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寒くなると日本の温かい鍋物が恋しくなりますね。日本式の鍋物とはかなり違いますが、ポルトガルでも鍋物やソッパ(スープ)の種類がたくさんあります。その中でも日本人に馴染みやすいのはなんといっても「アローシュ・デ・マリスコス」でしょう。海老や貝類と米を一緒に炊いた鍋で、シーフード雑炊といったところでしょうか。店によっては小さなラゴスタ(伊勢海老)や蟹が入っています。もともとは海辺の町の料理です。たっぷりの海老や貝でダシを取って、その中に生の米を入れて芯があるかないかぐらいまで炊きます。
米の分量は、人によって手の大きさは違うでしょうが、一人分が一握り。たとえば家族が五人だと米の量は五握りというぐあいで、計量カップなどは使わずにとても大雑把なやりかたです。海老や貝でさっとダシを取ったあといったん引き上げてから米を入れるのだと思います。店によっては海老などがスカスカになっていたりするのは、たぶん出来上がるまで入れっぱなしのせいでしょう。
家庭でもレストランでも米は洗わないで袋からそのまま鍋に入れるようです。そうはいっても、袋から出したそのままの米は一回や二回洗っても水が濁っているので、私はある程度洗わないと気になります。たとえばスペインの「パエリア」などは米を絶対に洗わないようにとよく聞きますが、自分でパエリアやアローシュ・デ・マリスコスを作る時はさっと洗った米をいったんザルに上げて水切りをしてから使います。でもレストランで食べる時はそんなことは気にならないから自分でも不思議ですね。「味が良ければすべてよし」です。
同じように米の入った鍋物はその他にもいろいろありますが、深海魚のアンコウと米を炊いた「アローシュ・デ・タンボリル」や、タコと米の組み合わせ「アローシュ・デ・ポルヴォ」(タコ雑炊?)も美味しいです。これは大きなタコの足の輪切りがくたくたになるまで柔らかく炊いてあります。
ポルトガルの鍋物はニンニクと玉ねぎとトマトをオリーヴ油で炒め、それにピメンタ(赤ピーマンの塩漬け調味料)を加えるのがまず味の基本で、出来上がりに塩と胡椒で味を調え、最後にサルサ(パセリ)かコエントロ(コリアンダー)を散らす…ということで、薄味なのにとっぷりと深みのある味です。でも自分で作るとなかなかうまくいかなくて、ついついコンソメを少し使ってしまいます。するとどうしてもレストランの美味しい味とはかなり違う味になってしまいます。そういう点ではソッパ(スープ)を作るのもとても難しくていつも失敗します。
ポルトガルではソッパの種類がとても多くて、どれをとっても美味しいです。特に田舎のレストランで出るソッパはこくがあっていい味です。旅先では昼食はソッパとどっしりした田舎パンとだけで充分なのですが、レストランに入るとそういう食べ方はできないので残念です。ソッパから始まってメイン、デザートまで注文するのが普通なので、食べ終わるまでに1時間以上はかかるし、お腹ははちきれそうになるし。ポルトガルではとても太った人が多いのは美味しくてたっぷりの量をいつも食べているせいでしょうか。
ところで、この頃は大型ショッピングセンターがあちこちにできて、その中にポルトガルのソッパ専門のファーストフード店が出現しました。普通サイズのスープ椀ではなく、まるでラーメン鉢のような大きなお椀にソッパをたっぷり注いで、サンドウィッチとセットで売っています。これだけでお腹いっぱい。しかも種類が多いのでいろいろ選べるし味も美味しい。ソッパとパンだけで簡単なランチを取れることは嬉しいことです。それにしてもソッパの量が多いこと! そのチェーン店に対抗してか、最近アメリカ系のファーストフード店でもいろんな種類のスープのメニューを始めたようで、今盛んにTVで宣伝しています。でも小さな紙のカップに入って、あまり美味しそうには見えません。
海岸沿いのシーフード料理「アローシュ・デ・マリスコス」に対して、牧畜の盛んな内陸のアレンテージョ地方には「ソッパ・デ・ペードラ」があります。直訳すると「石のスープ」。数種類の肉やチョリソ(サラミ)などいろいろ入っていて、なかなかコクのある美味しいものです。「石のスープ」とは変な名前ですが、たぶんもともとは硬くなった干し肉やクズ肉やチョリソなどそこらあたりの残り物を野菜と一緒に鉄鍋でぐつぐつと煮込んだのが名前の由来ではないかと思います。
内陸の地方は冬になると冷え込みが厳しいので、アレンテージョの村の家々には巨大な煙突が付いています。農家などでは台所の暖炉で一日中薪を燃やして家中を暖めているので、クズ肉や野菜を三本足の鉄の鍋に入れて暖炉の火の脇に置いておくと、いつのまにかじっくり煮込んだ「ソッパ・デ・ペードラ」が出来上がっているというわけです。ソッパはもともとそういう作り方をしてきたのでしょうね。何種類もの野菜や肉を煮込んだソッパは消化も良いし、栄養もたっぷりの料理です。寒い日にはポルトガルの雑炊やソッパを食べると身体がホカホカ温まります。
画像右上:素焼きの土鍋で炊いたラゴスタと蟹入りの「アローシュ・デ・マリスコス」。これで一人前。とても食べきれない。
画像左上:食卓用ステンレスのスープ容器に入った「ソッパ・デ・ペードラ」香りの強いコリアンダーを散らしてある。
画像右下:巨大なえんとつがずらりと並んでいるアレンテージョの村
画像左下:暖炉の脇に置いて「石のスープ」などを作る、三本足の鉄の深鍋
【短信】ポルトガルもこの一週間程雨や嵐が吹き荒れて、底冷えのする毎日でしたが、やっと今日から晴天になり、近所の窓には洗濯物がいっせいにひるがえりました。空地には青草がぐんぐんと育って、いたるところ緑の絨毯のようです。昼間は洗濯物がはためき、夜になると各家でクリスマスのイルミネーションがパカパカと瞬き、賑やかなことです。(12/6)
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