■エヴォラの奇妙なお菓子 2008.2.19 update

ポルトガル中南部に位置するアレンテージョ地方のエヴォラで奇妙なお菓子に出会った。商店街の角にあるお菓子屋の前を通りかかった時、ふとショウウィンドウを見ると、白くてぽってりとしたお菓子が目に付いた。それはまるで鏡餅そっくり。つるりとした表面は二段重ねの餅のようで、しかも焼き色までついている。

その横にはチョリッソにそっくりのお菓子、そしてお菓子で作ったオリーヴ入れには緑色のアゼイトナス(オリーヴの実)と食べた後の種までお菓子で作られたのが飾ってある。そしてもう一つ丸い切り餅にそっくりなお菓子。これはいったい何なのだろうか?

エヴォラは紀元前から続く古い歴史を持つ町で、町の近郊にはあちこちに旧石器時代の遺跡がある。そしてローマ時代、紀元1世紀に建立された「ディアナの神殿」が町の高台に、今も立派な形で保存されている。その周りには大聖堂や修道院、いくつもの教会があるので、祭り事が数多く行われることだろう。この奇妙な形のお菓子もそうした時に使われるお供え物かもしれない。

お供え物といえば、ローマ時代「ディアナの神殿」は狩猟の獲物を狩の女神ディアナにお供えした場所だった。その当時からエヴォラの周りは穀物がたくさん実る豊かな土地で、その畑を荒らす野ウサギやイノシシ、シカなどを狩で仕留めていたという。エヴォラは1986年にユネスコの世界遺産に登録されている一級の観光地で、世界各地から多くの観光客が訪れる。

そのエヴォラという町の名前の語源はケルト語のエブロスから始まっている。古来ケルト人はエブロスの木で狩に使う弓を作った。エブロスの木は雨風にも強く狂いが生じにくいという。赤い実は食べられるが、種には毒がある。樹液にも毒があり、それを矢じりに塗って野ウサギやイノシシを仕留めた。狩に重要な役割をはたすエブロスの木はエヴォラと切っても切れない樹木と言える。

紀元前900年頃、中央ヨーロッパからゲルマン人に追われたケルト人がこの地にたどり着き、先住のイベロ人と融合。エヴォラはローマ時代を経てムーア(イスラム)の時代、レコンキスタ(キリスト教国によるイベリア半島の再征服活動。ポルトガルでは1249年に完了)、そしてルネサンスの時代まで発展の一途をたどる。ルネサンスの時代には世界最古に等しい大学も設置された。今も観光地としても、現代の生活空間としても立派に機能している人口5万の都市。その最古クラスの大学も現存するので学生も各地から集まり、この町に暮している若い人の割合も多く、活気がある。

お菓子屋に入ると脇にある少しのテーブルに学生たちが陣取り、コーヒーを飲みながらこのお菓子をほおばっている。エヴォラの神殿の近くのお菓子屋でお供え物(?)のお菓子を片手にノートを真剣な眼差しで見つめ、まるで試験の合格祈願でもあるまいとは思うが、私にも遠い昔、覚えがあるようなない様な。

私も丸い切り餅にそっくりなのと、鏡餅そっくりのを買ってみた。どっしりと重いお菓子で、アーモンドの粉で作られているとのこと。鏡餅にそっくりと思ったのは、この地方独特の形をした、アレンテージョの田舎パンを模したもの。切り餅にそっくりなのは、チーズを模した形だという。半分に割ると、真ん中には卵の黄身でできたアンが少し詰めてあり、苦く濃いエスプレッソコーヒーに良く合う。何となく昔懐かしい味がした。

画像上右:ディアナの神殿。
画像上左:エヴォラの奇妙なお菓子。
画像下右:中には卵の黄身で作ったアンが詰っている。
画像下左:アレンテージョの奇妙な形のパン。まるで眠っている赤ん坊のように見える。


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