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昨日の朝、キッチンの窓を開けると、サド湾にかなりの数の漁船が出ていた。久しぶりにサド湾に何かがやって来たのだ。このところ毎日どんよりとした日が続き、時には雨まじりの強風が吹き荒れて、メルカドの魚売り場には生きのいい魚の姿がなかったのだが、これで何かピチピチした魚が並ぶかもしれない…。
昨日に続いて今日もサド湾に漁船がどっさり浮かんでいる。ざっと数えて46隻。ドッカ・ド・ペスカドーレス港の漁船のほとんどが湾に出ているのではないだろうか。何かが来ていることは確かだ。さっそくメルカドに駆けつけた。魚屋の台の上には大きな鯖が並んでいる。あちこちで鯖を売っている。キラキラ光る背中の縞模様、はちきれそうな真っ白い腹。ぷりぷりした大型の鯖。サド湾に押し寄せたのは鯖の大群だったのだ。
日本では鯖はほとんど一年中売っているので、何の気なしに買う。でもポルトガルでは、すくなくともセトゥーバルではあまり売っていない。それも冬の時期にたまに見かけるだけ。時々小さいのは並ぶことがあるが、細くてぱさぱさで塩焼きにしてもあまり美味しくない。大きな脂の乗った鯖はめったにお目にかかれないから、貴重品だ。
鯖というといつも思い出すのは、セトゥーバルから南に2時間ほどの所にあるシネスという町に行った時のこと。港の岸壁にたくさんの人たちが駆けつけているので、何事かと私たちも後をついて行った。そうしたら岸壁中に大勢の人が立ち並び、いっせいに釣りざおを垂らしている。中にはそのあたりで取ってきたタケに良く似た棒を、即席の釣りざおにしている。
その脇にあるバケツをのぞくと、ぷりぷりした大きな鯖が何匹も突っ込まれていた。餌は小さな鯖で、これも釣ったばかりのピクピク生きているのを切り身にして、それを餌に、大物の鯖を釣り上げているのだ。シネスの湾に鯖の大群が押し寄せて来たのだった。その時も今と同じ時期だったと思う。
鯖の大群が港に押し寄せる…というのは、日本にいたら想像もできない出来事だ。でもポルトガルに住んでいると肌で実感できるから、うれしい。湾に漁船がたくさん出ていたら、その日のメルカドに現物が並ぶ。それをすぐに買って、すぐに食べられる。いつもではないが、こういうことが時々ある。鯖だったり、イカや小鯛だったりする。
どうして湾内に押し寄せるのか、はっきりした理由はわからないが、そういう時は鯖も小鯛も卵を持っている。湾内に産卵にくるのか、それとも嵐を避けて湾内に避難するのか、判らない。シネスもセトゥーバルも大西洋に面した隣どうしの港だから、岸に沿って同じ海流が流れている。鯖や小鯛は海流に乗ってシネス湾に入ったり、セトゥーバルのサド湾に来たりするのだろう。
メルカドで大きな鯖を2尾買った。2匹でちょうど1キロ。値段は6ユーロだから日本円にすると960円。1尾が480円! 今、円安ユーロ高なので以前に比べてびっくりするような値段になってしまう。日本で鯖1尾を480円で買うか…というと、たぶん買わない。ポルトガルも物価が高くなったものだ。特に魚の値上がりがすごい。でも冬の味覚、しかも時々しか店に並ばないプリプリ鯖は買わないわけにはいかない。ポルトガルには秋刀魚もブリもハマチもまったくないので、青ざかな大好きの私としては見逃せない。
さっそく家でさばくと、はちきれそうな腹には大きな卵が入っている。もうひとつのには大きな白子があった。やっぱり産卵にきたのだろうか? もし卵が全部孵化したらすごい数の稚魚になったことだろう。そう考えたら何だか鯖に対して後ろめたい気がするが、ここは前向きに考えて、美味しく頂くことにした。二枚におろして、半分は焼き魚、残りの半分はしめ鯖にしてバッテラ寿司を久しぶりに作ろう。卵と白子は味噌汁にして、焼き魚は大根おろしを添えて、今夜の晩御飯はこれで決まり。
画像右上:サド湾で漁をしているたくさんの漁船
画像左上:港に帰って来た漁船
画像中:漁船のモーターなどは手製の荷車で倉庫に運ぶ
画像左下:どうだい、この立派なサルダ(鯖)!
画像右下:ピカピカ光るサルダ(鯖)
【短信】あっという間に3月になってしまいました。こちらではアーモンドの花は咲き終わり、青々とした新葉に覆われました。ツバメもいつの間にかやってきてスイスイと空を飛び回っています。(3/6) |