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以前に比べ年間を通して祭事が増えてきたハンガリーですが、オペラや新劇を中心に企画されるスプリング・フェスティバルを皮切りに、夏に向かってお祭りの内容は一層華やかになります。サクランボウ収穫時のチェリー祭り、日没が最も遅い7月の宮殿敷地内での野外コンサート、勿論ブドウ収穫たけなわになると各ワイン産地ではワイン・フェスティバルが。
6月初旬にはブダペストの中央広場であるヴォロシュマルティにて、本好きにはたまらない本の展示会が開かれました。160のブースが設置され、出版社や本屋が出店。各ブースの前には招待された作家が集まり、訪れるファンにサインをします。新刊の宣伝にいいチャンスです。作家たちの風貌は似たり寄ったりで白髪のもじゃもじゃ頭、馴染みのファンや同志と共に談義に花を咲かせています。その様子はまるで、19世紀に市内に600軒構えていたカフェテリアでインスピレーションを掻きたてるために日がな一日エスプレッソ一杯で談義する芸術家たちの集いのよう。
ブース前に置かれた椅子に座りファンを待つのは作家だけではありません。自叙伝を出版したばかりの元首相オルバーン・ビクトルが、同展示会でサイン会を行ったのは数年前のこと。多くのブダペスト市民がブースで販売されている首相の本を購入し、サインを求めて長蛇の列に並びました。1998年にわずか36歳で首相となったオルバーンはプレゼンテーションに非常に長けているのですが、一人一人に丁寧に握手で対応し精力的にサインをこなしていました。途中小用で近くにあったレストランに駆け込みましたが、ウェイターもサインを依頼、快く対応していました。日本語で「オルバーンさーん」と声をかけると笑顔で振り向いてくれました。
うってかわってカメラのファインダーを向けた瞬間に「ノー」のしぐさで手厳しく撮影を断わったのが、女性タレントのシュタール・ユディット。料理番組や数々の料理本出版で名を知られていますが、在ハンガリー邦人の間では最も有名なタレントの一人と言えるでしょう。「ミツコ」という名で日本人女性を装い、日本語訛りのハンガリー語で有名芸能人と対談をするという設定で高視聴率を獲得した番組に出演。日本人のマイナス・イメージを強く演出した内容ということで小さな外交問題にまで発展しました。サインの列に並ぶ地元ファンの中に混じってカメラを向けた瞬間に断りポーズを示されたのは、昨年のことでした。
さて、今年の個人的目玉はハンガリー絵本作家マレーク・ヴェロニカ女史。1965年に「ラチとらいおん」が日本で出版されて以来、13冊もの彼女の作品が日本に紹介されています。昨年2月には東京でサイン会が開かれました。今年69歳になるとは思えないほど活きとした笑顔で旅行客にも隔てなく握手で対応、やさしい眼差しを子供に向ける元国立人形劇場のスタッフの彼女でした。
ゆっくりと各ブースを眺めていて特に目をひきつけたのは、ティンプ出版社の料理本シリーズ。最近精肉業界において販売戦略の攻勢が著しいハンガリー固有種の灰色牛「スルケ・マルハ」、巻き毛が愛らしいけれど脂肪分が高い豚「マンガリッツァ」を使った各料理本に引き続き、田舎で主要な蛋白源として卵や鶏肉を大切に食していた頃のレシピを取り扱った「家禽類」シリーズがきれいにディスプレイされていました。
社会科学の権威であるデブレツェニ・ヨージェフが著した「ジュルチャーニ首相」は多くの人が手に取りページをめくっていました。首相の生い立ちが詳細に記されたハード・カバーの本で、各ブースで平積みにされていました。4月に行われた総選挙で見事に勝利し、6月から政権を続投しています。著者デブレツェニ・ヨージェフは1990年4月に40年ぶりの自由選挙で首相の座を獲得したアンタル・ヨージェフ、元首相オルバーン・ビクトルなど、それぞれの生い立ちの本を出版し、既に大成功をおさめています。次なるターゲットは誰になるのかと囁かれています。
実は本の展示会と同日程にて、英雄広場裏の市民公園でワイン・フェスティバルが開催されていました。知識欲を満たしてくれる英知のお祭りに出向くか、人生の彩りに花を添えてくれるワイン祭りに訪れるかは非常に難しい選択です。それとも血液の流れを促進するアルコールを体内に十分に注いだ後、活字で更に脳みそを活発化させてもいいかもしれません。
画像右上・画像左上:本の展覧会
画像右下:「ミツコ」のシュタール・ユディット
画像左下:絵本作家・マレーク・ヴェロニカ
【短信】しばらく雨が続き今年は冷夏が謳われていたのですが、ワールドカップが開始された頃から急激に暑くなりました。目抜き通りのレストランやカフェではサッカーファンが設置されているテレビに釘付けで、1リットルのビールを煽っています。また本日は、ブッシュ大統領が訪洪したために数日前から主要道路ではレッカー移動や検問が頻繁にされ、宿泊ホテル周辺は高さ2メートルほどのバリケードが用意されました。数ヶ月前にプーチン大統領が来たときよりもかなりの厳戒態勢となっています(6/22)
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