■こんにちは、赤ちゃん - 後編 2006.5.16 update

前回は我が家のニュージーランド(以下NZ)での出産経験を簡単にお話しました。今回は少し詳しい背景について。

NZでは「妊婦(産婦)本位、赤ちゃん本位」の考え方が徹底しています。極端な例かもしれませんが、日本では週末に出産が集中すると面倒だという理由で医師が平日に出産を「配分」するとか、面会時間以降は家族といえども院内で出産を待つことを許されず、近くのファミレスで夜通し待機させられたなんていう話を耳にしたことがあります。

こちらは「病院側の効率」よりも「ホスピタリティ」が優先。たとえば妊娠中や産後の定期健診は、助産婦がわざわざ自宅まで往診してくれます。あるいは分娩直後、まだへその緒もついたままの赤ちゃんをすぐに母親の胸に抱かせ、赤ちゃんが欲しがればそのままオッパイから授乳させ、助産婦はそれが落ち着くまでいくらでもじっと待っててくれるなんてのは、そばで見ていても本当にありがたいです。指で産道を内診されるのは女性にとってはイヤなものだそうですが(そりゃそうでしょう)、これも事前に妊婦の承諾をえた上で、いよいよ分娩という段になって初めて、しかも非常にもうしわけなさそうに行われます。

こんな細やかな心配りは、女性の助産婦が現場で大きな力を持っているからという気がします。NZでも1960年代までは医師の出産介助がほぼ100%だったそうですが、70年代の自宅出産ブームで助産婦の需要が高まり、1989年の法改正で出産介助に医師の立会いを必要としない助産婦制度が確立、今では助産婦介助の方が一般的です(もちろん帝王切開や無痛分娩などの「医療的処置」は、今でも産科医の出番です)。

我が家も二回とも助産婦にお願いしました。助産婦は妊婦の要望を最大限とりいれ、それぞれのケースに合わせて出産を「カスタマイズ」してくれます。たとえば赤ん坊は夫が取り上げるか否か、胎盤は持ち帰るか否か、へその緒は夫が切るか否か、新生児に投与するビタミンKは注射か経口か不要か、分娩時の姿勢はどうするか、分娩直前に内診してもOKか、会陰切開を希望するか否かなど、細かい点まで事前に話し合います。これは妊婦や夫が出産に関する知識をもっていることも前提ですから、前回書いた出産前クラスの役割は大きいわけです。助産婦は徹底して妊婦を励まし、ほめ、元気づけ、そして赤ちゃんの誕生を心から喜んでくれます。この世で一番素敵な職業かもしれません。ちなみに我が町は助産婦がたくさんいますが、大都市では足りないそうで、なんとも気の毒な話です。

出産費用は妊娠判明時から国の負担で、入院費用さえ無料です。ただ今年になって、国籍取得制度が変わりました。つい最近までNZで産まれた子供はNZ国籍を取得するという法律(生地主義)がありました。ところがNZ国籍だけを目的にこの国で出産する例があとを絶たず、2002年にそうした日本人が医療過誤で赤ちゃんを亡くす痛ましい事故が起こってから、国籍目的の妊婦の入国規制が強化され、今年ついに生地主義を実質的に廃止するにいたりました。つまり訪問ヴィザで滞在中に出産した場合は、健診や出産はすべて有料ですし国籍もとれません。我々は永住権をもつ移民ですから、法改正後に産まれた次女も無事キウィ(=NZ人)になりました。あ、そういえば日本国籍取得がまだだったっけ、ヤバイッ!(^^;

ちなみに50年前のNZの若夫婦が欲しがっていた子供の数の平均は四人だったそうで、確かに僕より一回り年上世代を見回すと、それくらい兄弟のいる人が多いようです。日本の同世代は二〜三人兄弟というパターンが多いようで、実は日本の少子化はすでに半世紀も前から始まりつつあったのかもなぁとか、日本も出産環境を快適に整えれば少子化に歯止めをかけられるかもしれないのになぁとか、がらにもなく難しいことを考えてみたりする今日この頃。

画像上:産後、健診のために家庭訪問してくれる助産婦さん。オムツに赤ちゃんをくるんでバネばかりで計量。前時代的で笑えます。
画像下:興味津々の長女に、こころよく聴診器を貸してくれる助産婦さん。日本じゃちょっと考えられない光景です。ちなみに長女も同じ助産婦さんにとりあげていただきました。

【短信】4月は異例の長雨続き。乳児がいて洗濯物の多い我が家は参りましたが、5月に入ってようやく回復のきざしが見えてきたような……。(5/3)


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