2005年に日本でも公開されたノン・フィクション映画『天国の青い蝶』は、皆さんの記憶にもまだ新しいのではないでしょうか。脳腫瘍を患い余命わずかと宣告された10歳の少年が、ブルーモルフォ蝶を捕まえたいという思いで、人間嫌いの昆虫学者と危険な熱帯雨林の奥地を訪れる映画です。ロケ地に選ばれたのはコスタリカでした(本作のモデルとなった少年が実際に行ったのはメキシコだったようですが)。
まさにコスタリカは蝶が好きな方には魅力ある蝶の宝庫といえます。世界には20,000種類の蝶がいると言われていますが、コスタリカにはそのうちの1,000種類が生息しており、コスタリカだけに生息する蝶も多くいます。コスタリカ生物多様性センター(INBio)には、蝶の標本が約56万個保管されており、今年3月には、7年かけて調査したコスタリカの蝶々図鑑が出版される予定です。
また、これら魅力ある蝶は25年前から養殖され輸出されています。さなぎの状態で空輸され、購入者の手元に届く頃に孵化するようになっています。生態系を壊さないため、輸入された蝶は室内で管理することが必要です。今日、コスタリカの年間のさなぎの輸出額は100万ドル(約1億1,500万円)、輸出量は150種類のさなぎ90万個にのぼります。さなぎひとつ当たり平均1.26ドル(約150円)で取引されています。
コスタリカでの蝶の養殖は花や作物の交配を助けるだけでなく、自然保護の観点からも効果があります。養殖のために新たな植物を植えたり、その土地には生息しない蝶を持ってきて育てるのではなく、各地域の土着の植物に加え、いくつかフルーツや花の木など、生態系を壊さない範囲で植え、土着の蝶を育てています。また、初期投資は、スプリンクラーを動かすための発電機や輸送のためのバイク程度であり、農村部の農家でも従事できる産業となっています。まさに持続的開発に適した産業といえます。
蝶の寿命は、卵の期間が7〜10日、幼虫の期間が3〜4週間、さなぎの期間が7〜10日、成虫になって3〜4週間が平均です。植物の葉に卵が産み落とされたら、大事に養殖箱に保管し、その中で育てます。自然界では、成虫まで到達できる可能性は2%です。養殖することでその確率は90%まで増えます。また、さなぎの期間が短いので、さなぎになったらすぐに空輸する必要があります。これまでコスタリカの主な輸出産品といえば、コーヒーやバナナでしたが、蝶のさなぎの様に、コスタリカの自然を活用した新たな産品もコスタリカの経済を支えてきています。
コスタリカには、様々なスポットに蝶園が整備されています。世界における蝶園の設立は1977年に、イギリス海峡のガーンジー島での観光誘致政策として設置されたのがその始まりと言われています。コスタリカでは、郊外に行かなくとも、首都サンホセのダウンタウンの東端に位置する国立博物館の中の一角に蝶園が広がっています。
また、コスタリカの自然の美が凝縮されているウォーター・フォール・ガーデン(首都サンホセから車で1時間半程)には、卵から孵化する蝶まで一連の成長過程が見られる観察室から、モルフォ蝶が数十匹飛んでいる蝶園が整備されています。そして、輸出されるさなぎの梱包などを見られるアラフエラにあるバタフライ・ファームにはガイドもおり、観光客にも学生にも魅力あるスポットになっています。
自然の山々に、蝶園に、そして世界に羽ばたいているコスタリカの蝶が、コスタリカの自然の魅力を伝えるメッセンジャーになっています。
-文中の画像-
画像上:ウォーター・フォール・ガーデンの蝶園の様子(コスタリカ観光庁提供)
画像中:幼虫(コスタリカ観光庁提供)
画像下:一般的に蝶園でみられる蝶
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□モルフォ蝶
  
中米から南米にかけて80種ほどが生息する大型の蝶で、世界一美しい蝶として有名。翅の表面に金属光沢をもち、この光沢はほとんどの種類で青に発色する。翅の裏は褐色や灰色のまだら模様がある。また、翅の裏には目玉模様がある種類がほとんど。
画像左と中:モルフォ蝶が孵化する様子
画像右:さなぎの状態で輸出される
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