■カンボジアのコーヒー事情 2005.6.20 update

コーヒーの産地と言うと中南米やアフリカ、東南アジアではインドネシアなどが有名だと思いますが、カンボジアでもコーヒーは栽培されています。日本にカンボジアのコーヒー事情が伝わる機会はあまりないような気がしますので、今回はカンボジアのコーヒーについて書いてみたいと思います。

カンボジア人はコーヒーのことをカフェーといいます。この「カフェー」とは、フランス語からの借用語です。おそらくコーヒーを飲む習慣がフランス植民地時代(1863〜1953)以降に始まったことと関係しているのでしょう。「コーヒーを飲む習慣」と書きましたが、この習慣は都市部を中心としたもので、カンボジアの国土の大半を占める農村では、お茶の時間に水、もしくはお茶を飲むのが一般的なようです。

カンボジア人も朝の目覚ましや食後の休憩時間などにコーヒーを楽しんでいます。都市部の中産階級くらいの家庭では、コーヒー豆の販売店で豆を買い、紙のフィルターなどを使って自宅でコーヒーを入れます。カンボジアやラオス、ベトナムの国産コーヒーに共通しているのは、多くの日本人が日常的に飲むコーヒーと比べて苦みと酸味が薄いところです。また、ラタナキリ産のコーヒーのなかには、一般的に「ベトナムコーヒー」として日本で知られているコーヒーのように芳醇な甘い香りのするものがあるため、飲み慣れていない人は違和感があるるかもしれません。

コーヒーは、カンボジア国内では僕が知る限り北東部のラタナキリ州やモンドルキリ州で栽培されています。そのうち、ラタナキリ州のものは味がよいとされているため、モンドルキリ産のものより高い値段で取引されているようです。首都プノムペンの市場で安いラタナキリ産のコーヒーを見かけることがありますが、僕がカンボジア語を習っている学校の先生によると、それらにはたいていの場合、他の産地でとれた安いコーヒーが混ざっているのだそうです。

プノムペンのオールセイ市場近くに店を構えるコーヒー豆販売店の新榮和(SING VENG HER)珈琲行でコーヒー豆の値段を尋ねてみたところ、モンドルキリ産は1kg1米ドル(以下、すべて1kgあたりの価格)、ラタナキリ産は3米ドル、ラオス産は5ドル、スペシャルブレンドは6米ドルとのことでした(※筆者注:カンボジアでは、自国の通貨リエルのほかに米ドルも流通しています)。販売店では挽きたての豆を売ってくれるので、少量ずつ買って家でいろいろな味を楽しむことができます。

僕が知っているプノムペンに限って言えば、いくつかの場所で観察していた限り、カンボジア人の多くは、コンデンスミルクをグラスの4分の1から3分の1ほど入れて濃厚な甘味を出したカフェータックドッコータッコー(タックドッコーは「牛乳」、タッコーは「氷」の意)が好きなようです。

とはいえ、カフェータッコー(コンデンスミルクなしのアイスコーヒー、ただし砂糖が入っている場合がほとんど)を好む人もいますし、暑い国なので少数派ですがホットで楽しむ人もいます。アイスコーヒーといってもホットコーヒーにたっぷりの氷を加えて冷やしたものなので、店によってはコーヒーの味が薄くなってしまっているところもあります。僕の経験から述べると、そういう店のコンデンスミルク入りアイスコーヒーに加えられるコンデンスミルクの量は、そうではない店と比べると多いようです。

プノムペンのオールセイ市場のそばに、僕がちょっと気に入っているコーヒーの屋台があります。そこではカフェータッコーにピラフスプーンで2杯の砂糖を入れます。氷は氷屋から買った大きな氷の塊を15cmくらいの金属の棒で叩いて砕いたものを使います。屋台のおじさんに聞くと、ここの豆はカンボジア産とのことでしたが、いくつかの産地のものが混ざったものを使っているため、具体的な産地は不明とのことでした。

コーヒーを入れる際、お店では一般的に20〜30cm程度の深さのある持ち手つきの布製フィルターを使います。ここの屋台もその例外ではありません。片手にコーヒー豆を入れたこのフィルター持ち、もう片方の手でそこに熱湯を注ぐのです。

「20年近く前からコーヒーの屋台を始めたんだよ。その前はポルポト時代(1975〜1979)だからねえ、コーヒーを売ることはできなかったよ」、コーヒー屋のおじさんは静かにこう語りました。この言葉を聞き、コーヒーの香りが静かに漂う社会には平和があるといえるのかもしれないなと思いました。

画像右上:オールセイ市場のそばに建つ、コーヒー豆販売店の新榮和珈琲行
画像左上:手際よくアイスコーヒーを入れるコーヒー屋台のおじさん。オールセイ市場付近にて。
画像右下:屋台で頼んだアイスコーヒー(カフェータッコー)。グラスのとなりにある金属製のポットにはお茶が入っていて、お客さんは無料で飲むことができる。
画像左下:コーヒーの屋台で使われていた器具。陶器のポットには熱いコーヒーが、その下の金属製の容器には沸騰した熱湯が入っている。熱湯はコーヒーやお茶を入れたり、グラスを殺菌したりするときに使われる。


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