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東西の壁が崩壊して早20年近くが経ち、2004年にはEUに加盟したハンガリーでは、首都ブダペストを中心に徐々にではありますが東欧らしさがなくなってきました。「東欧らしさ」とは、つまり共産圏だった時代の競争にさらされない、閉ざされた世界で独自に発展した非効率的な製品や建築物、人々の思考の総称になります。例えば電話線を引いてもらおうとすれば数年待ち、効率性を追求しないので無駄な余剰人員が多くても失業しない会社システム、減価償却の概念がないので建物の修復が遅々と進まず前時代的な街の風景が保たれた時代が戦後40年ほど続きました。
その「東欧らしさ」の代表格の工業製品が旧東ドイツ製の乗用車、トラバントでした。1958年から1991年まで生産されたかわいらしいフォームで、排気量はわずか500〜600cc、最高時速も100kmをようやく超える程度、排ガス対策はゼロ、強化プラスチック製のボディ。それでも注文してから納期までが10年以上待ちということもあって東欧圏内ではいつも品薄の人気大衆車でした。勿論ハンガリーでも男の子が生まれたらまずはトラバントを注文しなくては、というくらい納期が長かったため、お金さえ払えば欲しいときにすぐに手に入る中古車の方が新車よりも値段が高かったなどの笑い話のような実話が残っています。
しかしベルリンの壁が崩壊し、トラバントも西側の乗用車との競争の波にさらされ、基本性能、安全性、排ガスへの配慮の欠如などからごく自然に市場から淘汰されていってしまいました。特に旧西ドイツに飲み込まれたトラバントのお膝元、旧東ドイツではもう観光用の見世物以外はほぼ消滅してしまいました。
それでもここハンガリーではEUの排ガス規制法の執行を猶予されているため、まだまだ現役トラバントが頑張って走っています。現在でも10万台以上が登録されており、旧共産圏では突出してハンガリーに一番多く残っています。さすがに首都圏では100台に1台すらも見ることはできませんが、地方の中小都市に足を伸ばせば青い排ガスを元気よく吐き散らしながら走る姿を頻繁に見かけることができます。
西側の「普通の」乗用車を見慣れてしまっている我々にとっては中途半端な古さのクラシックカーが現役で走っていることを目にするだけでも新鮮に映ります。特に男性の外国人観光客は街の隅に追いやられた「東欧らしさ」を発見して、嬉々としてカメラのシャッターを押す姿も良く見受けられます。その少し残った「東欧らしさ」の象徴もボディの脆弱性や排ガス問題などが理由で近い将来、車道から消えていってしまうでしょう。皆さんもハンガリーにいらっしゃった際には是非、お土産話にトラバントを見つけて写真に収めてください。
画像上右:ポップな色に塗り替えられたトラバント
画像上左:軽い接触事故でも廃車に
画像下右:鎖橋近くに駐車しているトラバント
画像下左:手入れのされていない建物とトラバント
【短信】一日中、マイナス5〜7℃くらいと気温差が余りないブダペストです。今週末はマイナス10℃以下の予想で余り外には出たくない陽気になりそうです。(1/3)
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