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北部ミーニョ地方の町ヴィアナ・ド・カステロの夏祭り。去年に続いて今年も350キロの道のりをものともせず出かけた。といっても運転は夫で、私は横に座っているだけなのだが。
ミーニョ地方はポルトガル発祥の地と言われている。十一世紀にキリスト教徒がイスラム勢力から国土を取り戻そうと起こしたレコンキスタ(国土回復運動)。そのとき活躍したフランスのブルゴーニュ公爵に与えられた領地だった。それがポルトガル発祥の土台になり、イスラム勢力を南へ南へと追い出して領土を広げていった。祭りを見ると、そのころの文化が今でも色濃く残っている。

祭りに参加する人々は男も女も伝統的な衣装を身につけ、女性たちは代々伝わる金の首飾りを何重にも胸にかけて練り歩く。去年はニュースを見て、急に思い立って出かけたので、着いたのは最終日の夜8時過ぎ。すごい人出と人垣で、祭りの行列は隙間からしか見えず、周りが暗いので写真もあまり取れなかった。今年は昼間の行列をぜひ見たいと出かけた。町の入り口あたりからすでにどこもここも車がびっしり駐車している。観光バスも次々と到着。バスから降りた人たちがぞろぞろと中心に向かって早足で歩き、どの顔からもかすかな緊張と興奮が感じられた。
この「ロマリア祭」はアゴニア教会を目指して各地から巡礼者が集まる。去年、道路わきの空き地にテントを張って泊り込んでいる人々をかなり見かけたが、彼らは祭りの4日間をそうして過ごす巡礼者だったのだろう。中心地では、駅から港へ通じる大通りの両脇に階段状の観覧席が設置されている。去年は無料だったが、今年は有料で8ユーロ。それも全席すでに売り切れだという。その他の道路沿いは無料だが、どこも最前列はプラスティック椅子や折りたたみ椅子などを置き、早い時間から場所取りをしている。祭りの行列は午後の4時から始まる。でも後ろの方だと人の頭しか見えなかった去年の苦い経験があるので、最前列はもう無理だとしても絶対に2列目は確保しようと、私たちもずいぶん早くから場所を決めてそこを動かないことにした。
通りの両側はだんだんと人が増えて、車両進入禁止の道路では手押し車に折りたたみ椅子を満載した「にわか椅子屋」が何人もいて、掛け声を上げてひっきりなしに行ったり来たり。あちこちから声がかかり、飛ぶように売れている。行列の間ずっと立っているのも大変なので私たちも買った。これでゆっくりと長時間見られる。
3時ごろになると、祭りに出演する人たちが晴れやかな伝統衣装を着て、次々とやって来た。出発の集合場所に向かっている姿は楽しそうだ。親たちはもちろん、小さな子供たちや赤ん坊まで晴れ着を着て、まるで日本の「七五三のお宮参り」のよう。
画像左:見事な刺繍がほどこされた伝統衣装。
画像中:母親に手を引かれて祭りの集合場所へ急ぐ子供たち。
画像右:母親に抱かれたこの小さな子供たちも、行列では母親と一緒にダンスを踊った。
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4時を少し過ぎて、いよいよ始まった。先頭は「ギガンテ」と呼ばれる張りぼての巨人たち。高さが3メートルほどで、フラフラしながら太鼓に合わせて踊る。大太鼓の小気味良いリズムと音が腹に響き、沿道の観客も一気に祭りの雰囲気に引き込まれる。
昔は牛か馬が引いていたのだろうが、現代はトラクターに引かれた祭りの台車がやってくる。台車ごとにテーマがあり、まず今年の「ミス・ロマリア祭」に選ばれた女性、そして黒いドレスに何重もの金の首飾りを着けた上流階級の女性たち、手には金銀の飾りに包まれたロウソク。新郎と腕を組み、白いブーケを手に持つ花嫁。昔の服装をした貴族夫婦や商店の夫婦たち。
昔からの町の産業と特産物を再現した台車も次々にやってくる。陶器の台車では土をこね、足で蹴るロクロの実演、ビーニョ(ワイン)の台車ではぶどう棚に本物の葡萄の葉と実をつけて、後ろにはビーニョ樽があり、コックを開けて甕に移し変えたのを沿道の観客に振舞っている。
ミーニョ地方の特産「ビーニョヴェルデ」は発泡性ワインで、フランスのシャンパンの元祖みたいで素朴な味。グラスではなく茶碗で飲む。私の前に座ったおじさんが強烈に要求して、何杯ももらっていたが、ついに私の横にいる女性が手を出してその茶碗をむんずとつかんで奪い取り、飲んでしまった。おじさんはあっけに取られ、周りは爆笑。
画像左:大太鼓小太鼓のリズムに合わせてユーモラスに踊るギガンテたち。
画像中:金銀細工で飾ったロウソクを捧げ持つ女性。胸にはずっしりと重たそうな金の首飾りが。
画像右:上流階級の新郎新婦。
画像下
:発泡性ワイン「ビーニョヴェルデ」は厚手の茶碗で飲む。観客に振る舞い酒。
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台車はますます庶民的になり、もうもうと煙を振りまくサルディーニャ(イワシ)の炭火焼まで実演。希望者が台車に駆け寄って手を出す。若い女性たちがパンやお菓子をくばり、その後を蜂蜜の壷を抱えた女性たちが観客たちの差し出したパンに付けている。ちょうどみんなお腹がすくころだから、大喜び。
画像左:行進する台車の上でイワシの炭火焼。
画像中:壷に入った蜂蜜を振舞う。
画像右:マリア様へ薔薇の花の捧げもの。かなり重そうで、途中で隣の女性と交代。
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華やかな衣装を着た年配の女性たちが頭に大きな花かごを乗せている。花かごの中にはレイタオ(生後間もない子豚の丸焼き)。これはさすがに試食はない。
あとの方になると、漁師たちの台車が来た。本物の漁船の上ではヤスに本物の蛸を突き刺したり、別の漁船ではモリの先に何やら長いものを突き差している。それは、長さ1メートルほどもあるランプライア(ヤツメウナギ)だ! 遠目にも点々と8個の眼(眼と7個の鰓孔-えらあな-)が付いているのが判った。ミーニョ地方の特産だ。
農家の人々は鋤や鍬を持ち、女性たちは野菜やトウモロコシを入れた籠を頭に乗せて行進。台車と台車の合間には、民族衣装で着飾ったフォークロアの人々が民謡を歌いながら踊る。小さな子供たちも母親の踊りをまねて踊っているのが、なんとも可愛らしい。
この祭りは「ノッサ・セニョーラ・ダ・アゴニア教会」の宗教行事を中心に、敬謙なキリスト教徒である貴族、町民、漁民、農民など、あらゆる階層の人々が自分たちの職業と衣装にほこりを持って生きてきたことを確認するための4日間なのだろう。みんなが生き生きと祭りを楽しんでいた。
画像左:マリア様への捧げもの。レイタオ(子豚の丸焼き)の入った籠を頭に乗せて。
画像中:漁師たちが集まるバル(一杯飲み屋)を再現。台車の上で飲み食いして盛り上がっている。
画像右:フォークロアの演奏。
画像下:楽隊の演奏に合わせて唄い踊り始めたフォークロアの人たち。
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【短信】こちらは今頃になって、ちょっと“夏らしい”日々が続いています。この「ロマリア祭」を見に行った8月末は、北部のせいもあって肌寒いほどでしたが。(9/6) |