■蒸留酒パーリンカはどんな果物からでも 2007.9.4 update

今年の夏の暑さは2003年にヨーロッパを襲った猛暑の記録を塗り替えるほどに厳しく、40℃を越す日々が何日もありました。初夏に天気が良ければ果物などの出来が良いのですが、今年は春先から初夏にかけて数日間で気温差が20℃以上あった時期もあり、多くの農作物に影響が出てしまいました。そんな異常気象の困難にも負けず今年も連日たくさんの果物が市場に並べられ、市民たちは嬉しい悲鳴をあげています。

ハンガリーでは、果物からつくられる蒸留酒はパーリンカと呼ばれています。夏の瑞々しい果物の香りや風味が凝縮されて蒸留されます。主に食前酒として小さなグラスで振舞われますが、アルコール度数は40〜50パーセント。パーリンカをお酒として楽しめない人でも、アルコールを飛ばしてお菓子などの料理に活用したりします。

主力選手は、初夏が本場の香りが強いプラム。その他、杏、洋梨、サワーチェリー、リンゴ、ラズベリー、ブラックベリー、マルメロ、葡萄などからつくられます。地域によって適した果物が採れるので、例えばハンガリー大平原の玄関口のケチケメートでは杏、ルーマニアに近い東部ではプラムなどのパーリンカが一級品とされています。好みにもよりますが、日本人には杏(barack)や洋梨(vilmos)、ラズベリー(malna)が口に合いやすいと思います。

昔は蒸留する作業も家庭で行われていたのですが、手間がかかることや自家製でも自治体からの許可が必要になるなどの面倒が多くなり、近年では梅酒のようにプラム・パーリンカに果物や香辛料を漬けるといったお手軽に作る方法が家庭では主流になりました。

国民が誇るパーリンカではありますが、近年までワインのように品質を競い合うお酒ではありませんでした。家庭で漬け込み、ホーム・パーティに招待したゲストに振る舞ったり、隣近所で自慢の我が家のパーリンカを地場消費してしまうようなものでした。しかし、世界三大貴腐ワインのトカイ(Tokaji/Tokay)を始めハンガリー・ワインが国際的な名声を得るようになると同時に、パーリンカも同様の地位に押し上げられてきました。

一部の大手を除くと、小規模生産が殆どのパーリンカ業界。そんな生産家が一堂に集まり初めてのパーリンカ・フェスティバルを開催したのは2006年の5月。地方でしか知られていなかった銘柄が多く出展し、ブダペストでは小さなアルコール革命が起こりました。その後僅か一年余りのうちに、ブダペストの中心地に地方出身のパーリンカメーカーのアンテナショップが6軒も出店しました。

もともとは粗野なお酒であったパーリンカ。農夫たちが朝の起き掛けに一杯引っかけて農作業に出向き、無骨な親父たちが社交場である居酒屋で太い指で小さなグラスをつまんで一気に飲み干す、そんな背景を持つ蒸留酒。時代とともに愛され方は変化し、これからは若者にクラブやバーでカクテルとして愛飲され、海外でも楽しまれるようなって益々洗練されていくことでしょう。パーリンカ生産家たちの更なる意気込みが聞こえてきそうです。

レストランの模様替えが終わらないままに営業を続ける経営方針。伝統料理をサービスする店でありながら、コックのシフトが代わっただけで味が変わるほど安定しないクオリティ・コントロール(ハンガリーの伝統料理・家庭料理を出す店は、その日の出来不出来の差があることは割と一般的)。典型的な悪い事例ですが、長い間住み続けていて感覚が麻痺してしまったようです。西側標準からは大きく外れている「元」共産国の標準を、友人の眉間の皺が気づかせてくれました。

翌日は屋外プールも併設するレジャー・湯治型温泉に彼らを送り出したのですが、この道中でもひと悶着。市内交通のバス、路面電車では車内で切符を購入できないのであらかじめ用意して車内で入鋏します。無賃乗車を取り締まるための検札が不定期に乗り込んできます。ガイドブックにはアジア人は目立つからチェックを受ける対象になりやすいと紹介されていますが、そんなことはありません。外国人観光客は皆標的の的。

友人達は乗車してから揺れる車内の座席にちょっと座った瞬間に検札にあい、入鋏する暇なく罰金を言い渡されました。検札官の、公正とは言いがたい検札方法の悪い噂はしばらく途絶えていたのですが、まだしっかりと顕在していました。友人は、しぶしぶ5,000フォリント(約3,500円)を支払いました。

安定した公平なサービス・質から逸脱した共産主義的な“歓待”を受け、友人と彼の娘さんはかなり面食らっていましたが、自国と比べて格段に安いビールを灼熱ブダペストで次から次へと飲み干し、国会議事堂や王宮など、ドナウに佇む豪奢な建造物に感嘆の声を上げ、船でウィーンへとブダペストを後にしました。生活や社会の端々に漂う旧共産国の残り香に彼らは顔をしかめることもありましたが、まだまだお得感を感じる物価と街の景観は、暫く西側観光客を魅了し続けそうです。

上右画像:グラスに注がれたパーリンカ
上左画像:果物を漬け込んだ自家製パーリンカ
下2枚画像:市販のパーリンカ

【短信】8月20日の「聖イシュトヴァーンの祝日」は何かの因果でしょうか、昨年同様に大嵐に見舞われました。それでも祝日のメインイベントである花火大会の時間には不思議と嵐が通り過ぎ、人が引けてしまったドナウ岸などで例年同様に盛大に花火が打ち上げられました。(8/23)


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