■待ち遠しいキノコの季節 2008.3.4 update

ハンガリーの今年の冬は例年に比べて幾分暖かく過ごしやすいのですが、春の兆しを感じるにはまだもう少し時間が必要のようです。最近は近隣諸国からの野菜などが輸入されたり、ハウス栽培ものが出回るようになったために、真冬でも夏の味を楽しめるようになりましたが、人の手ではどうにもならない地物のキノコを楽しみたい人にとっては寂しい季節です。この時期の野生キノコは乾燥もの、若しくは冷凍ものしかなく、市場でも栽培が出来るマッシュルームかヒラタケの一種くらいしか目にすることができません。

ハンガリーでは多くの種類の野生キノコが食されております。各季節の代表的なキノコとしては、まず春先の短い期間にしか市場に登場しないアミガサタケ。フランスではモリーユと呼ばれ、トリュフに次ぐ高級キノコです。そして日本では健康食品扱いをされているアガリスクが暖かくなり始めてから出てきて、夏にはスイカ並の大きさになる真っ白なキノコ(和名:セイヨウオニフスベ?)や夏トリュフと超高級キノコである白トリュフ。夏の終わりからアンズダケが出始めます。

そしてキノコの本格的シーズンには色とりどりのキノコが出回り、その代表格のポルチーニはキノコ・グルメの在ハンガリーのイタリア人やフランス人を喜ばせてくれます。晩秋から冬にかけてはキノコの大御所、黒トリュフで締めくくられます。このようなキノコは人工栽培技術が確立していないので、キノコ愛好家たちは市場のキノコ売りの屋台でのライナップの変化から季節を感じとっているようです。

ハンガリーでは他の近隣諸国同様のキノコ料理がありますが、その多くはバターで炒めて生クリームで和えたり、肉料理のソースの具に使われることが多いです。例えば「ブダペスト・スタイル・ステーキ」のソースはガチョウのレバーとマッシュルーム、トマトやパプリカからつくられます。またキノコ自体が香り高く濃厚な味があるポルチーニなどはフォアグラと一緒に煮込んだソースがつくられたり、鹿料理に添えられたりします。しかし一般家庭ではそこまで手をかけず、その季節のキノコの香りや食感をそのまま楽しむために数種類を一緒にバターで炒めたり、生クリームで煮込んだりします。また一品料理や前菜として、キノコをくりぬいてカマンベールチーズを入れてフライにする料理も人気があります。

このような野生のキノコは市場で買う場合は非常に高価で、安価なアガリスクでも栽培されたマッシュルームの5倍から10倍、高級なモリーユやトリュフになると40倍から100倍もの価格差があります。ですから地産地消の食形態がなくなってしまった都市部では野生キノコを家庭で食する機会が失われ、「レストランでの食材」になってしまいました。それでも食を追及するキノコ愛好家は都市部でもまだ多く残っているようで、毎年のようにキノコ採取に関する書物が発行されています。

また日本では毎年数多くの毒キノコ中毒が新聞を賑わせていますが、ハンガリーではその類の事件は稀です。なぜかと言えば、市場に並ぶ野生キノコは全て専門家による鑑別が行われ、その鑑別機関では一般の市民が摘んできたキノコも調べてくれるからなのです。更に秋のキノコシーズンになるとキノコ鑑別出張所も街中に出現し、わずかな鑑別料を支払えば摘んできたキノコが安全かどうかの判断をしてくれます。

野生キノコに泥や砂がかぶっていて、調理する前にブラシで綺麗に下準備をすることはかなり面倒でため息が出ますが、その旬にしか本当の味と香りを感じることができませんので、今シーズン最初のキノコの出荷が待ち遠しく思えます。

画像上右:春先のわずかな期間しか出てこないアミガサタケ(モリーユ)。
画像上左:日本では健康食品扱いのアガリスク。
画像中:超高級白トリュフ。ジャガイモのように見える。
画像下左:杏の香りがほのかにするアンズダケ。
画像下右:キノコ鑑別出張所。わずかな鑑別料を支払えば、摘んできたキノコが安全かどうか判断してくれる。


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