■鶏インフルエンザパニック! 2006.1.16 update

トルコのテレビで、ひと月ほど前から鶏肉の会社のキャンペーンCMが流れ出しました。鶏インフルエンザにおびえる消費者に向けてのもので、その会社の製品は安全であることを強調するものでした。鶏インフルエンザに関するニュースが出てから二日と経たないうちのこのキャンペーンは、トルコにしては珍しくすばやいもので、目を見張ったのを覚えています。その時点では、トルコ国内では鶏インフルエンザは無いとされていました。

私の今まで見てきた感じでは、トルコの人たちの病気を恐れる気持ちは強いです。今では笑い話になってしまいましたが、SARSが流行していたときに、私の家に通いできているお手伝いさんが、突然無断欠勤してしまったという事件がありました。私が「アジア人」で、SARSが中国、つまりアジアではやっているので、危険だからあの家には行くなとご主人に止められたのだそうです。私はアジアには一年近く行っていないし、だいいち日本にはSARSはありません、といって説明しましたが、説得することは不可能でした。友人たちはこの話を聞くと大笑いし、彼女たちの無知さを笑うのですが、本人たちにとっては真剣な問題だったはずです。

これは極端な例に聞こえるかもしれませんが、トルコの人々にとって、このような流行病は「得体の知れない恐ろしいもの」であることが多いようです。保健省などはこのような感染症の予防法を各メディアで繰り返し、いたずらにパニックになることの無いように警告を発していますが、トルコのマスコミがこのような事件扱うときに、BGMや映像効果などで「恐怖感」を煽っていることも否めません。特に、識字率の低い地域では情報収集をテレビに頼ることになるため、「映画の中のような恐ろしい病気が身近に来た!」という恐怖感がいっそう募るのだと思われます。

そんなパニックに陥りがちの人の多いトルコで、とうとう鶏インフルエンザでの死亡例が出てしまいました。東部のドウベヤズットで原因不明で死んだ鶏を食べて亡くなった子供たちのニュースは、瞬く間にトルコ全土に広まりました。その後、関係省庁が乗り出しての調査の結果、鶏インフルエンザは次第に西上し、2006年1月12日時点では、首都アンカラと大都市イスタンブルを含む11県で鶏インフルエンザウイルスが見つかり、全国で13人が治療を受けています。毎日テレビのトップニュースはこの病気に関することで、人々の危機感も頂点に達しています。関係者は人々がこれ以上パニックに陥らないよう、鶏肉も卵もちゃんと生産されているものなら食べても問題ないと言っていますが、あまり効果は無いようです。

さらに、ここ連日の寒さで気温が下がり、風邪を引いた人たちがいっせいに「自分は鶏インフルエンザではないか?」と疑うことで、パニックが増長されてしまっています。保健省は、一般市民からの鶏インフルエンザに関連する相談を受けるために、184という特別な番号を設置し、告知もしましたが、自分が懸かったのではとパニックになった人は、この番号を調べずに救急サービスの122に掛けてしまうのです。そのため救急サービスは常に混戦状態となり、本当に救急車を必要としている人々に迷惑がかかっています。救急サービスはマスコミを通じて、鶏インフルエンザに関して掛けてこないで欲しいと人々に懇願しています。

このようなパニックを沈静化させるために、トルコ政府は新しい対策を打ち出しました。新聞を読まずとも、ニュースを見なくとも、テレビドラマが大好きとされる視聴者に向けて、ドラマの放送時間中に鶏インフルエンザに関する正しい情報を盛り込んだショートフィルムを放送しようというものです。政府は、中でも特に各局の視聴率の高いドラマを選定しました。ドラマの視聴者はCMの多さで内容が中断されることにも不満なので、この教育フィルムは視聴者の神経を逆なでする危険もありますが、もしかしたら、映画やテレビで見たウイルスパニックを心の中で描いている人たちには、同じ映画やテレビで正しい知識を伝えるというのが案外いい方法なのかもしれません。効果のほどはわかりませんが、来週の放送を楽しみにしたいと思っています。


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