■コウノトリの住む町や村 2006.6.20 update

雨の多い日本からポルトガルに二ヶ月ぶりに戻ってきたら、ポルトガルはもうすっかり夏なので、嬉しくなりました。我が家の周りには松林などがあり、野鳥たちがたくさんやって来て、様々な鳴声を聞かせてくれます。おかげで毎朝、小鳥たちの美しい鳴声で気持ち良く目が覚めます。

旅の後片付けもそこそこに、野の花を見に出かけました。街の中はピンクや赤のブーゲンビレアやジャカランダの紫の花などが咲いて賑やかです。でも郊外の野の花は、残念なことにほとんど終りかけでした。黄色い花は数種類まだ咲いていますが、真っ赤なケシの花や紫の花がもう終ってしまい、色とりどりのお花畑の華やかさがありません。今年は野の花の季節がいつもよりずいぶん早く過ぎてしまったようです。

今回は野の花観賞は諦めました。でももう少しすると、こんどはひまわり畑が豪華に咲き始めるので、それを楽しみに待つことにして…。気を取り直して、ふと空を見上げると、コウノトリが翼を広げてゆうゆうと飛んでいました。近くの教会の鐘楼には大きな巣が架かっています。直径2メートルほどもある巣の中にはヒナが育っているようで、親鳥が巣に戻ってきたとたんヒョコヒョコと小さな頭を出して餌をねだる姿も見えました。


コウノトリが巣を作っているのは、川や水田や湿地帯のある所です。私の住んでいる町から車で1時間ほど離れたアルカサル・ド・サルという町はコウノトリが住むのには最適の場所です。美味しい米の産地で、町のすぐ側まで水田が広がっています。昔は塩田があり、塩を作っていたそうですが、今は塩田に代って水田で米作りが盛んです。今回訪れた時もちょうど田んぼに水がひたひたと張ってあり、田植えの準備もすっかり整っている様子でした。

田植えといっても、日本の様に苗を植えるのではなく、種もみを直接ばら撒くのだそうです。ずいぶん大雑把なやり方ですが、稲は雑草といっしょに成長して、それでも秋には立派な米がたくさん実っています。雑草と競争で養分の取り合いをすることによって、かえってたくましい稲が育つのでしょうか。川や水田には川海老や小魚、そして昆虫など、コウノトリ達の食料が豊富です。教会の鐘楼の上には五つも六つもの大きな巣があり、まるで集合住宅のようです。町がずいぶん前からコウノトリの保護に力を入れてきたおかげで、巣の数も生息数もだんだん増えて、どこの巣にもかわいいヒナの姿が2羽ずつほど見られます。


町の一番高い場所にはお城がそびえています。「アルカサル・ド・サル」という地名は「塩の宮殿」と訳せますが、昔このあたり一帯を支配していたムーア人(モーロ人)の言葉です。ムーア人の時代からこの町は特産の塩で宮殿が建つほど繁栄したのでしょうか。私たちが初めてここを訪れた時は、城壁の一部が残っているだけの荒れ果てた場所でした。その城壁の上にはいくつもの巨大な巣があり、空には数羽のコウノトリが悠々と舞っていて、とても印象的でした。それからだいぶ経って、城跡では大々的に工事が始まり、数年もかかって新しいポゥサーダ(国営城ホテル)が出来上がりました。工事の間、城壁にあったコウノトリの巣は教会の鐘楼などに移されましたが、狭い所にいくつもの巣が密集している条件の悪い場所なのに、今でもずっとそこで子育てをしています。

町を見下ろすポゥサーダの前庭には背の高い鉄塔が何本も立てられて、てっぺんは平らで、コウノトリがそこに営巣するように作られています。でもコウノトリにはあまり人気がないらしく、なかなか引っ越してきませんでした。今回、数年ぶりにポゥサーダに上ってみたら、鉄塔の3箇所ほどに巣ができて、巣の中にはヒナの姿もありました。コウノトリの数がだんだん増えて、巣を架ける場所も限られてきたし、ちょっとぐらい住みにくくても贅沢はいえない、しかたないな〜と、鉄塔の上に巣を作ったのでしょうね。でもやはりコウノトリの巣は古びた鐘楼の上や、廃虚になった工場の屋根や高くそびえる煙突の上にあるのが、見ていて風情があります。

この町とは別の所で、そうした風情を感じられる村があります。やはり我が家から1時間ほど離れた所ですが、そこも水田の広がる米の産地で、たくさんのコウノトリが巣を作っています。低地の村なので小高い丘はなく、農協の倉庫だった大きな屋根や、今は銀行になっている小さなカペラ(礼拝堂)の鐘楼の上とかに巣を架けています。狭い村のあっちにもこっちにも巣があり、外を歩いている村人よりも、空を飛び回るコウノトリの方が多いのではないかと思えるほどです。

今は繁殖期で、ヒナのいる巣では親鳥が餌を持って帰ってくると、やさしい仕草でヒナ達の世話をしています。まだヒナのいない巣ではクチバシをカタカタと打ち鳴らしているコウノトリも見かけました。オスを誘う行為かもしれません。その音は案外大きく、四方によく響き渡ります。

コウノトリが住んで繁殖している風景を目にするのはとても和みますが、ひとつやっかいなのは、フン公害。巣の架かった屋根はフンでまっ白。それだけならまだマシですが、教会の鐘楼の下などをうっかり通りかかると、上からぼってりと落ちてくるので油断ができません。なにしろ身体が大きいのでフンの量もすごいのです。ときどき木の上にも巣がありますが、あまりの肥料のせいでその木は数年も経たないうちにすっかり枯れ木になってしまいます。少し困った問題ですね。


画像右上:町のそばに広がる水田地帯
画像左上:ポゥサーダ(国営城ホテル)の前に作られた鉄塔の台にはコウノトリがようやく巣を作った。
画像右中上:教会の鐘楼の上はまるで集合住宅のように建て込んでいる。
画像左中上:屋根の上はフンでまっ白。
画像右中下:小さなカペラ(礼拝堂)の中は銀行になっている。鐘楼の上にはコウノトリの巣があり、今は子育て中。
画像左中下:今は使われていない工場の高い煙突の上。
画像右下:電柱の上にまで巣を作っている
画像左下:コウノトリのフンで枯れてしまったコルク樫。でも巣にはコウノトリが今も住んでいる。

【短信】ポルトガルは涼しかったり暑かったりと気温の変化が激しいです。この2日ほど猛暑になったのですが、とたんに山火事が発生しました。去年は全国的に猛火に焼かれましたから、今年こそは山火事が起きないでほしいと願っていたのに、ずいぶん早い山火事第1号です。
こちらはフットボール(サッカー)W杯の開幕も近づいて、国中が熱気に包まれています。周りのベランダや屋根には国旗が飾られ、熱心な人は車の両方の窓から国旗をはためかせ、いたる所に赤と緑と黄色のポルトガルカラーがあふれています。6月12日は日本×オーストラリア戦ですね。ポルトガルのTVでは放送しないでしょうから、ドイツの衛星放送で見られるとラッキーですが・・・。(6/4)


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