■髪切りには勇気が必要 2005.3.7 update

ハンガリーだけでなく、海外に住む日本人にとって困ることの一つが「髪の毛を切る」行為。「今回は毛先を揃えるだけにして」とか、「サイドは短く刈り込んでください」といった希望の髪形を的確に伝えるのは至難の技。たとえ理髪師がこちらの希望を言葉上で理解したとしても、伝えた通りのスタイルになるかどうかは別の話になります。

髪質が柔らかいヨーロッパ人の毛に比べて東洋人の毛質は張りがあり硬く、理容師達は首をかしげながらこしのある黒髪と格闘します。自分の前に散髪していた地元のお客さんの仕上がりは、そつが無くまとまっているのに対し、どうしてこちらの前髪が空に向かって立っているのかと文句のひとつも口にしたくなります。

そして、お礼と一緒にチップを渡してすごすご帰宅し、また別の場所を探すことになるのでした。そのため日本人同士の間では、髪を切る場所の情報交換で盛り上がります。外国人観光客が頻繁に泊る5つ星ホテルの床屋や美容院に勤める理容師の腕も、あまり信用がおけません。

また床屋や美容院を利用せず、奥さんやお母さんがご主人や息子さんの散髪をする家庭も多く見受けられます。ハンガリー人に嫁いだ知り合いの日本人女性は、「お義母さんの指導のもと、主人の髪の切り方を修行中」とのこと。左右対称でなくてもかなり大目に見てくれるそうです。

どこの会社に勤務しているのかよりも、個人の専門職の方が重要視されていた共産時代、理容師は正規料金を上回る心付けが手に入りやすいため、収入の良い職業として花形でした。個人の腕さえ良ければ口コミでお客さんは増え、商売は大繁盛。レシートや領収書を出さない習慣が根付いていましたので、大手をふって税金逃れが出来たのも人気職業であった理由のひとつでした。

ブダペストの目抜き通りや劇場が多い地区には、西側諸国のメーカーのシャンプーを取り扱うお洒落なサロン型の理髪店・美容院が軒を連ねています。仕事場に家族や友人が訪れることが日常のため、来訪者とのお喋りに興じたまま、ハサミを握りしめた理容師の手が止まってしまうことも度々あります。恰好のよいサロンが乱立するようになっても、サービスはまだまだ発展途上中です。

一方でお客さんも堂々たるもの、長い時間のかかるパーマや毛染め処理の間に少々一服と、店の入口でタバコをふかすその姿には常々驚かされます。パーマ液を浸透させるためにシャワーキャップを被ったままであったり、毛染めの途中で髪が半分赤い状態であったりするのですから。マニキュアが併設されている美容院では、店員とお客さんお互いの人生相談の場になっています。爪を綺麗に研いでもらったり、色を塗ってもらいながら延々と話をしています。仕舞いには順番待ちをしているお客さんも会話に加わります。

ヨーロッパ人はブロンドのイメージがありますが、トルコ支配の影響を長年受けてきたり、7つの国と国境を接しており、様々な人種と交わってきたハンガリー人の髪の色は茶色や栗色が主流です。それぞれ個々の髪の色が違うため、赤色やブロンドなどの毛染めが気軽に行われます。東洋人の黒い髪を羨ましがる女性も多く、日本人サッカー選手の金髪や茶髪を残念がるハンガリー人もいました。青やグレーの目をした彼女達が、しなやかな栗色の髪の毛を黒に染めて喜ぶ一方で、「脱黒髪」を目差す日本人。隣の芝生が青く見えるのは古今東西共通のようです。

画像上:普通の床屋
画像下:5つ星ホテルのヘアーサロン

【短信】此方は1月下旬から急に厳冬が訪れ、一時期はブダペストでも一昨日の晩は零下15℃までに下がり、ハンガリー東部、ルーマニアのトランシルバニア地方では零下25-30℃であったため、凍死者が続出したほどでした。しかし、暖冬交じりの変な気候と申しましょうか、最近は雪が降っては翌日暖かくなり、道がドロドロの状態が多く、少々不快に感じます。関東圏の花粉飛散がそろそろ始まったようですね。私は今週から2週間ほど一時帰国する予定ですが、今から花粉の状況に戦々恐々としています。(2/22)


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