■こんにちは、赤ちゃん - 前編 2006.4.4 update

私事で恐縮すが、先日二人目の子供が産まれました。最初の子のとき、ニュージーランド(以下NZ)のホスピタリティあふれる出産環境に、カルチャーショックを受けるほど感動しました。妊婦(産婦)本位、赤ちゃん本位の哲学がすみずみまでいきわたっているんです。4年で変わった点もありますが、妊婦&赤ちゃん最優先のシステムは健在で、今度も本当に快適な出産でした。今号と次号はそんなお話です。ただし、これは僕の住む田舎町の話ですから、同じNZでも他所では事情が違うこともあるかもしれません。ご了承ください。

長女がお腹にいるとき、僕ら夫婦は「出産前クラス」に通いました。日本にもあるようですが、大きく違うのは「カップルそろっての出席」を大前提にカリキュラムを組んである点でしょう。こちらでは夫は出産に立ち会って妻をサポートするのがなかば当然の役割と考えられているからです。たとえば今回の僕の役目は、妻を励ますのに加えて、赤ちゃんを取り上げることと、へその緒を切ることでした。

2時間授業が8回で合計16時間、妊婦初期から出産にいたるまでの解剖学的学習に始まり、オシメの替え方、授乳の仕方、入浴方法、寝かせ方はもちろん、出産後の避妊法やら、はては緊急出産時に夫が赤ちゃんを取り上げる方法などという恐ろしいメソッドまで網羅する、非常にきめ細かなプログラムです。僕が過去受けた中でも、もっともためになった授業の一つです。もっとも学生時代は居眠りサボリ常習犯でしたので、比較サンプルが少なすぎるかもしれませんが……。

我が家は二回とも助産婦に介助をお願いしたのですが、妊娠中の定期健診もずいぶん違うようです。日本ではかなり頻繁にソナー(超音波)映像で胎児をチェックするそうですが、ここでは18〜21週目の間に一回こっきり、普段はお腹の触診と胎児の心音チェック、そして問診だけ。そのかわり、たとえば触診のときに「ここがお尻、ここが背骨、ここが足」と胎児の姿勢を教えてくれるなど、コミュニケーションは非常に濃密で、妊婦や胎児はもちろん夫のことまでよく気を配ってくれる、信頼感あふれるプロフェッショナルな存在です。

産院での入院生活も快適。小さな田舎町なので4部屋しかありませんが、すべて広い個室で各部屋にはイス、机、ソファ、新生児を入浴させられる大きなシンクもあります。小さな食堂もくつろげる素敵な部屋で、病院特有のいかめしさは皆無、むしろホスピスに近い雰囲気かもしれません。一番驚いたのは、赤ちゃんを新生児室に集めないで、誕生直後から24時間ずっとお母さんと一緒に過ごさせるということ。各部屋に入浴用シンクがあるのはそういう理由です。

オシメはもとより赤ちゃんの服はすべて産院が貸してくれるし洗濯も産院まかせ、そのうえ食事も美味しいので、長女のときには妻は「もう帰りたくない」といったほどです。なんせこれ全部無料なんですから! ただし長女のときは僕は泊まることを許されず、食事も僕の分までは用意されませんでした。ところが今回次女の時には、特に問題がなければ出産後40時間までしか入院できないことになっていました。一泊ないし二泊です。「短い!」と驚かれるかもしれませんが、キウィ(NZ人)の場合は出産後数時間で退院する「日帰り出産」も決して珍しくなく、東洋人との体力差を思い知らされます。ちなみに退院のタイミングも産婦本人の意思が最大限尊重されます。

話は戻りますが、入院期間が制限される代わりに、家族の扱いは大幅に改善されていて、夫(父)は泊り込みOKですし、家族の食事も用意されるようになり、我が家は長女までそろって産院で美味しいご飯をいただいていました。今回は僕も帰りたくなかったなぁ。もっと詳しく書きたかったのですが、紙面がつきました。次回まで少々お待ちください。

画像右上:産院の庭。老人病棟と産院だけの病院なので、こうしたホスピス色の強い素敵な環境なのかもしれません。
画像左上:食堂で昼食をとる妻と、産まれたての次女。一時たりとも引き離されることはありません。
画像右下:個室についているシンク。手前の小さい方が手洗い用、奥の大きいのが赤ちゃんの入浴用、その奥の広いスペースはオムツ替え用。
画像左下:西洋式オムツは一辺が70cmを超える大きな綿フランネルの一枚布なので、用途はいろいろ、おくるみにも使えます。もちろん絞め方も日本式とはまったく違ってます。

【短信】例年になく寒い秋です。次女も生後十日、家の中もやっと少し落ち着いてきました。(3/22)


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