■メコン川に棲息する絶滅寸前のカワイルカ 2006.3.20 update

イルカ、と聞くと海に棲息し、水族館などでは巧みに芸をこなすあのイルカを想像する方が多いのではないでしょうか。ところが、海ではなく川に棲息する淡水イルカもいるのです。今回紹介するイワラディイルカがそれです。

このイルカは、名前のとおりもともとミャンマー(ビルマ)を流れるイワラディ川を故郷にしていたようです。現在ではバングラデシュ、ミャンマー、ラオスのメコン川下流域、カンボジア東部に位置するクラチェ州、ストゥントレン州で棲息が確認されていますが、いずれの地域でもその数が激減し、絶滅が危惧されている生物です。

カンボジアでは、かつては国土の中央部にあるトンレサープ湖やそこから流れ出るトンレサープ川(首都プノンペンの王宮前も含む)でも見られたそうですが、上流域のダム建設が一因とされるメコン川の環境の変化、内戦(内戦中、燃料用の油をとるために乱獲されたり、射撃の標的とされた)、ダイナマイトをつかった漁などが原因で、イワラディイルカの数はどんどん減っていき、カンボジア国内だけで1000頭を数えたその個体数は、現在では数十頭になってしまいました。外国のNGOや政府機関が保護活動に乗り出しているようですが、この個体数では絶滅するのは時間の問題だといわれています。

ボートに乗ってこのイルカ(カンボジア語で「トレイ=プサオト」)を見るのがクラチェ州を訪れる外国人観光客の間で人気です。クラチェ州は、首都プノンペンから直線距離で約180キロのところにあります。その州都クラチェはメコン川沿いに開けた町。ここで見られるメコン川に沈む美しい夕日は、クラチェならではの光景のひとつでしょう。イルカが見られるのはこの町から北へ15キロほど行ったカンピという名の小さな村です。

州都クラチェからカンピまでは、個人で行く場合、モトドップ(バイクタクシー)を利用するのが一般的です。クラチェは非常に古いカンボジアの伝統的な住宅が残っていることでも有名なのですが、カンピ村へ行く途中ではそういった建築を楽しむこともできます。クラチェ観光のもうひとつの魅力です。

さて、カンピです。カンピにはイルカ見学用の小さな木製のモーターボートが用意されています。見学者はそれに乗り、目的のイルカを目差してメコン川のなかを進んでいきます。2005年4月に訪れたときに、イルカ見学にかかる費用(カンピまでの移動費を除く)はボート代だけでしたが、2006年2月に行ったときは外国人のみ入場料をとられるシステムに変わっていました。珍しいイルカの姿を求めてやってくる外国人観光客の数が増えたからでしょうか。チケット売り場の係員によると、イルカを見ることができなかった場合、入場料は返してもらえます。

ボートに乗ってイルカを見学する時間は1時間程度。イワラディイルカはとても臆病な生き物なので、ボートのすぐ近くに姿を現すことはありません。また、大きな音を立ててしまうと、水面下に隠れてしまいます。ボートのモーターも、川の中央部にさしかかるとイルカを驚かさないようにエンジンを止め、木製のオールを使ってゆっくりと進みます。ボートの上で静かに待っていれば、そのうちどこからともなく「プシュー」という呼吸音とともに彼らが水面近くを泳ぐ姿を見ることができるでしょう。ただし、数分で彼らはまた水面下にもぐってしまうため、その姿を写真に納めることは容易ではありません。

ボート乗り場にある広場には掲示版が立てられています。そこにはメコン川に棲むイルカにまつわる伝説がイラストを使って紹介されていますので、ボートに乗る前に目を通しておくとイルカ見学がよりいっそう楽しめると思います。クラチェまでは、プノンペンから直通バスが出ています。美しい自然環境の残るラタナキリ州やモンドルキリ州からそう離れていないので、クラチェ観光と組み合せてそれらの地域を歩いてみるのもいいでしょう。

画像右上:イルカ見学用に用意されたボート。
画像左上:ボートに乗るときはライフジャケットを着用する。
画像右下:エンジンを止め、オールで漕ぎながらゆっくりと進むボート。
画像左下:追加料金を支払えば、小さな「川中島」へ連れて行ってもらえる。


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