■ジャガイモ超不作 2006.11.21 update

ジャガイモは、寒いところで育つ作物です。普段は、こちらの夏は20℃を少し超えるぐらい。30℃以上という日もなくはないですが、まあ、あって数日。ジャガイモは、27℃以上になると、生命の危険を感じます。「死ぬかもしれない!子供をいっぱい作らなくちゃ!」。そう、子供がいっぱいいれば、誰かが生き残る確率が高くなるから。

ま、でも普段はこういう事はありません。ジャガイモは、普通、種芋を植えて、秋には種芋から子ジャガイモが8つぐらいできる。それが種芋よりすっと大きくなる。子ジャガイモは、種芋の栄養を全部吸い取って、大きくなるので、収穫の時には、種芋はどこに行ったかわからないぐらいになってる事が多いです。

今年は暑い日が異常に長かった。7月が暑すぎたから、8個の子イモがそれぞれの子供を8個ずつ作りはじめた。でも、子イモはまだ成長途中。たとえは変ですが、小学生が妊娠しちゃったようなものです。その小学生な子イモが自分の子供に栄養をあたえて育てる。水分以外の全部の栄養分(でんぷんとか)をあげてしまう。当然、小学生な子イモは、見た目は小学生な子イモのままだけど、皮と水だけになる。その暑い夏の途中で、毎日毎日雨ばかりの日々が続き、孫イモはたいして大きくなれず、小学生子イモぐらいの大きさになったところで収穫時期がきてしまいました。

もっと大きくなるまで待てないのか?と思うかもしれませんが、待てません。なぜなら、これから雨が多くなる季節、地面がぬかるみすぎるとトラクターが入れません。そうすると収穫もできません。それが終わるとすぐ地面が凍る冬がやってきます。そうなっては、地面の中のものはすべて腐ってしまいます。というわけで、しょうがないので小さい事がわかっていても収穫するより仕方がありません。

収穫した後は貯蔵ですが、小学生子イモも見た目は孫イモと同じなので、混ぜてしまえばどちらがどちらかわかりません。しかし、数週間もすれば、皮と水ぐらいしか残っていない小学生イモの水分が腐りはじめ、その水分が周りのジャガイモまで腐らせてしまいます。なので、ジャガイモを貯蔵する時は、巨大扇風機のような装置をまわして、水分を蒸発させます。

普通は、これは種芋の水分を乾かすためにやるのですが、今回は小学生子イモを乾かすためにもやらねばなりません。種芋の8倍も乾かさなければいけないイモが混ざっている事になりますから、大変です。全体量の10パーセントぐらいにもなります。あまり乾かしすぎても、孫イモがひからびてしまいますし、乾かしたりなければ孫イモが一緒に腐るのに巻き込まれてしまいます。とても頭が痛い事になっているわけです。

近所の人で、冷たい水をかけていいジャガイモを作った人がいます。オランダは堤防を作って海水を汲み出して作った土地が多いですから、たいていのところは、側溝などに流れている水は塩水です。でも、その近所の人のところには、畑の真ん中に池があって、それは淡水なので、畑に撒く事ができたわけです。もちろん、それを撒くにも、いちいち沢山のコスト(トラクターの燃料費、設備費、人件費、その他)がかかりますから、普段はそんな事はしません。ジャガイモはものすごく買い値が安いので、そんなコストをかけていたら、作る費用が売る費用より高くなってしまうからです。

しかし、今年、水を撒く事によって、地面の温度がさがり、すなわち、ジャガイモの温度が下がったため、小学生子イモが孫イモを作ってしまうのを防ぐ事ができました。なので、彼のところのイモは大きい立派なジャガイモに成長しました。今年はヨーロッパ中で超不作だったので、大きいイモが欲しいところ(長いフライドポテトを作りたい会社とか)からかなりいい値段がつけられるでしょう。まあ、そういう人もいますが、大多数は作っただけ、売っただけ損するかも、というぐらい状態は悪いです。

ヨーロッパはトラック輸送がめちゃめちゃ安いので、買い手は、たとえばオランダだけ不作で、他の国が1、2セントでも安いとさっさとそっちから買ってしまいます。その場合、オランダの農家は不作でピンチな上に更に追い討ちをかけられます。作った値段以下に値下げする事は無理ですから。そうなっては、もう農家やめるしかありません。しかし、今年はヨーロッパ中が不作なため、収穫できた孫イモは、小さいながらなんとか売れるでしょう。

うちはここ何年かもうジャガイモは作っていません。うちのような小さい規模ではもうやっていけないからです。日本もそうだと思いますが、どんどん人件費が安い国から農作物を買うようになっていっています。オランダは、農作物への農薬使用の規定がどのヨーロッパの国よりも厳しく、そのおかげで作るコストが上がってしまっていますが、消費者にとっては、オランダ産の作物を買うという事は安全をお金で買ってるともいえるわけです。ただ安いだけで他の国から買ってくるというのが、安全性を考えると、そんなにいい事なのかわかりません。

でも、オランダの農家の絶滅する日は毎年じわじわと近づいてきています。こういう超不作の年があると、それがきっかけで更に多くの農家が店じまいするでしょう。みなさんも、たまには作物がどうやって育っているのか考えたりしてみてくださいね。

画像右上:小猫も冬毛になってふさふさになりました。
画像左上:作業がおわると、トラクターや、すべてのパーツ、道具を洗います。洗った後は、油を塗って錆びないようにしておきます。
画像右下:まともな農家は、整理整頓がきっちりできています。レストランでも、美味しいところは厨房の整理整頓は完璧でしょう?!
画像左下:羊も元気にしています。春に生まれた子供も、もうどれが子供か親かわかりません。それどころか、もう数ヶ月後には子供産みますよ!


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