■ハンガリーの警察官 2007.3.6 update

「教師・医者・警察官」。残念ながら、ハンガリーの安月給の代表選手達。未来の子供を教育し、国民の命を救い、安全を守る彼らの給料は充分とは言えず、アルバイトや転職、心付けなどの収入で生活を支えています

警察官が副収入を得ることに一生懸命知恵を絞るというのはあまり想像できませんが、「警察」という看板を背負って少々手荒な手段を使ったり、非番の時に小遣い稼ぎに精を出したりと、方法は様々です。例えば、免許不携帯や整備不良車両などの軽微な交通違反は、パトロール中の警察官の良いターゲットとなります。停止を求められ、「領収書が必要なければ罰金の値段が変わるよ」と言われたら、罰金が安くなることを意味します。

共産時代、政治家や役所などの権威者に対して賄賂を上手に使うと難問がスムーズに解決したり、より快適な暮らしが期待できたので、国民には国家権力に抵抗しないという感情が浸透しています。罰金の支払いに対して正式な書類が発行されないのですから、徴収される金額は全てお巡りさんのポケットへ。但し、このような手荒い技は近年あまり耳にしなくなりました。

正当なアルバイトとは、観光ピークシーズン時のバスの運転手など。運転手付きの小型バスを注文した時には、急遽駆り出された運転手に「この仕事を頼まれたのは昨日のこと」と言われました。彼に本職を訊ねてみると「警察官」。普段は自らが取締りをしているので、ネズミ捕りをしていない安全な場所や時間帯をよく把握しており、少々スピードオーバー気味の運転で詰まり気味の日程をそつなくこなしてくれました。勿論、本業のみにいそしむ警察官もいます。

以前、一緒に同乗していた知り合いの車が出先で盗まれ、現地の警察署へ盗難届けを出しに行った時のこと。担当婦人警官の制服はほころび、メモ書きは使用済み用紙の裏側を利用していました。日々の長時間労働を考えると、一般警官の労働環境が整っているとは思えません。そうは言っても、ハンガリーの警視庁はアルパード橋の袂にある全面ガラス張りの近代高層ビル。あまりの見栄えの良いビルに、ブダペスト出張に来た外国人の友人は、最新型スタイルのデパートかと思ったそうです。

昇給への願いが叶いそうにもないので仕事へのモチベーションが低くなってしまっているのか、携帯電話で長話しをしたり、何人も集まって談笑したりと、パトロール中の勤務態度としてはあまり真剣味が感じられません。元々日本人と比べると勤労意欲に欠け、お喋り好きなハンガリー人ではありますが、流石に度が過ぎたのか怠惰な職務に難を示す市民の投書が地元紙に掲載されていました。「彼らだって人間だけど、勤務中にお喋りをしていたり、寒いからといって屋根の下で暖をとったりしなくても」と、写真付きで指摘されていました。

2006年9月、野党の呼びかけで大々的な政治集会が開催されたことをきっかけに、普段から現在の政策に不満をもつ市民と事態を収拾するために全国から集められた武装警察の衝突。警察隊の放水車が出動し、催涙ガス弾が発射されるまでに事態は発展し、国会議事堂前は連日厳重な警備に囲まれました。一時は厳戒態勢が危ぶまれましたが徐々に日々は落ち着き、警備にあたっていた警察官も緊張の糸が次第に緩んでいきました。通行止めの警備にあたっていた立ち話中の警察官に迂回する道を訊いた際に柔道や剣道の話題になり、しまいには「僕の同僚は日本人の女性と結婚しようとしたが、書類に問題があって結局破局した」というこぼれ話にまで会話が発展しました。

犬の糞尿が社会問題となっているのに、目の前で用を足す犬に目を細めて眺める犬好き警察官。花や果物を大量に抱え、スーパーマーケットの前で物売りをする老婆に撤去命令を下しても、口答えされて辟易しているお巡りさん。大聖堂前広場のベンチで横になる浮浪者への職務質問が、世間話に変えられて根負けするパトロール中の二人組み。威厳を持って職務を遂行することを警官に期待する半面、親しみやすく人間的であっても欲しいもの。市民の希望とは常に勝手なものですが、権力を笠に着た抑圧的な取締りがなされていた時代よりは、一般人との関係が良くなっていることが伺えます。時に命を張る職務に見合う労働環境が改善され、仕事への使命感が更に向上することを願うばかりです。

画像上:パトロール中の警察官
画像上:喫煙しながらのパトロール
画像中:走行中の車を検査
画像下:武装警官
画像下:厳重体制の武装警官

【短信】デモの話が重なり恐縮ですが、来る3月15日の「革命記念日」に再び野党が大集会を行う計画でいます。10月の独立記念日にあわせて集会を行ってデモを誘導した疑いがありますが、今回も厳重な警備体制を準備しつつあります。


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