■自然の湿布薬、キンマ 2007.2.20 update

先日、知り合いのカンボジア人の女の子が学校の帰り、路上でバイクに軽くはねられて怪我をしました。頭をぶつけ、顔と手足を擦りむいたようで、たんこぶと擦り傷を持って返ってきました。

日本だったらたんこぶは冷やし、傷口は消毒薬などで消毒するのでしょうが、彼女の家では、カンボジア語でムルー(キンマ)と呼ばれる植物の葉を使い、怪我の処置をしていました。キンマはマレーシア原産の植物で、カンボジアではスラー(ビンロウ)と一緒にしてタバコの代わりの嗜好品にします。似たような嗜好品は、東南アジアや南アジアで広く見られるものです。

カンボジアでは一般に高齢の女性に親しまれているもので、理由は不明ですが男性はあまり好みません。自宅の大家さんによると、田舎ではお客さんをもてなす時に振る舞われるそうです。口の中に入れて噛み、葉から滲み出る興奮作用のある成分を楽しんでから吐き出すのですが、ビンロウから赤い液体が出て口の中が真っ赤になるため、吐き出されたものは血のような色をしています。

スリランカの古都キャンディの路上で、道行く人々が赤い液体を「ペッ、ペッ」と吐き出しているのを初めて見たとき、血を吐いているのかと思い、「この町には重病を患った人がこんなにたくさんいるのか!?」と大変驚いた記憶があります。

さて、女の子の怪我の処置法の方へ話を戻しましょう。女の子の怪我を見た家の人は、近所の家に行ってキンマの葉を数枚もらい、それを炭火で軽くあぶります。炭の熱で葉がしんなりし、焦げ目がつくかつかないかくらいのところで火から下ろし、それを傷のあるところに貼りました。聞けばキンマには腫れを沈める効果があるとされ、カンボジアでは自然の湿布として使われているのです。首都プノンペンのような町では、西洋医学の薬を売る薬局がたくさんあるためか、このような生薬をつかった方法はあまり用いられなくなってきているようですが、田舎ではごく一般的な処置法のようです。

古くからカンボジアでも、植物の葉や根、実などを使って漢方薬のような生薬が作られ、服用されてきました。この伝統生薬を調合する人のことをカンボジア語では「クルークマエ」と呼びます。クルークマエはキンマとビンロウ、石灰を混ぜたものをすり鉢ですりつぶし、切り傷や擦り傷などに塗る液体状の薬を作るとも聞きました。

このキンマの葉は市場で日常的に売られています。値段は十数枚で500リエル(約10円)ほどです。高齢の女性がいる家では、葉を嗜好品として楽しむために自宅の庭で育てることもあるそうです。自宅のすぐ近くにある家でもキンマを植えているところがありました。キンマ以外にも、カンボジアには生薬の原料となる植物がたくさんあるので、また別の機会に紹介できればと思います。

画像上:自宅の軒先に植えられたキンマ
画像中:キンマの葉を炭火であぶっているところ
画像下:たんこぶのできたところにキンマの葉を貼る


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