■コッコンからタイを経由してパイリンを目指す旅 2006.4.18 update

首都プノンペンを起点として、南部のシハヌークビル、タイとの国境の町コッコン、カンボジア西部のパイリン、バッタンバンを回る旅に出ました。まずはシハヌークビルを目指すことになったのですが、上記五都市のなかでプノンペンはほぼ中間地点に位置するため、順路をどうするかが問題です。

旅行ガイドブックのLonely Planetによると、乾季のみ道の状態が比較的いいため、コッコンからオフロードバイクに跨がって山道を走り、直接パイリンを目指すことができます。そこでシハヌークビルからコッコンへ行き、コッコンでバイクを調達してそこからパイリン入りすることを考えました。

プノンペンからシハヌークビルまでは直通の長距離バスが走っているので問題ありません。移動時間は4時間程度。シハヌークビルとコッコンの間にはバスは走っていませんが、乗り合いワゴンやタクシーが旅行者を運んでくれます。僕たちは片道13米ドルの乗り合いワゴンを利用することにしました。乗客は自分たちと運転手を除くとすべて白人の旅行者です。シハヌークビルからコッコンへ渡り、そこからタイへ入国する(またはその逆)というのは、バックパッカーにはよく知られたルートだからでしょうか。途中、小さなフェリーに4回乗って川を渡り、奥深く広がるコッコンの美しい自然を眺めながら進んで行きます。それぞれの船着き場でフェリーを待たなければならないため、距離の割に移動時間がかかりますが、変化にとんだ道程は旅人たちを飽きさせません。

カンボジア南西部の町コッコンに着いた僕たちは、まずバイク販売店を探すことにしました。予算はあまりないので、外見や性能は気にしません。条件は「パイリンまで故障せずに(または故障しても修理して)たどり着けるバイク」のひとつだけなので、希望のバイクがきっと見つかるだろうと楽観していたのです。ところが、です。バイクに詳しい同行者とともにバイクの値段を聞いて回ったのですが、プノンペンとは違い、コッコンで見かけるバイクは新車ばかりで中古車はほとんどないため、予算と合いません。地元の人に聞いても「コッコンにはプノンペンみたいに安い中古のバイクはないよ」と言われるだけです。町を歩いていて、どうしてコッコンではプノンペンでよく見かける韓国製の中古バイクをほとんど見かけないのが疑問だったのですが、それも氷解しました。コッコンはタイと国境を接する州なので、タイ製の新車が入って来ます。プノンペンで走っている韓国製の中古バイクは、おそらく中古自転車と同様にシハヌークビルの港を経由して輸入され、そのまま国道4号線を北上してプノンペンへ運ばれるのでしょう。だからコッコンにはほとんど入ってこないのかもしれません。

予算に合うバイクが手に入らないので、地元の人に聞きながらコッコンからパイリンへ向かう乗り合いタクシーやピックアップトラックを探してみたのですが、残念ながらそれもないことが判明。こうなると道はふたつしか残っていません。ひとつは来た道とほぼ同じ道を通ってプノンペンまで戻り、そこからバスに乗ってバッタンバンを目指す方法。もうひとつはタイへ入国してしまい、タイを通ってタイ側の国境の町からパイリンへ入るという方法です。

前者の場合なら推定移動時間は約16時間程度。ただし、プノンペン〜バッタンバン間のバスの席を確保できるかどうかわからないため、1日では着かないかもしれません。一方、後者の場合、事前に何も調べていなかったため、どんな交通機関があるのか、そもそもどのようなルートを通って行けばいいのか分からないという問題があります。そもそも、タイ側の国境の町からパイリンへ入るといっても、この時点ではその国境の町の名前すら分からないのです。ガイドブックにもそんな珍妙な移動の方法は書かれていません。ですが、地図を見ると一度プノンペンへ戻るよりはタイから攻めたほうが移動距離が短かそうです。同行者と相談した結果、「おもしろさ優先だよね!」ということで、「タイルート」を選択することにしました。道はわかりませんが、体当たりで聞きながら行けばなんとかなるでしょう。

