■ポルトガルの風車モイーニョ 2005.7.18 update

ポルトガルは北から南まで長い距離を大西洋岸に接していて、しかも断崖絶壁の所が多いので、大西洋からの強風が崖下から吹き上げてきます。そうした所には昔から風車(モイーニョ)が建てられ、西風を利用して粉引きをしていたようです。

風車は今でもあちこちに数多く残っています。大半は廃墟になっていますが、いくつかは今でも立派に現役として使われています。パン作りが趣味のマリーナは材料の小麦粉は風車で引いた粉でないと駄目だと言って、わざわざ遠くの風車まで粉を買いに行くほどです。

セトゥーバルの周りにもけっこうたくさんの風車が残っていて、そのいくつかはリメイクされて快適でおしゃれな住居として生まれ変わっています。中にある石臼と粉引きの設備を取り除くと、一階にひとつ、二階にひとつの小部屋ができるスペースになります。知人も廃墟となっていた風車を買取り、同じ敷地に豪邸を建てて住んでいます。風車の中は可愛いインテリアで飾られ、とても居心地の良い喫茶室になっていて、女主人が友達を招いてお茶会をしたり、時には母屋の家族から離れて一人静かに自分の時間を過ごす隠れ家になっています。

ほとんどの風車は小高い場所にあるので、そこからの眺めは抜群です。旅に出て風車を見かけた時、そこを目指して行くとその町全体が見晴らせます。ある町では丘の上の風車にたどりついて景色を眺めていると、どこからかビーニョ(ワイン)のいい匂いが漂ってきました。ホロリと軽く酔いそうなビーニョの香りです。あたりを見ると風車の脇の小屋でビーニョの仕込みをやっていたのです。

また、別の村では風車の中から二人の男の言い争う声が聞こえてきたので、何だろうと思ったら、風車の持ち主と小麦を持ってきたお客の会話でした。「前回に粉引きをした代金をまだもらってない…」とか、「いいや、わしはちゃんと払った…」とかいう内容です。それを聞いて私は「お〜、この風車は今もちゃんと現役で働いているんだ!」と妙な感動をしたものです。

夕方にたどり着いた村の風車では小さな孫を連れたおじいさんと出会いました。「この風車はついさっきまで動いていたんじゃが、もう今日の仕事は終ったよ。毎日夕方5時で閉めるんじゃ」とのこと。残念! 帆を開いてゴーゴーと回る風車を目の前で体験できるチャンスだったのに! 羽根に付いている素焼きの壺は風車が回転すると、音を鳴らすそうです。回転の止まっている羽根の小壺に耳を当てると、ヴォーヴォーと、まるでオーヴォエのような低い音が聞こえました。動いている時はいったいどんな音が出るのかな?

風車が毎日動いているということは、この村の人々や村のパン屋は風車で引いた粉でパンを焼いているということです。たぶん薪を焚きつけた昔ながらのカマドで焼いて…。もしパンの底が黒く焦げていたら、それは薪のカマドで焼いたものです。小さな町や村のレストランでは、ねばりのあるどっしりとしたパンが出てきます。パンとビーニョと塩漬けのオリーブの実がまず始めに出されるので、「メインの料理が入らなくなるからパンは控えめに…」と思っても、パンの美味しさに釣られてついつい手が出てしまうのでご用心! そうしたパンはたぶん風車で引いた粉を使ったパンなのです。

-文中の画像-
画像上:丘の上に立つポルトガルの風車。てっぺんには風見鶏がつけてある。
画像中:幌は帆柱に巻きつけられている。
画像下:帆を拡げて風車が回りだすと、羽根に付けられた素焼きの壺が音を鳴らす。

   
  画像左:崖上に立つ赤い帽子の風車。
画像中:朝から夕方5時まで現役で働いている風車。
画像右:10棟ほど立ち並ぶうちの3棟の風車。
 
 
【短信】日本からに戻って1週間が瞬く間に過ぎてしまいました。こちらセトゥーバルでは既にジャカランダの花も終わり、ビーチには大変な人出で、間もなく夏のサンチアゴ祭も始まります。夏本番といったところですが、日本で久しぶりに味わった蒸し暑さに比べるとやはり爽やかです。(7/12)
 

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