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日本では労働者が副業を持つことは難しいのではないでしょうか。社内の情報が漏れたり転職のきっかけになったりする危険性があるため、副業を禁じる企業や団体がほとんどだと思います。ここハンガリーでは副職を持つことは特別なことではなく、皆が雇用先以外で収入を得ようと思いを巡らせています。
全ての企業が国営だった社会主義時代、特に建築関係や電工関連、医療関係などの特化した技術を持っていた労働者は、自らの専門技術を使って身内や知り合いからの依頼に応じて副収入を得ていました。仕事場には朝8時に出社し、夕方4時には帰ります。効率性を求められなかった経済ですので、お客が待っていようとも予定の計画が終了していなくても、仕事を切り上げてしまうのです。そのため時間的、体力的余裕は共に充分にあります。帰宅してから「友人の壊れた冷蔵庫を直す」、「知り合いの家の窓枠を修理する」といった細々とした注文をこなしていきます。ハンガリーはコネ社会ですから、腕が良く誠実でさえあれば口コミで客は集まり顧客が途絶えることはありません。職場からもらう給料よりいい収入を得る人もいました。
病院で勤務しながら個人診療所を運営する医者もいます。週に3日間午前中だけ軽い症状の患者を診察したり、ホームドクターとして風邪気味の知人の子供を問診したり。適切な医療処置を必要とする深刻な症状の患者には、臆面もなく勤め先の病院に通院させます。また、外国人旅行客のガイドをこなす、大学教授もいます。
給仕や調理師も専門学校で学んだプロとしてレストランに雇用されますが、知り合いなどに頼まれて自分のシフトではない日に別のレストランへ手伝いに駆けつける者が多くいます。特に、連日テーブルが埋まる観光シーズンでは副収入を得るチャンスが頻繁になります。自らの仕事場のオーナーにも内緒にはしません。それどころか手伝い先の日当を自慢したりするほどです。毎年8月にはブダペストの近郊でF1が開催され、会場には多くの飲食ブースが設置されますが、臨時収入を当てにするウェイター達が一日中特大ジョッキにビールを注ぎ、副業に精をだします。
昨年(2004年)EUに加盟したハンガリーを見通しの明るい投資先と捉えて進出してくる西側企業は、おおっぴらに副業をするハンガリー人に眉をひそめます。社会主義時代からの感覚は若者の世代にも浸透しているため、若い従業員でも外国人上司の前で堂々と雇用先の商品のデザインを模倣したり、営業にやってきたセールスマンと個人的な仕事の契約をかわしてしまうことがあります。情報漏洩になるからと諭しても、企業の利益にならないと教育しても、副業への熱意を削ぐことはできません。
豊かな生活を営むために自分の技術を有効活用するのは構いませんが、本来ならば雇用先の利益となるはずだったものの横取りはルール違反でしょう。彼らには、十分な給料が支払われないのだから自分の専門分野や特技を生かして収入を増やすことの何が悪いのだろうという言い分があります。企業繁栄の上に個人の安定が確立されるのか、個人の幸せの上に企業が成り立つのか、日本とハンガリーは対極にあるような気がします。
画像:世界遺産に指定されている「王宮の丘」。此方ブダペストは、既に初夏を思わせる陽気です。観光客で街は賑わい、テラスはビールのジョッキを片手にしたお客でいっぱいです。(5/27)
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