■菩提樹は不運をもたらす? 2006.7.18 update

知人のカンボジア人Aがシンガポールへ留学することになり、荷物を整理する意味もあって、Aが育てていた観葉植物を引き取ることになりました。車はないので、当初、バイクで何度か往復して植木を運ぼうと考えていたのですが、ガソリン代の高さ(2006年7月現在で1リットル4,100リエル=約115円)と手間を考え、知り合いのトゥクトゥク(三輪タクシー)Mに頼むことにしました。Aはアパートの6階に住んでいるのですが、そのアパートにはエレベーターはないため、Aの部屋から外まで運ぶのに重たい鉢植えを持ちながら階段を何度も往復。運動不足の身にはなかなかこたえる作業です。

さて、Aからもらった鉢植えのなかに、ひときわ背丈の高いものがありました。菩提樹です。何も知らない僕は、自宅のベランダで仏と関係の深い菩提樹を育てているなんて、仏教国カンボジアらしいなあと思い、かつ自宅で菩提樹を育てられるなんてなんだか少し嬉しかったのですが、この菩提樹が原因となり、自宅に持ち帰ってからちょっとした騒ぎが起きたのです。

持ち帰って来たたくさんの植物のなかに菩提樹があるのを見つけた大家さん一家が言いました。「菩提樹はあまり家に植えるものじゃなく、お寺に植えるものよ」、「家に植えるのはあまりよくないわ」、「家に植えたらダメだ。よくない」、「菩提樹が家にあると、幽霊がでるの。菩提樹が人間より大きく育ったら、儀式をしなければならないのよ」と。お寺にあり、仏教と深い関係のある樹木なので、カンボジア人にとってはどちらかというと印象のいい植物なのかと思っていたのですが、どうやら違うようなのです。

カンボジア人の習慣や風習にそぐわない行為となっては、のんきに自宅で育てるわけにはいきません。菩提樹を家に植えてはいけない理由を詳しく知りたくなり、別のカンボジア人の意見も聞いてみました。すると、次のような答えが返ってきました。「菩提樹を家に植えると、運が悪くなる」、「仕事がうまくいかなくなり、生計を立てるのが難しくなる」、「火の玉と幽霊を誘う」。

「お寺に持って行ったほうがいい」という意見も聞いたため、菩提樹を持って近くの寺を訪ねました。事情を説明し、ターチャー(寺男)とお坊さんに尋ねて見たところ、「別に家に植えても運が悪くなったり、仕事がうまく行かなくなったりするようなことはない。ただ、菩提樹はとても大きく成長する樹木なので、家庭で育てるのは難しいだけだ」とのこと。

ですが、自宅に菩提樹があることを嫌がる人たちがいるのも確かです。ターチャーやお坊さんが大丈夫だと言ったからといって、持って帰るわけにもいきません。「お寺に持って行ったほうがいいと聞いたんです」と告げると、「人に売ってあげるから、そこに置いておきなさい」とあるターチャーが言うので、お言葉に甘えてお寺に置いて帰ることにしました。

最後に、菩提樹はカンボジア人にとってどんな木なのかと聞いてみたところ、「菩提樹は仏と関係のあるいい木だ」と、ターチャーが教えてくれました。仏と関係のあるいい木だけれど、自宅で育てると不運をもたらす? いまいち納得のいかない「菩提樹騒動」でした。

画像上:大きく成長した菩提樹
画像中:お寺に預けてきた菩提樹
画像下:菩提樹を預けたお寺


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