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ブダペストの住宅事情は、環境の点においてはあまり良いとは言えません。観光の視点から見ると重厚な雰囲気を醸しだす建物群は歴史的な重みを華麗にアピールしていますが、歴史を背負うということは機能的な設備とは対極にあると言っても過言ではないでしょう。19世紀末にブダペストで起こった建設ラッシュ時につくられた建物に、現代に生きる人々が住んでいます。エレベーターや水道管、ガス管は壁や床に穴を開けて、あとから徐々に付け加えていったもの。また、南向きの間取りなどは贅沢の極み。窓が家全体で北側にひとつのみの部屋も珍しくなく、賃貸時には「直接日が差す明るい間取り」が宣伝文句になることも。風通しの良い、という概念のないハンガリー人にとって、最近、風水が流行してきたのも頷けます。
1989年に体制が崩壊し、新事業を起こして裕福になった家族や、海外への出稼ぎでまとまった資金を貯めることに成功した若者などが、都会を脱出して郊外の緑溢れる敷地に一軒屋を構えるようになってきました。自分の庭になっているリンゴや杏をもいでジャムをつくり、暑い夏には家族や友人とともにバーベキューを楽しみ、日がな一日自宅でつくった蒸留酒を飲みながら会話に興じる。勿論、都市に住む全ての人の叶う夢ではありませんが、多くの市民が夢を達成のためにさらに仕事をするようになりました。
車を走らせれば30分内で到着するような郊外型都市はまだ発展途上です。「8年前に1400万フォリント(約780万円)で購入したあの家も、今では4000万フォリント(約2200万円)を出しても手に入らない」、歩いて3分でドナウ川が流れるところに庭付き一戸建てを構えた友人は、犬の散歩をしながら隣人の家を指差して言います。
当然ですが、一軒屋を構えるということは労を伴います。丘の高台からパノラマを見渡せる家を婚約者と購入した30歳の友人。楽天家の彼氏は「大きい家には大きい犬」と、一日に餌を3キロも食べる大型犬を購入。「赤ワイン樽を置いておけるワイン蔵を地下に増築するぞ」と早速、設計士探しに奔走しています。実労働を寡黙に遂行しているのは彼女、「週末は一日中家の調整に追われ、休息どころではない」とため息を漏らします。
また、ある知人は、長らく住んでいた首都のアパートを売り払い、郊外に一戸建てを購入しました。しかし、諸経費が予想以上にかかり生活が苦しくなり、折角購入した家を売却し市内に舞い戻ってきてしまいました。
乱立する郊外型の不動産事情とは裏腹に、インフラ整備のスピードは同じペースで進んでいませんので、年を追うごとにブダペストの交通渋滞は顕著になってきました。車を注文しても5〜10年待ちの共産時代とは違い、車購入にローンも組めるようになった近年、自家用車保有率が高くなりました。市内の駐車場問題も未解決のまま、郊外からの通勤も苦労が伴います。
それでも、前出のドナウ川沿いに居を構える友人が、外の空気が気持ちいい時期になると毎週のように庭でバーベキューを楽しみ、「朝の起きがけのコーヒー一杯をゆっくりと庭で味わうんだ。草の匂いが目を覚まさせてくれるよ」と囁くと、のんびりした生活基盤の魅力に誘惑されます。これから先も、週末のバーベキュー、自然に囲まれての朝食前のコーヒーに憧れて、都市型市民が郊外に居を移していくようようです。
画像上:郊外の一軒家
画像中:ブダペスト中心地・築100年以上の集合住宅
画像下:まだ未舗装のままの住宅地
【短信】昨日はこの春一番の暑さで、30℃を越しましたが、本日は17-18℃と天気の急変に翻弄されています。(5/5)
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