郷のプレイベーン州は(平野部なので)暑くてね」という男性の言葉どおり、緑豊かな山から涼風がそよぐこのさわやかさは、平野部ではなかなか味わえないなあと思いました。
画像上右:山に囲まれたドリアン畑。
画像上左:枝にぶら下がったドリアンの実。
画像中:ドリアンと一緒に栽培されているパパイヤ。
画像下:栽培者の自宅。自宅前の庭も果樹園になっている。 |