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カンボジア国民の約9割を占めるといわれるクメール人は、私たち日本人と同じく日常的に魚を食する人々ですが、商業漁業に従事しているのはカンボジア国内に住むベトナム人やチャム人がほとんどで、クメール人が携わる漁業は小規模なものがほとんどだといわれています。
とはいえ、少数ではありますが、漁業で生計を立てているクメール人もいます。そういった人々が暮らす村のひとつが、アンコール遺跡群のお膝元シェムリアップ州にあります。州の中心部から約16キロのところにあるプラサートバコン郡コンポンプロック村がそれです。
この村は、雨季(通常5月から11月)になるとトンレサープ湖の増水によって土地が「水没」するため、すべての住宅は浸水しないように地面に建てられた高さ数メートルの柱の上に建てられています。地上高くそびえる木造住宅が道の両側に建ち並ぶ光景は、まるで映画のセットのようです。この村の人たちはどんな暮らしをしているのか興味を持ち、実際に訪れてみることにしました。
シェムリアップのオールドマーケット付近でバイクタクシーを捕まえ、それに跨がって国道6号線をコンポントム州の方向へ進みます。ロリュオス地域に入ったところで、ロリュオス川と平行して走る道に入り、そのまま南下。トンレサープ湖の方向へ進みます。途中までは舗装されているため、走行は快適ですが、ロリュオス市場の先の村を越えて水田地帯に入ると、未舗装の道が続きます。道の状態はいいとはいえませんが、乾季ならコンポンプロックの村まで陸路で行くことができます。
ところが、雨季に入ってしまうと、村へと続く道が水没するため、ボートを利用しないと村まで行けません。ボート乗り場の位置は、トンレサープ湖の増水量によって変わります。雨季に入って間もない頃は、湖からさほど遠くないあたり(ボートで十数分の距離)にありますが、湖の水量の多い8月、9月、10月頃になると、さらに北へ移動します。
訪れた5月はまだトンレサープ湖の増水が始まっていませんでしたが、湖へと注ぐロリュオス川の増水によってコンポンプロックへと続く道が分断されているところが数カ所あったため、途中サラートメイと呼ばれる地域からボートを利用しました。時間にして15分ほどでコンポンプロックに着きます。
すでに述べましたが、コンポンプロックの住民のほとんどは、漁業、またはそれと関連する仕事に就いています。村の住宅の床下には漁具が保管され、村を歩いていると、どこからともなく干したエビの匂いが漂ってきます。捕まえて来たエビを加工して干しエビにし、市場へ出荷するのです。
雨季になり、村の中心通りが水没すると、人々はボートに乗って村の中を移動するようになります。村の目抜き通りが水路に変わるのです。トンレサープ湖の増水が、人々の生活に大きな影響を与えています。増水は漁を生業としている人の暮らしにも大きく関係しています。村がトンレサープ湖の水で覆われている間、漁師たちは村で生活しますが、乾季に入って村から湖水が引く3月頃、漁師たちは村を出て湖上に簡易な作りの家を建て、そこで生活するようになるのです。漁を簡単にするためです。
彼らの湖上住居は、シェムリアップ州の南、プノンクラオム近くのボート乗り場からボートで訪れることができる水上集落とは異なり、湖の底に木の杭を打ち、その上に建てられています。つまり、前者の水上集落のように湖の水量によって移動することはありません。コンポンプロックの漁師たちは、トンレサープ湖が増水する7月頃、湖上の家をたたんでまた村へ戻ってくるのです。
画像上右:コンポンプロックの住居
画像上左:エビを捕まえるための仕掛け。カンボジア語でソロユーンと呼ばれる
画像中右:捕まえたエビを加工して干しエビをつくる人たち
画像中左:コンポンプロックには市場はないため、村の北にあるロリュオス市場から、自転車に野菜や果物などを積んだ売り子がやってくる
画像下右:漁の準備をする男性
画像下左:村の東側を流れるロリュオス川には、移動や漁に使うボートが繋留されている |