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ポルトガルでは大理石や花崗岩、石灰岩などいろんな種類の石が豊富に産出されます。たとえば、アレンテージョ地方の一部ではオリーヴ畑の下に大理石のぶ厚い層があり、道路脇で大々的に露天掘りしている現場を見かけます。北部に行くと花崗岩が多く、ある所では大きな山全体が一個の花崗岩でできていて、その巨大さを目の前にして信じられない思いをしました。どちらも日本では見たこともない光景です。
あり余る石材は人々の生活の隅々まで行き渡り、活用されています。大理石は、豪邸はもちろん、ごく普通の庶民の集合住宅でも入口の壁から階段、室内の床や窓枠、そしてキッチンの調理台などにふんだんに使ってあります。また花崗岩は日本にも輸出しているそうで、セトゥーバルの港からも船で運んでいると聞きました。その港の出口には石灰岩でできたアラビダ山がそびえています。
石の利用で特に目に付くのは、路地に敷きつめられた石畳です。どの町を歩いても広場や路地は石畳が隙間もなく敷かれています。作り方は町によっていろいろな違いがあり、たとえば、大理石の産地では歩道に大理石のクズ石が使われていて、それを初めて目にした時は「歩道に大理石!」と感激したものです。日本では大理石というと高価な美術品でしか見たことがありませんものね。
でも大理石の歩道というのはやはり産地の周りだけで、ふつうは石畳の材料は固い石灰岩を用いています。白っぽい石を敷き詰めただけの石畳がほとんどですが、白い石と黒い石を使って、歩道や広場に模様を描いた所もあります。
その代表的なものがリスボンのリベルダーデ大通り。広い歩道に描かれた豪華な模様は大規模で美しいものです。リスボンの他にも北の古都ポルトなど昔から商業で栄えた大きな町でも見られますし、私の住むセトゥーバルでは白、黒、茶色の三色の石を組み合わせて模様を描いています。公園通りは昔は砂浜だった所なので、石畳は波の模様をデザインしてありますし、商店街の細い路地などは通りごとに違う幾何学模様が描かれています。又、商店の入口の歩道にはその店の名前を看板がわりに石畳に入れてあったりします。
石畳や広場に模様を描く風習を見て思い浮かべるのは、ローマ時代の遺跡に残っているモザイク画です。ポルトガルにはコニンブリガという大規模なローマの遺跡があり、そこには邸宅跡の床一面に色石を敷き詰めて細かい図柄を描いたモザイク画がいくつも残っています。フランスのアルルやスペインのメリダなどの博物館にもローマ時代のモザイク画は数多く保存してありますが、でも町の石畳は黒い御影石を敷きつめてあるだけでした。ポルトガルでは「モザイク画」の影響が脈々と現代まで伝わっていて、「石畳に模様を描く」という風習の中にそれが残っているのではないだろうか、…と考えたりします。
石畳は約6センチ四方の石を並べて、隙間に砂を入れて固めてあるだけなのですが、思ったよりもずいぶん丈夫です。それにとても臨機応変に応用がきくというか扱いやすい。先日もルイサ・トディ公園で開かれている骨董市に行ったのですが、店の人がテントの支柱にする鉄棒を石畳の隙間に入れてガンガンたたくだけで簡単に立ちました。もっと必要なら石を数個はがして支柱を立てても、後で埋め戻したら元どおりになるから何の支障もありません。
雨が降ると、アスファルトで舗装した道と違って、降った雨水は石畳の隙間から地中にしみこみ、地下水となります。土の上をすべて埋め尽くした石畳、その隙間にはどこからか飛んで来た野草が根を張り、黄色やピンクの小さな花を咲かせます。ふと目をとめるとそこはミニチュアの花の空間があり、気持が和みます。そんな効果も含めて環境に優しい作りと言えます。
でも石畳も長年踏まれていると、型崩れがします。そんな時も簡単にその部分だけを新しい石に取り替えます。工事の様子を見ていると、模様の一部をやりかえる時は木の型枠を置いて、手の平に乗せた石をハンマーでコンコンとたたいて、型のラインに合った石を作ります。まるで薪を割るようにみごとにスパッと割れるので、「これが固い石なのだろうか?」と不思議です。
模様をはめ込む作業はかなり技術が必要で、熟練した職工か親方がやっています。他の作業員は白い石をはめ込む作業をしているのですが、彼らも手馴れたもので、仲間と夢中で喋りながら、次々に石を割っていくのです。石には「石の目」というのがあるので、そのツボをたたくと簡単に割れるそうです。石をぽんぽんと軽くたたきながらていねいに並べた後、その上から砂をたっぷりと振り撒き、大きな木槌でドシンドシンと固めます。ちょっとした所なら一人で木槌を持ち上げて作業していますが、わりと広い場所では専用の機械でドコドコと固めています。
このところ2週間ほど悪天候が続き、各地で洪水の被害がでました。濁流が家の中まで流れ込み、道路は川の様になった様子がTVのニュースで映ったのですが、水が引いた後の道路の石畳はどこも崩れた跡もなく、しっかりとしていました。あんな簡単そうな敷きかたなのに、ちょっとやそっとでは崩れない頑丈な作りで、改めて感心しました。
画像右上:リスボン・リベルダーデ大通りの歩道の石畳
画像左上:三色の石で幾何学模様の石畳
画像右中上:「帆立貝」は巡礼の道の道しるべ
画像左中上:花模様と周りは大理石
画像右中下:ポルトガルの象徴「ガーロ」(雄鶏)模様の石畳
画像左中下:石畳の隙間にけなげに咲いているミニチュアの花
画像右下:商店前の歩道の石畳に店名を入れているところ
画像左下:砂をまいて縦型の「かけや」で固めているところ。傷んだ部分を職人がたった一人で補修工事をしていた。
【短信】日本は紅葉が美しい時期ですね。こちらは今まさに雨期です。雨が多く、空にはもくもくと入道雲が湧いて、雷がごろごろと鳴ったりします。まるで日本の梅雨どきではないかといった天気です。(11/4)
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