■「お姉さん綺麗だね」はセクハラか!? 2005.11.21 update

トルコを旅行したことのある人なら、観光地で声をかけてくるトルコ人をたくさん見かけたことがあると思います。もちろん片言の英語や日本語で商品を売ろうとしているのですが、もしあなたが女性なら、「綺麗ですね」、「結婚してください」などと言われたこともあるかもしれません。

私がトルコ語を理解できるようになってから、一番悲しく思ったことは、道で男性が投げかけてくる言葉の卑猥さや失礼さをも判ってしまうようになったことでした。ラテン気質のトルコ男性は、女性と見ると何かひとこと言いたくなるようです。道で声をかけられたり口笛を吹かれたりすることにまるで慣れていない日本人の私は、8年たった今でも非常にいやな気持ちになることが多々あります。もちろん隣に男性がついている女性に声などかけようものなら、刃物沙汰にもなりかねないので、この手の言葉によるセクハラの被害者は、主に一人でもしくは女性のみで歩いている人たちです。

実はトルコの法律では、卑猥な言葉や辱めるような言葉を他人に投げかけた者には軽い罰金刑が規定されていますが、現行犯で捕まることがめったにないこと、証拠があげにくいこともあいまって有名無実化しています。

しかし、EU加盟候補への検討がはじまり、法律や人権問題が見直される中、これまで不快な思いをしてきたばかりだったセクハラ被害者も立ち上がるようになってきました。被害者がテレビ番組に出演して不快感を訴えたり、実際に卑猥な言葉を投げかけた者に罰金刑が課されたというニュースなどが報道されました。そのような動きの中、女性の社会進出も進むトルコの、サッカー地方リーグでちょっと変わった事件が起きました。

黒海地方のトラブゾンで行われた、トルコサッカー3部リーグの試合の女性副審であるセブキさんに、不快感を与える言葉を投げかけたとして、その試合で救助隊員として働いていた若者二人がハーフタイム中に退場処分になったというのです。セブキさんが、前半の間中、絶え間なく言葉によるハラスメントを受けたとするのに対し、退場処分となった若者たちは「綺麗だねぇ、姉さん」といっただけでこれはセクハラには当たらないと主張しています。

もちろん、「綺麗だね」は褒め言葉なわけですが、言い方によっては不快感を与えるいやらしいものにもなりかねません。しかも、トルコでは、既婚の女性を「お綺麗ですね」と他意なく褒めたばっかりに、怒った旦那に褒めた人が殺されたという事件も起きたことがあるところです。私の見たところでは、「美しい人が居たら声をかけるのが礼儀」という考え方はトルコでは一般的ではないようですし、男性が横にいる場合は声をかけないところから推しても、知らない女性に声をかける、ましてや卑猥な言葉を投げかけることは、失礼なことであるという認識はあるようです。

ただ、この失礼さは当の女性に対してではなく、横に居る男性に対するものであると受け取られるようなのです。つまり、男性の所有物であるところの女性に声をかけたり褒めることは、他人のものに食指を動かす=その男性を貶める、ということになるわけです。

このニュースは、その週のB級ニュース、面白ニュースとして、かなり世間を騒がせましたが、私が問題に思ったのは、単なる野次に怒って退場処分にまでしたこの女性副審が大げさだ、という批判も少なからずあったことです。「綺麗だねぇ、姉さん」はセクハラではないとの主張でしたが、もし自分の配偶者がこの言葉をぶつけられたら、褒め言葉ではなく侮蔑と取る男性がほとんどであるということを考えても、やっぱり退場も仕方なかったような気がします。この若者二人に罰金刑が課されたかは不明ですが、副審の彼女が後半仕事に集中するためには、私は大げさな処置とは思いませんでした。

画像:ブルーモスク(スルタンアフメット・モスク)。トルコでは人口の99%がイスラム教徒(トルコ政府観光局)。


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