■乾杯の季節 2006.10.3 update

新摘みの葡萄からできたワインの発表会という大義名分の元、ハンガリー各地でワイン・フェスティバルが開催される季節がやってきました。各地方での葡萄祭りを網羅するのであれば、全国津々浦々猛スピードで車を飛ばしていくつもの街へ足を運んでも何年がかりになることでしょう。6月から8月にかけてブダペスト市内やハンガリーの海と謳われるバラトン湖周辺でも同様のフェスティバルはありますが、やはり9月が本番。ハンガリー人だけでなく、クオリティーが確かなハンガリー・ワインをこよなく愛する外国人がそわそわし始めます。

最大の規模を誇るのは王宮で開催される今年で15回目の「ブダ王宮ワイン祭り」。以前は目抜き通りヴァーツィの出発地点ヴォロシュマルティ広場で開催されていましたが、手狭になったために数年前から王宮へと開催地を移動しました。開催日数日前からの有名ワインメーカーを講師に招いてのワイン講座、ワインメーカー達の国際コンクール受賞の表彰式など、年を追うごとに大掛かりな催事へと発展しています。大物ワインメーカーの蔵主も、お得意さまのワイン・コレクターやレストラン・オーナーへの挨拶のため、スーツを着込んでご自慢のワインを紹介します。

入り口で入場料を支払い、ワイングラスをもらいます。全国から集まるワインメーカーの自慢のワインを色々と試飲できるチャンスですが、勿論無料ではありません。試飲チケットをインフォメーション・センターで購入して、各ワインブースでお支払いください。でも蔵の一番いいワインをただで飲み放題できる人がいます。それはワイン合唱団。ワインレッドのエプロンのコスチュームをかけたお兄さんたちが、葡萄摘みの歌をブースを練り歩きながら歌います。どのブースに行ってもカウンターから「どのワイン飲んでいく?」と声をかけられています。どんなに飲んでも音程がはずれないのですから、喉だけでなく肝臓も余程強いのでしょう。

酔っ払ってついグラスを握る手がぶれて、グラスを落としてしまう「惨事」防止のため、今年から首からぶらさげるグラス・ホルダーが入場時にもらえるようになりました。これは大変嬉しいおまけです。

「でもね、ここのテナント料は格段に高いの。利益よりもプロモーションと考えて参加しているのよ」と、長年懇意にしてもらっている蔵主のおかみさんは、昨年醸造されたご自慢の赤ワインをグラスに注ぎながらそっと耳打ちしてくれました。

さて、今年はブダフォクの「第17回ワイン・シャンパン祭り」にも足を運んでみました。インフォメーション・センターで手にしたパンフレットをどうして素通りできましょう。女性区長の「ぜひお越しください」と強烈に勧誘している笑顔が表紙だったのですから。

ブダフォクにはハンガリー老舗のスパークリング・ワインメーカー「トルレイ」の製造工場があります。様々な種類のクオリティー・スパークリング・ワインを少しずつ試飲する機会には簡単にはお目にかかれないもの、このチャンスを逃す手はありません。

ブダペストの南に位置する22番地区ブダフォク。古くから葡萄栽培が行われていました。18世紀半ばにペストで人口が激減した後、女帝マリア・テレジアが移民政策として多くのドイツ人をこの地に送り込みました。彼らが再び葡萄栽培に携わることになったのです。

19世紀半ば、ヨージェフ・トルレイは2つのフランス・シャンパン製造元で営業マンとして働いていました。彼は中世に造られた無数の円筒型の地下をブダフォクに発見。1882年にハンガリー版シャンパン製造のため、彼の全知識を駆使することに決めました。

祭り当日、工場敷地内では楽隊が音楽を演奏していました。蔵をガイドつきで見学し、トルレイ社の歴史や寝かせてある在庫を見て楽しみました。歴史や製造方法の勉強もいいですが、やはり試飲をしなくては。カウンターで配られるグラスは落としても割れないプラスティック製。トカイ・ワインのスタンダードである葡萄種フルミントで醸造したトルレイ・トカイ。伝統を守るための永続的な研究が重ねられ、甘口愛好家から絶賛される美しい色のロゼ。爽やかにきれる泡が、試飲の杯を重ねさせます

お父さんのグラスからちょっと失敬して味見させてもらっている幼児を発見。それどころか、小学生ぐらいの子供がお婆ちゃんらしき女性と一緒に、しっかり一杯分のグラスを手に握っていました。ノンアルコール・シャンパンが試飲メニューに載っていましたが、果たしてそれを飲んでいたのかどうか。

通常は市内から路面電車一本でブダフォクまで到達できるのですが、残念ながら現在地下鉄開設工事のため途中代替バスに乗り換えなければならず、この日は到着まで非常に不便な思いをしました。ところが「トルレイ」はそんな小市民の機嫌の悪さをあっという間に吹き飛ばしてくれました。124年の歴史を持つ老舗の重みに、ひたすら感謝しました。

画像右上:首から提げるワインフォルダー
画像左上:夕暮れ間近の各ブース
画像右中:試飲を楽しむ人々
画像左下:トルレイ蔵見学入口
画像右下:トルレイの蔵内部

【短信】18日から19日未明にかけて、首相退陣求めて発生した、テレビ局への暴動、国会議事堂前でのデモ。ブダペストは少々騒々しくなっています。多くの武装警察、騎馬隊が動員され、一般市民との衝突が続いていますが、日中は普段とあまり変わりのない街中の様子です。10月1日に行われる地方選までデモが継続されるかどうかが現在の焦点となっております。(9/21)


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