■ドナウの宝石箱「ブダペスト」 2004.6.7 update

ハンガリーの首都ブダペストは、小高い丘に王宮を構えるブダ側と、今もかつても商業の中心地であるペスト側に分かれています。1873年にこの二つの街と「古いブダ」という意味を持つオーブダが統合し、ブダペスト市となりました。南ドイツのシュヴァルツヴァルトを源流とし、八ヶ国にまたがって流れるドナウ川が街の中心を貫いています。

八カ国の中で、景観な都市のつくりとドナウ川のコンビネーションが最高峰と言われるブダペスト。ユネスコ世界遺産に認定されているブダの丘から、対岸の国会議事堂が控えるペストを見下ろすロケーション。「ドナウの真珠」という名誉ある呼び名をほしいままにしています。真珠の光沢が最も美しく輝くのは、陽がとっぷり暮れてから。パプリカがたっぷりと入った名物料理グヤーシュ・スープでお腹がふくれ、ワインで程よく酔っ払った後、ナイト・クルーズを逃す手はありません。豪奢な建物がライトに照らされて夜の帳に浮かび上がる様子は、真珠だけでなくルビーやエメラルドまでが宝石箱からこぼれ落ちたよう。ゆっくりと進む船の中でほてった肌を夜風にさらし、しばし幻想の世界にまどろみましょう。氷点下10℃にまで下がることのある寒い冬には、流氷が悠長に川下に向かって流れています。春になるとオーストリアのアルプスから雪が溶け出し、洪水を引き起こすこともあります。

ブダとペストを結ぶ橋は1849年に完成したセーチェニー鎖橋を筆頭に市内に8本。当時、鎖橋建設のために、設計技師と建築家がイギリスから招かれました。夕方になるとペストで働いていた人々がブダの住まいに帰るためにちょっとした交通渋滞が起こります。スピードや的確さが西側先進国に遅れをとっていた元共産国ハンガリーでも、最近では荷物の宅配サービスなどが向上してきました。各オフィスから配達を依頼された大事な書類を背中のリュックに抱える若者スタッフが、猛スピードで鎖橋を自転車で通り抜けていきます。天気が良い日には、地元の人々が橋からドナウ川にゆったりと釣り糸をたらして川魚釣りを楽しんでいます。男の料理と言われる魚スープの材料である鯉が釣れるのを気長に待っているのでしょうか。

旅行者の方にとって、短い滞在期間中は最高のお天気であってほしいもの。第二次世界大戦で破壊された後、美しく復旧された王宮が控えるブダの丘をバックに、一番明るい太陽の光の中でファインダーを捉えたいものでしょう。でも四季折々、朝から晩まで目まぐるしく変わる空模様の、様々なドナウ川と鎖橋の景色のコンビネーションも乙なものです。雷雨とともにやってきそうな夕立前のぐずついた空。日の入り頃、紫色と橙色が絡まる天空。入道雲が立ち込める日差しのきつい真夏。荘厳な建築物をすっかり包み込む冬の濃い霧。それぞれの季節のあらゆる時間帯が、橋と川を立派に演出してくれます。橋も川も「どの姿もシャッターチャンス」と、旅行者に呼びかけています。


画像上:ドナウを望む王宮
画像中:ライトアップされた王宮
画像下:ブダとペストを結ぶセーチェニー鎖橋

【短信】此方は春の放射冷却とでも言いましょうか、朝は5℃前後まで気温が下がり、青空が広がるものの初夏を感じさせた先週の天気が待ち遠しいです。5月1日のEU加盟後、心なしか観光客が例年より街に溢れている感があります。ここ数日はちょっと肌寒いものの、アイスクリーム屋さんはとても繁盛(5/26)。その後、聖霊降臨祭の祝日を含めた三連休は青空に恵まれ、絶好の行楽日和となりました。


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