■ニュース番組、報道か啓蒙か? 2006.12.5 update

トルコでも、夜7時台はニュースの時間です。各局キャスターを据えて、ニュース原稿を読む姿は日本のニュース番組とほぼ一緒です。しかし、日本から来た私が、8年経ってもどうもなじめないスタイルがトルコのニュース番組にはあります。VTRのすべてにBGMがあり、さらに関連映像としてはあまりにも大仰な映像や、関係ない映像が挿入されていることがあるのです。

先日の千島沖地震のトルコにおける報道でも、この傾向が見られました。トルコは99年の地震での大打撃を受け、地震報道には重きを置いています。地震の怖さを国民に伝え、準備を怠らないようにと啓蒙することは報道局の大きな責務です。しかし今回は、責務の大きさを感じるあまりに、すこしおおげさになってしまったようでした。

そのときのVTRの概要は、まず「日本、M8.1に揺れる!」の大文字が画面いっぱいに映し出されたあと、過去何度も放送された、日本のテレビ報道局のカメラが捕らえたゆれる局内の映像、先のインドネシア地震の津波の映像、そして瓦礫の下敷きになって呻くトルコ地震の被災者の映像、走り回る救助隊の映像が流れました。これらとともに「日本に津波の危険!」と緊迫したトーンでのアナウンス。それから今回の地震の震源地のイラストが流れ地震の概要が説明され、恐怖感をあおるBGMとともになぜか映画「ディープ・インパクト」の大津波映像が、延々と流れました。

まあいつものことだけれど、さすがにこれはまずいのではないか、と苦笑していた私の耳に最後に入ってきたのは、キャスターの「幸いこの映像のような悲劇は日本を襲わずにすみました」の声。これでは報道なのか恐怖心をあおるだけのショーなのか、まるでわかりません。案の定、心配した友人から何本か電話も入ってきました。

地震以外にも、引ったくり被害を防ぐための注意喚起を図るあまりに被害者の血だらけの映像をこれまた恐怖映画のような構成で流したり、麻薬の怖さを教えるためにと、映画の中の麻薬中毒者の映像を流したり、交通事故の報道のときに映画の中のカーチェイスとその後のクラッシュの映像が流れたり、トルコのニュース番組は、時々首を傾げたくなるものが多いのです。

細かいことを上げれば本当にきりがなく、「中国の祭りで死者が!」の大文字の後ろに、なぜか日本のお柱様の映像が流れていたり、日本食レストランの料理長さんがお魚をさばく映像に「アリラン〜〜〜、アリラン〜〜」とBGMがかぶされていたこともありました。私が日本人なのでこれらの間違いはわかりますが、この調子では、他の知らない国に関する報道を、ちょっと鵜呑みにはできないな、と思ってしまいます。

また、VTR後にスタジオに戻ったときに、キャスターがコメントを入れるのも必ずのことなので、視聴者は製作者、キャスターの考え方をそのまま受け取ることとなります。ニュース原稿なのにもかかわらず、「邪悪な白い粉をトルコへ運び込む悪魔、ヘロイン密輸業者の摘発捜査が行われました」、「アルメニア虐殺があったという許しがたい嘘の発言をした作家が…」などの主観の入った修飾語がたくさんの文章をキャスターが読むのです。そしてVTRからスタジオに戻った後、キャスターが「許せませんね」などといってしめる様子は、どちらかというと日本のワイドショーに近い感じです。

各国報道のスタイルはさまざまなので、これを「ニュースショウ」として観る分には楽しめて良いのですが、ときおり、本当に情報のみのシンプルなニュースが見たくなるときがあります。そのような時は、ニュース専門チャンネルがいくつかあるのですが、その中から選んで視聴することになります。実際の視聴率を見ると、ショウ形式をとっている局が独走状態ですが、これはメインニュースの前後に人気ドラマやクイズ番組を置く編成になっていることも大きいと思われます。

識字率も日本ほど高くはなく、学校の少なさが問題になっているこの国では、普及率の高いテレビでの啓蒙、注意喚起は必須です。わかりやすく、記憶に残るようにという努力はとてもよくわかるのですが、大げさなBGMや煽りのない報道番組がもう少し増えてくれると良いのにな、と思うのです。


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