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ポルトガルの初夏から夏はカタツムリの季節です。日本はちょうど雨の多い梅雨どき、紫陽花の花が雨に濡れ、葉っぱの上にはカタツムリの姿が…日本の初夏の風物詩ですね。でも今回はカタツムリを食べる話をお伝えしましょう。
カタツムリ料理といえば、フランスのエスカルゴはあまりにも有名ですね。大きなカタツムリにパセリ入りのガーリックバターを上から詰めて、オーヴンで焼くものですが、一人前6個が専用の皿で出される高級な前菜です。カタツムリのことをフランス語ではエスカルゴ、ポルトガル語ではカラコイスと言います。
ポルトガルの食べ方は素朴で簡単、バターを使わないので健康にも良いし、しかも庶民的な食べ物です。食堂やバルの店先には「カラコイスあります」という紙が張られ、道端のテラスでは人々がキーンとよく冷えた生ビールを片手に、小皿に盛られたカラコイスをつまんでいる姿を見かけます。小指の先ほどの小さなのを虫ピンでひとつずつかきだすのはけっこう面倒な作業ですが、次から次に手が伸びて、食べ出したら止まらない…。一日の仕事を終えた人々が夕食前のひと時を楽しんでいる姿…ポルトガルの夏の風物詩です。
街角ではカラコイス売りの店が出て、荷車に山のように積み上げたカラコイスを量り売りしています。積み上げた山の真ん中には香りの強いハーヴ、オレガノの花束が挿してあり、カラコイスがびっしりとよじ登っています。種類は小さなものや、日本でよく見かけるカタツムリとそっくりなものや、もっと大きいのまで数種類あります。その中でもみんなが好んで食べるのは小指の先サイズのカラコイス。街角や露天市の出店にも3キロとか5キロ入りのアミ袋詰めがいくつも置いてあり、この袋入りを買っている人をよく見かけます。親戚一同が集まって、まずカラコイスを当てにビールやワイン、次にイワシの炭火焼で土曜の午後を楽しむのでしょう。
日本の夏は湿気ムンムンで青草が勢いよく繁っていますが、ポルトガルのこの時期、全くと言ってよいほど雨が降らないので、道端や空地の草はすっかり枯れて黄色い枯れ野原になっています。乾燥しているうえに強烈な太陽に何もかも焦がされるので、ほとんどの植物は地上の葉を枯らし、地中でじっと身を潜めて雨期が来るのをひたすら待っている状態です。枯れ草には小さなカラコイスが無数に鈴なりの状態で付いていて、ビニール袋を持ってそれを取っている人たちもときどき見かけます。家に持ち帰って一週間ほど何も与えずに断食をさせてから食べるそうです。調理する時はニンニクとオレガノの花を必ず一緒に入れて煮ます。カラコイスの季節にはいつもオレガノの乾燥花束を売っているのは、他のハーヴよりカラコイスとオレガノの相性が良いからでしょうね。
オレガノのことを知ったのは、ポルトガルに住み始めて間もないころに、近所にある教会のアズレージョ(装飾タイル)を見に行った時のことでした。私たちと入れ違いに出て行った老婦人が、わざわざ引き返してきて、手に持っていた乾燥花束から数本引き抜いて、それを私たちにくれました。「カラコイスを煮る時には、この花をひとつまみ入れるととても美味しくなりますよ」と言いながら…。突然のことでびっくりしたのですが、たぶん私たちが彼女の持っている乾燥した花束を「あれは何の花束だろうか?」と興味深そうに見ていたからかもしれません。
その花束がオレガノと言う名前で、カラコイス料理には欠かせないというのは初めて知りました。それまで私は「カタツムリはぜったいに食べたくない」と敬遠して、街角でカラコイスを満載している屋台の前は足早に通り過ぎていたほどでした。なにしろリアカーの中では何千、何万というカタツムリがうごめいているのですから。でも乾燥花をせっかく頂いたのだからそれを使ったカタツムリ料理はどんな味がするのか、「一度食べてみよう」という気になりました。
そうはいっても生きたカタツムリを自分で料理するのはちょっと…ということで、道端のテラスに座ってビールのつまみに注文しました。やがて運ばれてきたお皿には小さなカラコイスが山盛り。お皿の横に添えられた虫ピンを使って食べるのです。ニンニクとオレガノの香りが調和して、全然くせもなくあっさりとしてとてもカタツムリとは思えない味です。私は海の貝類が好物でよく食べるのですが、それと同じくらい美味しいのです。
メルカドでは海の貝類がいろいろと売っています。親指の先ほどのベビー赤貝や小さな巻貝、そしてアサリなどの二枚貝など。ポルトガル人も大好物で、みんなたくさん買っています。そうした小さな貝類もニンニクと一緒に煮ます。カラコイスと同じような調理です。ポルトガル人にしたらカラコイスは陸上で取れる貝であって、海の巻貝もカラコイスも同じ貝類だという感覚で、カラコイスの季節を楽しんでいるのだと思います。
でも、私にとって大きな違いがありました。「美味い、美味い」と言いながらカラコイスの山を崩していくうちに、ふとお皿の縁に目が留りました。「ぎょえ〜、ツノ、ツノ!」。小さなカラコイスが一匹、二本のツノを出して固まっていたのです。とたんに「ツノ出せ、槍出せ、頭出せ〜♪」というカタツムリの唄が私の頭の中で聞こえてきました。それ以来、やっぱりカラコイスは苦手です。
画像右上:露天市でも、大中小と3種類のカラコイスとオレガノの乾燥花束を売っている。
画像左上:1キロで3ユーロ
画像右中:木蔭のテーブルでビールとカラコイス
画像左中:調理された小指の先ほどのカラコイスが山盛り。これで二人前。
画像右下:ツノ出せ、ヤリ出せ、頭出せ〜♪ 料理されても、まるでリアルなカラコイスを3匹見つけた。
画像左下:カラコイス専門店の看板
画像右下:カラコイス売りのリアカー。今日はもう売り切れです。
【短信】こちらはこの数日、わりと涼しい日が続いて、ビーチも人出が少ないようです。とは言ってもこれからが夏本番。闘牛祭、サンチャゴ祭などがめじろ押し。それ以上に楽しみなのがフェリアス(ヴァカンス)です。ポルトガル人にとっては、そわそわと仕事が手につかない時期です。最低2週間は休みを取って、どこかのリゾート地へ出かけます。その一方で北欧やイギリス、ドイツ、フランスなどからポルトガルへヴァカンスにやって来ます。(7/6)
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