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アーモンドの実はいつもなにげなく食べてますね。でもアーモンドの花はどういう花かご存知ですか? 私もポルトガルに住み始めてしばらくしてから知りました。それまでも春になると桜に良く似た花が咲いているのをあちこちで見かけたものですが、それがアーモンドの花だとはなかなか気がつきませんでした。
ある日、郊外に行って線路沿いの道を散歩していると、道端に生えている木の枝に淡いピンクの花がちらほらと咲いているのを見つけました。それまでは遠くからしか見かけなかったのが、目の前で手に取って見ると日本の桜の花によく似ていますが、桜よりはすこし花びらが細長いのです。ちょうど通りかかったおじいさんに尋ねると、「アメンドアだよ」という答が返ってきました。「アメンドア」とは何だろう? 家に帰って辞書で調べると、「アーモンド」のことだったのです。
我が家のベランダからは城壁の跡が見えます。昔の地図を見ると城壁が町全体を取り囲んでいたのですが、今もその一部が少し残っています。我が家は城壁の外にある小高い丘の上に建っています。毎年、1月も半ばを過ぎると、遠くに見える城壁に植えられた木々がうっすらとグレーピンクに変ります。最初は目をこらさないとなかなか判らないのですが、それが日を追うごとに少しずつピンクに色づいていきます。やがて林全体が淡いピンクの雲みたいになって、まるで桜の森を遠くから眺めているような気分です。春を実感する時ですね。
日本では桜並木の下で花見となるところです。私も城壁のアーモンド林の中を散歩したいな?と思って出かけたのですが、城壁の周りは家が建ち並んでいるので近づくと家に隠れて、アーモンド林の花はさっぱり見えません。やっとそれらしき入口を見つけたのですが、ぴったりと門が閉ざされていました。城壁の上は個人所有の土地だったのです。我が家のベランダから遠目に花見をするしかなさそうです。
でも町の外に出ると、道端や民家の庭先に1本、2本とアーモンドの木が植わっています。花が咲いているのを見かけたら車を停めて写真をパチリ。アーモンド林の壮観さはありませんが、一本の木に咲いた花をじっくり観賞するのも良いものです。でも時にはうるさい番犬がしつこく吠えることもあるので、せっかくの気分がぶち壊しというハプニングも起こります。他所の家の前でウロウロしている者には吠えるのが番犬の仕事だから仕方ないですね。
アーモンドの木は桜のように大木になります。郊外を走っていると、大木が十数本も並んで薄桃色の花をいっぱいに咲かせている風景に出会うことがあります。昔はその何倍もの木が植わっていたアーモンド畑の名残りです。ポルトガルの最南端に位置するアルガルヴェ地方はとりわけ気候温暖なところです。もともとアーモンド栽培が盛んで、いたるところアーモンドの花が咲き乱れていたそうです。それはほんの十数年前まで見られた風景なのですが、今はそのほとんどが宅地造成されて、ホテルや別荘の建ち並ぶリゾート地になってしまい、アーモンドの林はどこにも見あたりません。
でもアルガルヴェの名物は、アーモンドの実から作ったリキュールや、実を粉にした材料で作ったお菓子です。初めてアルガルヴェを旅した時に、そのお菓子をショーケースで見かけた時は驚きました。まるで和菓子にそっくりなのです。桃やリンゴなど小さな果物の形、そしてその横には大きな一匹の魚をかたどったもの、たぶんお祝いの席に飾るのでしょう。日本でも結婚式の引き出物に鯛をかたどった落雁をもらったりしたのを思い出しました。材料は違いますが、ポルトガルと日本に見た目がそっくりなお菓子があるとはほんとにびっくりです。ひょっとしたら中国のお菓子がルーツではないかとも思えますが。
かなり前のことですが、まだ自分の車がなく、汽車で旅をしていたときの事です。アルガルヴェの駅のひとつから籠をかかえたお爺さんが乗り込んできて、乗客に声をかけながらなにかを売り歩いています。私たちの席にきて籠に掛けてある布を取ると、そこには素朴なお菓子がいくつか入っていました。その中に奇妙な形のお菓子があり、何だろうかとよく見るとそれは干したイチジクに切れ目を入れてその中にアーモンドの実を差し込んであるだけのものでした。なんとも素朴極まりないお菓子です。あまり甘くなさそうなのでひと包み10個入りを買いました。干しイチジクは思ったよりかなり甘かったのですが、アーモンドの味が甘さを抑えて、なかなか美味しかったのを覚えています。
アーモンドの花咲くころに我が家のベランダあたりにツバメが一羽やってきます。毎年必ず一羽だけ姿を見せるのは不思議です。たぶん皆が来る前に、去年の10月に引き上げた時と変りがないかどうかを偵察に来ているようなのです。その一羽がどこかへ行って一週間ほどすると数羽のツバメがやってきてすいすいと楽しそうに空を飛び回り、それから徐々に数が増えていきます。アーモンドの花が咲き、ツバメの偵察係りが姿を現すと、ポルトガルはもう春本番です。
画像右上:アーモンドの花
画像左上・画像右中:道端のアーモンドの木
画像左下:アーモンドのリキュール酒
画像右下:アーモンドの粉で作られたアルガルヴェ地方のお菓子
【短信】日本も大雪が降ったりでかなり寒そうですが、ヨーロッパも寒波に覆われて、先日はとうとうポルトガルでも全国的に雪が降って大騒ぎでした。なんでも52年ぶりの雪だそうです。セトゥーバルでも暴風雪のように激しく降って、この分では明日の朝はまっ白の雪景色が見られると期待したのですが、3時間ほどで止んでしまったのでがっかり。翌日は素晴らしいぽかぽか天気でした。(2/1)
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