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ハンガリーのバラエティーに溢れる食肉文化は、市場に行けば瞬く間に理解できます。鶏だけでなく、日本ではなかなか手に入りにくい七面鳥や鴨、ガチョウといった家禽類は鶏肉専門店で、仔牛やラムは牛・豚肉専門店で販売されています。鹿や猪といった獣肉のみを販売するブースもあります。近年ようやくスーパーマーケットでもパック売りを見かけるようになりましたが、市場では未だに大きな塊からの量り売りが主流です。
価格はキロ単位で表示され、100グラムや200グラムで購入しようとすると店員は怪訝な顔に。ハチノス(牛の第二胃)や骨髄は、牛・豚肉売場にて種類の豊富な臓物と共に常備され、牛タンならぬ豚タンの山積みにお目にかかることも。豚の皮は簀巻き状になってショーケース内に陳列され、隣には形が整えられて平らになった豚耳が同じく巻かれて並べられています。豚の脳みそフライも日常的に一般市民が口にするものではありませんが、ハンガリー伝統料理の一つです。
師走になるとクリスマスのご馳走の準備にむけて、肉屋は大繁盛、お客さんは品定めに大忙し。鶏肉屋の売り場の天井から、丸ごと一羽の鶏や七面鳥が連日吊るされるようになります。豚肉屋のケースでは、やはり丸ごと一頭の子豚がウィンドウの向こうから消費者を誘惑してきます。
農家ではクリスマス前になると伝統的な豚の屠殺会が催されます。最近では随分とイベント化してしまいましたが、朝早くから寒さをしのぐために蒸留酒パーリンカや自家製ワインで身体を温めながら一頭の豚をさばき、一日かけて解体してソーセージやハム、ベーコンなどを造ります。パプリカや胡椒、ニンニク、クミン等の香辛料を惜しみなく混ぜ込み、農家にある腸詰機でフレッシュな練りあがったばかりの肉を腸に詰め、早速煙で燻し始めます。クリスマスの特別料理に間に合うように、聖アンドリューの日(11月30日)から屠殺会が始まるのが慣わしでした。
ソーセージ生産地で特に有名なのは、大平原の南に位置するジュラやベーケーシュチャバ。中世には既に牧畜業が営まれていたこの地方で牛取引が行われ、遠方からはミュンヘン、ドレスデン、ウィーンなどから卸売り業者がやってきました。肉業界の中心地として誇りを持っていた肉屋達は常に消費者に対して新商品の開発を追及、交通の便の発達により販売網を益々広げていきました。味に独特の重みと濃さがあるハンガリー・ソーセージは、各スープやシチューのダシにも用いられ、名物料理にコクを加える役割を担っています。
一方、ハンガリーで最初にサラミの大量生産に成功したのは、クロアチアとの国境に近い街セゲドで、19世紀末に工場を設立したピック・マールク。元々地元の肉屋であったピックが、刑務所のイタリア人の囚人から教えてもらったイタリアンタイプのレシピに更に多くの種類の香辛料を加え、風味を強化することでハンガリーの典型的な味を定着させました。詳細なる香辛料の調合方法は今もって企業秘密。冬に製造されていたので「ウィンターサラミ」と呼ばれ、世界中でハンガリーサラミとして知られています。
ピック社の成功に追従したサラミ会社は、同じく19世紀にブダペストのドナウ川沿いに工場を建てたヘルツ社。ドイツ語でピックはスペード、ヘルツはハートという意味になりますが、二社の競合をトランプゲームに絡めたのではなく、単なる偶然の命名だったと言われています。
画像上:ソーセージの山
画像中:種類が豊富、スライス売りされるサラミ
画像下:クリスマス前、早くも丸ごと七面鳥が登場
【短信】此方は11月としては穏やかな日々が続いていましたが、先週後半あたりから急に冷え込むようになり、土曜日(11/20)にはブダペストで今シーズンの初雪が降りました。最近は強風が吹いたりして、目まぐるしく天気が変わりますが、快晴になっても日中5℃以上気温が上がらなくなり、本格的な冬の到来を感じます。(11/26)
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