■NZの清流がドブ川になる!? 2008.5.13 update

ニュージーランド(以下NZ)は、ここ数年、「環境立国」のキャッチフレーズで脚光を浴びているようですね。今回はその環境をテーマに、柄にもなく、ちょっとシリアスに書いてみます。

NZは農林業国で、NZ名物のヒツジ(羊毛、羊肉)やキウィフルーツは主要輸出品目。古くは英国が主な貿易相手国でしたが、今は日本もお得意先です。加えて、最近は自然の美しさにひかれて訪れる観光客が増加。もともとキウィ(NZ人)がアウトドア・スポーツ好きな国民だったので、アウトドア観光が急激に成長して主要産業の一角を占めるようになりました。

農林業と観光業、両方にとって非常におそろしい共通の敵があります。害獣、害虫、疫病などです。そのため、NZの検疫システムは、大変に厳しいです。NZから日本に小包を送っても、開封検疫検査を受けたなんて話はほとんどききませんが、逆に日本からNZへ送った小包は、相当な確率で開封検査を受けます。特に内容物の項目が日本語で記載してあれば、まず間違いなく開封されます。

空港でも同じ。国によっては麻薬や銃器などの取り締まりが厳しいのでしょうが、NZが厳しく目を光らせている御禁制品は、たとえば泥のついた靴。泥にはNZにいない植物の種やバクテリアなどが付着している可能性が大きいので、別室へ案内され靴を掃除させられます。NZの国際空港のカーペットは、非常に強力な殺菌加工がされているそうですから、ヨチヨチ歩きの幼児はすぐにどこにでも座り込んでしまったりしますが、NZの国際空港の床には座らせない方がいいかもしれません。同じ理由で荷物の中に詰めてきている登山靴やテントも、泥がついてれば強制掃除です。

食品もチェック対象です。生肉や生野菜の類はアウト。かくして持ち込もうとすればもちろん、うっかり申請を忘れたりしても罰金刑です。麻薬犬ならぬ食べ物犬がウロウロしていて、美味しい匂いをさせている人を探し回ったりもします。これに慣れると、成田空港の甘い検疫を見るたびに「大丈夫なんだろうか?」と心配になります。

最近の大問題は、川の汚染です。山瀬まみが出演しているキンチョー・リキッドの“カッパの川流れ”CMはNZの川で撮影されていたそうですが、南島にはさらに美しい川がたくさんあります。ところがディディモ(Didymo)というヘドロ状の醜怪な藻が2004年に発見され、その後はおそろしい勢いで南島全土に広がって、日本の都市部のドブ川のようになってしまった川もあるようです。

釣り道具、靴、カヌーなどについた細胞が他の川に持ち込まれることによって勢力を広げるので、釣り道具持参でNZ旅行をする方も要注意。川で使うロッド(釣り竿)、ライン(釣り糸)、フック(釣り針)、ウェーダー(胴長付き長靴)などは、キチンと洗ってあるものでないとやはり空港で検疫通過できませんし、フライ(毛針)は洗って消毒済みだと申告しても、まず持ち込めないと聞いたことがあります。国内で別の川に移動する場合も、道具を洗わなくてはなりません。これを怠ると懲役5年以下、罰金$100,000(NZ $1=約80円)以下の重刑です。

2月末に先日北島にフェリーで渡ったのですが、乗船待ちのあいだにもバイオセキュリティのアルバイトのお姉さんが回ってきて、「ディディモっていう藻が南島ではびこっているの、ご存じですか?」と、車一台一台にパンフレットを配って歩いていました。文字通り、水際で北島への拡散を防ごうと、必死なのです。今のところ目立った拡散は北島では見られないようですが、すでに文字通り水面下では北島の川も汚染され始めているようです。

今、南島では、「STOP DIDYMO」のステッカーをつけた車がたくさん走っています。美しい川をあたりまえのものとして見ていたキウィたちも、さすがに顔色を変えて環境保護運動を始めたのです。自然のありがたさや美しさは、失ってみて初めて実感できるものです。皮肉な話ですね。

□ディディモ情報(英文): Biosecurity New Zealand [Didymo]

画像上右:羊毛、ラム肉などは大切なNZの輸出品目。ヒツジの数は人口の10倍以上。
画像上左:ディディモ。南島中の美しい川がヘドロ状の藻に覆われつつある。
画像下右:ディディモ分布予想マップ。赤い部分が高濃度。ご覧の通り相当に深刻な状況。
画像下左:実際には目立った被害は出ていない北島にも、すでに移入が予想されている。
画像Copyright:Biosecurity New Zealand

【短信】2007年11月号でお届けしたネイチャーランド・ズーロジカル・パーク、財政難のために3月末日をもって閉鎖のニュース。でも存続運動の甲斐あって、あと3ヶ月の猶予。この間にさらに存続運動がもりあがって、閉鎖が撤回されるといいのですが。(4/27)


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