■奇麗なお墓はちょっと悲しい 2005.12.19 update

寒くなりました。アップルボールの美味しい季節です。パイの中にまるごとリンゴが入っています。これをレンジで温めてアイスクリームを添えて溶けたところをからめて食べると、これ以上の美味しいものはない、という気分になります。季節の食べ物ですから、もし、オランダに冬来る機会があったら是非試してみてください。

さて、うちから車で10分ほどのところに、小さいお墓があります。そこは、まわりには畑しかない堤防の上で、そこを通る人といえば、道に迷ったツーリストか、地元のトラクターか、サイクリングする人か、とにかく大きい道からも村からも町からも離れているところで、どうやったら事故がおこるのか謎な場所です。

私が最初にそこを見たのは、もう15年も前。お花が供えられた小さい石が置かれた場所でした。1年に二度か三度ほどそこを通る機会があるのですが、毎年少しずつ大きくなっているようで、そのうちブロックで小さい四角に囲われたものができ、クマや人形などが置かれ、小さい木が植えられ、どんどん立派になていくその場所は、何年たってもその死を忘れられないどころか、どんどん悲しみが増しているかのようです。多分、小さい女の子が死んで、その親が暇をみつけてはそこへ足を運んでいるのでしょう。見る度になぜか悲しくなります。

日本ではお盆があって、死んだ家族がその日に帰ってくるとか、お墓の掃除に行ったりなんかしますよね。オランダでは、お盆もお墓の掃除も特には行きません。教会の敷地内とか、村や町の墓地に埋められたりしますが埋められる際、多額の費用を支払い、管理人が掃除しているようです。自分が通う教会に埋められている場合は、見ようと思ったら毎週見られるわけですが、他の教会や、遠い墓地に埋められている場合は、お葬式の時に行ったっきり、という場合も少なくありません。

うちの近くに2つ、村と町の墓地があるのですが、埋められた時のままだなあ、という墓やもあれば、やたらと奇麗に飾られている墓もあります。そこに置かれた石も、大きかったり特殊だったりすればするほど、花で飾られていれば飾られているほど悲しく感じます。特に、そこに刻まれた日付から年月が経っていれば経っているほど。

私はオランダに住んでいて、両親は日本で健在です。でも、人間は必ず死ぬので、いつか2つお葬式があるわけですが、知らせを聞いてすぐ飛行機に乗ったとしても、まず、お通夜はともかく、お葬式にも間に合うかわかりません。それは、もうオランダにやってきた時から思っている事ですが、仕方がありません。日本に妹がいますが、両親のところからは1000キロも離れているところですから、なかなか墓参りにも行けないと思います。その場合、お墓を奇麗にするのは1年に一度だけ、という事になりますが、それはそれで幸せな事ではないのか?と思ったりもします。

死んだ人の事を忘れられる、忘れていられる、という事は、その死んだ人は幸せな死に方をしたのではないか?と思うからです。死んだ人が、不幸な死であればあるほど忘れられず、お墓や、事故ならばその死んでしまった場所へ何度も足を運ばずにはいられなくなるようだからです。上に書いた、立派に飾られていく事故現場に花を供えにきている人は、きっとお墓にも同じぐらい通って奇麗にしているのだと思います。

こちらでは、火葬はわりと少なく土葬で、棺桶に入った人がそのまま埋められます。なので、余計にそこにその人がいる気配がするのでしょうか。宗教と、都会か田舎かでまた違ってきますが。●●家の墓、というのではなく、●●の墓、と、その人そのものの墓です。私が死んだらどこにどうやって埋葬してもらおうかな、と考えてみたのですが、私の場合は死んだ後の事はどうでもよく思え、ま、うちの庭の隅にでも埋めといてくれればいいや、なんて思っています。30年ぐらいたったらまた考えも変っているのでしょうが。

画像右上:アップルボール。パイの中にまるごとリンゴが入っていて、これをレンジで温めアイスクリームを添えて食べる。
画像左上:うちの村のお墓。プロテスタント系なので、かなり地味です。カソリックだと、墓石に彫刻してあったり、彫刻がくっついていたり、華やかです。
画像右中:管理人のおじさんに遭遇、落ち葉の掃除をしています。掃除機の逆のような道具で、風を吹き付けて落ち葉を除いていきます。
画像左下:先日亡くなった人のお葬式への案内状。日本のものとトーンが似ています。この日は火葬でした。「心痛と共に夫に別離を」という言葉と共に、亡くなった方の氏名、生まれた場所、誕生年月日、亡くなった場所とその年月日、喪主の氏名と住所、そして「10月21日金曜日の15時より、ミデルブルグの○○三番地において火葬を執り行います。終了後は火葬場のラウンジにてお悔やみを言う機会を設けてあります。なお、お花はご遠慮いたします」との案内が印刷されています。


<<もどる