出入国審査を無事に済ませ、タイ側の国境の町で情報収集をすることから始めました。コッコンの国境ゲートは海のすぐそばを走る道路上にあり、その道路脇にはココヤシが高くそびえています。ここコッコンにもカンボジアの国境の町の名物カジノがあり、その華美な姿をきらめかせています。そんな光景を横目に、国境ゲートから近いところにたつ屋台でしばしの休息をとっていた男性にパイリンまでの道を尋ねました。「パイリン? パイリンはタイじゃなくてカンボジアだよ」。うーむ、実にもっともな反応です。カンボジアからタイに入国したばかりなのにカンボジアの町パイリンに行きたいなんて言ったら、パイリンをタイの町だと勘違いしていると思われてもしかたがありません。「ここからパイリンに行くんだったら、カンボジアを通って行ったほうが近いんじゃないかな。タイを通って行きたいっていうなら、まずはあそこにある乗り場から出ている車に乗ってトラートまで行くんだ。そこで乗り換えてチャンブリーへ行き、チャンブリーでもう一度乗り換えれば国境の町バンレムだよ」。

この男性の情報を頼りに、国境から乗り合いワゴンに乗ってトラートへ向かいました。移動時間は約1時間30分。着いたところはトラートの長距離バスターミナルで、車から降りるとバンコク行きの車の客引きが近づいてきます。タイ人とカンボジア人の顔の間に大きな違いはないため、思わずカンボジア語で話しかけてしまいそうになりましたが、ここはすでにタイで相手もタイ人です。タイ語はほとんど分からないので、「チャンブリー、チャンブリー、チャンブリー」と次の目的地の名を呼び続けると、客引きが指を指して「チャンブリー行きの車はあっちだ」と教えてくれます。

トラート発は14時20分で、チャンブリーに着いたのは15時40分頃。チャンブリーのことは何も知りませんが、ざっと見た感じではタイの地方都市といった雰囲気で、ショッピングセンターのような施設も見られました。看板などの表記は当然だがすべてタイ語で、道を歩く人が話す言語もタイ語。久しぶりに理解できない言語に触れ、外国に来た気分に浸りました。もっとも正確に言えば自分にとってはカンボジアも「外国」なのですが、滞在期間が長くなるにつれてカンボジアが「外国」だという意識はどんどん薄れ、今では自分の意識のなかでカンボジアを「外国」だと感じることはほとんどありません。といっても、カンボジアを祖国だと思っているわけでもありませんけれど……。

話を戻します。チャンブリーからバンレムへ向かう車は16時20分過ぎの出発。国境を目指す車は美しく舗装された道をぐんぐん進み、日が暮れる前に無事国境に着きました。車から降りると後方からカンボジア語特有の響きが耳に入り、そっちに顔を向けるとクロマー(マフラー、スカーフ、風呂敷など多目的に使えるカンボジアの布)を首に巻いた仕事帰りのカンボジア人がおしゃべりをしながら歩いてきます。それを見た瞬間、僕は妙なことに嬉しくなり、にやっとしながら同行者の顔を見て「(カンボジアに)帰ってきましたねぇ!」と言ったのです。「カンボジアを祖国だとは思わない」と書いたばかりなのに、このときはなんだか「祖国」に戻って来たような感覚に陥ったのです。不思議なものです。ただしバンレムの国境を越えて入ったカンボジア側の町はパイリンではなく、バッタンバン州コムリエン郡というところで、そこからパイリンへはもう一踏ん張りしなければならないのでありました……。

画像右上:コッコンにある国境ゲート
画像左上:チャンブリーの町
画像右下:チャンブリーの乗り合いワゴン乗り場
画像左下:バンレム=コムリエン国境にある「カンボジアへようこそ」の看板

Cambodia (Shaded Relief) 1997[カンボジア全土地形図]《英語》
各都市の位置関係を確認いただけます。地図中央にPhnom Penh、左側にはKaoh Kong、Pailin、Batdambang(カンボジア)、そしてTrat、Chanthaburi(タイ)の地名が。


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