■氷の切り売り 2007.7.17 update

カンボジアではまだ冷蔵庫が広く普及しておらず、また物価に占める電気代が高いこともあり、大型冷蔵庫を導入しているスーパーマーケットやホテル、レストランなどをのぞき、物を冷やしたり保冷・冷蔵したりする際に氷が使われています。電気代は使用場所によって異なる料金体系が設定されているのですが、一般住宅(カンボジア人の住宅)で1ヶ月あたりの電気使用量が50kWh以下だと350kWh/リエル(約10円)、使用量が51〜100kWhの場合は550kWh/リエル(約16.5円)、100kWh以上は650kWh/リエル(約19.5円)となっています(*)。

例えば食料雑貨店ではアイスボックスのなかに氷を入れ、そこに缶やペットボトルに入った飲料、ココナツなどを入れて冷やして売ります。また、食堂では市場で買って来た肉や魚などを同じようにアイスボックスに入れて冷蔵します。アンコール遺跡群を観光している際、ココナツジュースを売る屋台を見かけたことはないでしょうか? あのココナツも氷を使って殻ごと冷やしているのです。一般家庭の場合は、通常、食材は毎日市場で買い求めるため、生鮮食品を冷蔵することはあまりないようですが、庭でパーティーをする際、大きな盥(たらい)のなかにビールやジュースを入れ、そこに氷を加えて冷やして飲んだりします。

といっても、カンボジアの人々がスーパーマーケットやコンビニで袋入りの氷を購入して使っているわけではありません。かつての日本と同様、氷は切り売りされているのです。プノンペン南部のトゥオルトンプーン市場(ロシアンマーケット)で氷の切り売り屋を営むイムさん(17歳)にお話を伺いました。

イムさんのところでは、首都プノンペンに隣接するカンダール州の製氷工場から毎日氷を仕入れています。トラックに積まれて来た長さ1.5メートルほどの氷塊が届くと、それを金属と板でできた切断台へ運び、埃や直射日光を防ぐため、布やビニールがかぶせます。それから、「氷1000リエル(約30円)分ね」、「500リエル分もらうよ」といったお客さんの注文に応じ、一つ一つの氷塊を細長いノコギリとノミを使って小さく切り分けていくのです。

バイクや自転車に乗ったお客さんが氷を買いに来ます。イムさんが切った氷に妹が紐で持ち手を取付け、お客さんに渡していきます。氷一塊分の仕入れ値は1万リエルで、1日に売れる数は50ほど。氷売りは母親が15年前から続けて来た仕事で、途中から娘2人が手伝うようになったそうです。

氷売場の近くで屋台を営む人たちも氷を求めに来ます。切り売りされる氷は冷却用ばかりではなく、飲料用としても使われているのです。サトウキビジュースやフルーツシェークの屋台で使われている氷も、こういった切り売りの氷がほとんどです。

イムさんの店には女手しかなく(母と妹)、氷の塊はとても重たいため、買いに来たお客さんが男性の場合は、氷の運搬や切断を手伝うこともあります。こういった商売の世界にも、立場を問わず助け合う精神が生きています。「お客様は神様」という世界ではあまり見ることのできない光景ですね。

註(*):出所『カンボジア投資ガイドブック第二版』カンボジア
開発評議会,2006年(原典はElectricite Du Cambodge)。料金の日本円への換算は4,000リエル=1USドル=120円として筆者が算出。

画像上:氷の塊を切り分けるイムさん。トゥオルトンプーン市場にて。
画像中:買った氷をシクロ(三輪自転車タクシー)に乗せて運ぶ。
画像下:冷却用の氷を買う男性。カンダール州キエンスバイ郡にて。


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