■年に一度の花火 2005.11.7 update

「夏の風物詩」ときくと、何を連想しますか?、ビアガーデン?、ナイター?、海水浴? 海外在住の僕の場合は、郷愁も手伝って古きよき時代の風景がまぶたの裏に浮かびます。蚊遣り、縁台将棋、浴衣、七夕、そして花火。特に花火は、ふいに無性に懐かしくなるものの一つです。マットに寝転んで缶ビール片手に見上げる夜空の大輪の華。花火大会があちこちで無料で催されているのは、海外に住んでみると、とっても贅沢なことなんだと気づきます。それどころか、いつでもどこでも花火を買え、家で気軽に楽しめるのも、実はすごく贅沢なことだったんですねぇ。

なんで今ごろそんな季節外れのネタを書いてるのか、って? それはですね、ニュージーランド(以下NZ)ではちょうど今が花火のシーズンだからなんです。NZの花火事情は、日本とは全然違うんです。ご紹介しましょう。これを読み終えたら、「日本に住んでて良かったな」と思えるかもしれませんよ。。

さて、さきほど「NZではちょうど今が花火のシーズン」と書きましたが、正確な表現じゃありません。正しくは、「NZでは花火は年にたった一日だけしか許されていない」のです。それが11月5日、ガイ・フォークス・デイ。唐突ですが、ここで英国史のお話。あ、半分以上の読者が逃げて行きました……。ま、いいや。

今をさかのぼることちょうど400年、1605年11月5日に、未曾有の大クーデター未遂事件が起こりました。弾圧にあえいでいたカトリック教徒が、国王ジェームズ一世もろとも国会を爆破するテロを計画。首尾は上々で、議場地下には大量の爆薬が運び込まれていました。ところが直前になって内通者から計画が漏れ、現場に警官隊が突入、まさに点火直前のすんでのところで実行犯らはお縄になりました。このときの実行犯が、ガイ・フォークスです(細かいことですが、彼のことを「首謀者」と書いている文献やサイトを見かけますが、間違いです)。

この未遂事件を記念して、以後英国では11月5日は子供たちの最大のお祭りの日となりました。ガイ・フォークスに見立てたボロボロの人形を作って町中を引きずり回しつつ大人から1ペニー硬貨をもらい、最後に広場で人形に火をつけ、もらったお金で買った花火をあげます。

この習慣はNZにも伝わり、上記の通り、年に一度の「花火をやってもいい日」として定着しています。英国の場合はお正月用にも花火は販売され、年に二度花火を買って楽しむチャンスがあるそうです。ところがNZの場合は、ガイ・フォークス・デイだけ。実際にはガイ・フォークス・デイに花火を少し残しておいて、大晦日の年越しカウントダウンがゼロになった瞬間に点火する家が多いですし、これはお上も黙認してお咎めなしということになっているようです。

でも年末にお店に行って花火を買おうと思っても、売ってません。また、ガイ・フォークス・デイ前に花火が店頭に並んでいるときも、子供だけでは売ってもらえませんし、売り場には警備員が立っています。花火に鈍感になっている日本人は、これを見て改めて「そうか、花火って爆発物だったんだよな」と思い出すわけです。

ともかく、そんなわけでNZの子供たちにとっては、花火は待ちに待った年に一度の大イヴェントなのです。小さな線香花火だって、一本ずつ歓声をあげながら、大切に大切に楽しんでいます。いかにも、物を大切にして質素な生活を楽しむNZらしい光景で、見ていても心が温まります。そして大バカ者の僕なんかは、ドラゴン花火を数本口にくわえて走り回ったり、二組に分かれてロケット花火を打ち合ったりなどの過去の愚行の数々を、海より深く反省するわけです、トホホ。

画像上:この箱で25NZドル、今のレートで約2,000円です。
画像下:田舎のキウィ(NZ人)の子供は、こんな花火一つにも大喜び。

【短信】まだ日本にいます。久しぶりに紅葉を堪能しつつも、「NZは花のきれいな季節だな」と、ちょっとホームシック気味の今日この頃。(10/10)


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