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ヌムバンチョック(*)とは、米から作られる素麺(そうめん)のような細麺にさまざまな生野菜をのせ、ソムロー(スープ)をかけて食べる一品です。首都プノムペンの場合、天秤棒を担いでヌムバンチョックを売りにくる移動式屋台では一皿500リエル、市場付近の屋台では1000リエル程度で食べることができます(1米ドル=約4100リエル)。
麺にかけるソムローにはソムロークロホーム(「赤いソムロー」の意)、ソムローキエウ(「青いソムロー」の意)、「ソムローカリー」(カリーは「カレー」の意)のようにいくつかの種類があり、ソムローによってヌム=バンチョックの味の印象は大きく変わります。カンボジアの食を紹介している『The Cuisine of Cambodia』(**)という本によると、カンボジア南部のカンポート州を発祥地とするヌムバンチョック(ヌムバンチョックカンポート)もあり、ソムローではなくタック=トレイ(カンボジアの魚醤)、水、白砂糖、酢、ニンニク、シャロットのタレで食べます。
ヌムバンチョックに入れる野菜は、ソムローキエウで食べる場合、一般にトロユーンチェーク(バナナの苞「包葉」)、ソンダエククオ(インゲンを長くしたような豆。ジュウロクササゲか?)、プルウ=コンカエプ(葉はミツバと似ていて、茎は空芯菜のように中空になっている植物)、ソンダエク=ボンドッ(モヤシ)、トロソック(キュウリ)、プロルト(スイレン、茎の部分を食する)などが使われますが、必ずしもすべての野菜が盛りつけられるわけではなく、買い手は自分の好きな野菜の組み合わせを指定することができます。
砂糖と化学調味料、クローイチュマー(小型のレモン)、生の唐辛子、唐辛子フレークなどのトッピングが併せて供されることが多いので、自分の好みの味をつくることも可能です。ソムローカリーで食べる場合は、スイレンやバナナの苞は入れません。ソムローキエウには具としての野菜が入っていませんが、ソムローカリーのなかにはジャガイモやニンジン、タマネギなどが入っているからでしょうか。
さて、先日プノムペンの南部に位置するタケオ州のある家庭で、ヌムバンチョックの麺を作るところを見学させてもらう機会がありました。すでに述べたことですが、ヌムバンチョックの麺は米を原料としています。まず米を挽くか搗(つ)くかして粉にします。この粉に塩を加えて練り、生地を作ります。次に、ところてんの押し出し器のような器具を使ってこの生地を押し出し、それを直接熱湯の中に落として数分茹でます。茹で上がったら水で軽く冷やし出来上がりです。
さっそく茹でたてのヌムバンチョックをソムローカリーでいただきました。できたての麺を食べるのは初めてのことでしたが、いつもプノムペンで食べているものとの味の違いに驚きました。プノムペンのものは茹でてから時間がたったものなので、麺の食感はぼそぼそとしていて噛むとぷっつりとすぐに切れてしまうものが多いのですが、茹でたての麺はもちもちとしていて弾力があり、プノムペンのそれとはまるで別の食べ物のようなのです。
麺を作ってくれた人に「プノムペンのヌムバンチョックとこれは全然違いますね。ここのヌムバンチョックはとてもおいしいです」と告げると、「プノムペンのは茹で上がってからしばらく時間がたっているからね」と言っていました。茹でたてのヌムバンチョックは、田舎ならではの味なので、プノムペンで生活しているとなかなか食べる機会はありませんが、ぜひもう一度体験したい味だと思いました。
(*)ヌムバンチョック:ノンバンチョックと表記する書籍もあるようです。日本語でカンボジア語の音を正確につづることは不可能ですが、首都プノムペンの発音をもとにして、より原音に近い表記をするとノンバンチョックではなくヌムバンチョックとなります。
(**)The Cuisine of Cambodia:「カンボジア料理」の意。Nusara Thaitawat, Somkid Chaijitvanit, Yingyong Un-anongrak; Nusara & Friends 2000
画像右上:米をついて米の粉を作る器具
画像左上:練りあがったヌムバンチョックの生地
画像右下:押し出したヌムバンチョックの生地を茹でているところ
画像左下:できたてのヌムバンチョックとソムローカリー(カレー・スープ)
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