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「実家の犬が恋しい!」。ブダペストで一人暮らしをする友人は、市内を走る公共バスの車内で、飼い主の足元でおとなしく降車を待つ大型犬にやさしい目線を投げかけました。大型犬は、古い型のバスで安定性がなくエンジン音が耳障りなのにもかかわらず、落ち着いた様子で伏せの姿勢を崩しません。地下鉄や路面電車でも、頻繁に犬が乗車するのを見かけます。全ての飼い主が購入しているかはわかりませんが、犬用乗車券がきちんと販売されています。
市内では数多くの立派な犬が、観光名所を綱なしで優雅に散歩しています。毛艶のよい白い被毛に黒の斑点が美しい101匹ワンちゃんの主人公ダルメシアン。100年以上前にカナダからイギリスに渡ってきたラブラドール。垂れた長い耳が床を掃除しているのは、刑事コロンボの飼い犬でもある胴長・短足のバセット・ハウンド。ブダペストはまるで檻のない動物園のよう。中国の宮廷内で寵愛されてきた歴史を持つペキニーズは、茶色の長い被毛とつぶれた顔でドナウ川沿いを観光する旅行客に愛嬌を振りまいています。
夏になると通りに設置されるレストランや喫茶店のテラスで、犬達が飼い主の食事やお茶を邪魔せずにテーブルの下でお行儀良く待つ姿は微笑ましいものです。お客様より先にお犬様に水を運んでくるウェイターは、ハンガリー人の犬好きを端的に表していますが、お犬様に構いすぎて人間のお客様に注文を聞くのをすっかり忘れている様子には驚かされます。
「8時間以上彼を一人きりにしたことはない。外出をする時は必ず行き先を告げ、お利口に留守番することを言い聞かせるのよ」とは、8歳の雑種を子供のように可愛がるおばあさん。日本では飼い犬の擬人化が指摘されますが、ハンガリー人には一笑されてしまいます。
勿論、ハンガリー原産の犬も数種存在します。代表例は、国民に最も愛されている猟犬ヴィジュラ。海外ではハンガリアン・ポインターという名で知られています。日光に照らされて褐色に光る毛並み。無駄な贅肉のないしなやかな肉体はエネルギッシュで、多くの運動量を必要とします。ヴィジュラの祖先は、9世紀にカルパチア地方からやって来たマジャール人が現在のハンガリー大平原に定住した時に、一緒に入ってきたと言われています。
長い綱状の被毛で暑い夏が過ごし難く見えるプリ。ヴィジュラと同様にカルパチアから移動してきました。自然乾燥するには丸一日かかるドレッドヘアは、寒暖の差が激しいハンガリー大平原の厳しい自然を生き抜くため。また直射日光から目を守るためのサングラスの役目も果たしています。牧羊犬として訓練されてきたので、非常にたくましく活動的です。残念ながら、被毛の手入れが困難であること、元々牧羊犬であり家庭犬としてはそぐわないことから、近年プリを飼う人が減ってきました。
17世紀にプリと掛け合わせてできた同じくドレッドヘアのプミやコモンドル、15世紀の国王マーチャーシュが常にお供に連れていたクヴァスなど、ハンガリー原産の犬は主に牧羊犬や家畜の番犬タイプが占めています。これは大平原を有するハンガリーが、農業と共に牧畜業を営んできたことに端を発します。
犬と人との距離をバランスよく保つハンガリー人。犬達は日頃から飼い主に十分な愛情と言葉をかけられ、ストレスも少なそうです。しかし、飼い主の公共へのマナーは大きく欠けています。彼らが犬の落し物を処理するのは稀で、観光名所や芝生には多くの糞が転がっています。犬への躾と愛情のかけ方は申し分ないのに、公共に対する飼い主の躾は急がなければなりません。
画像上:猟犬ヴィジュラ。海外ではハンガリアン・ポインターという名で知られています。
画像下:ドレッドヘアーのプリ
【短信】此方は秋が急速に深まり、昨晩の雨のため、終日15℃を上回ることがありませんでした。しかし、例年と同様に葡萄の出来は良い年でしたので、これからの新酒の味にも期待が持てそうです。ブダペストの王宮の丘で毎年開催されるワインフェスティバルは12日に終わってしまったものの、地方ではこれからワイン際が行われる予定です。(9/24)
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