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カレッタ・カレッタを守れ! 毎年夏がやってくると、トルコの新聞にはこの一文が踊ります。カレッタ・カレッタとは、アカウミガメの学名。トルコでは通常でもこの学名が使われています。
毎年6月から8月半ばにかけて、同じ浜に数回、約2週間の間隔で上陸産卵するこの行動は、毎年地元の大学や有志、環境保護団体に見守られ、無事孵化してから海に向かって走るその小さい姿は、夏のニュースのひとつです。日本では徳島県の大浜海岸が有名だそうですが、トルコでは南の地中海沿いにあるいくつかの海岸から、毎年このニュースがやってきます。
ところが今年、このカレッタ・カレッタの産卵に大きな問題が持ち上がりました。南トルコ、アンタルヤ県の知事が、カレッタ・カレッタの産卵地である海岸を持つ地中海に面した8つの区域の区長に、「カレッタ・カレッタの産卵のための海岸の環境保持の要請とその詳細」の文書を送りました。産卵、孵化が自然に近い形で行われるように、明かりの調整もしくは人家の明かりが来ないようにその前にさえぎるものを置くなどの処置、産卵時期の海岸への立ち入り禁止措置など、実に細かな項目に渡っています。しかしちょうどその日に、この中のフィニケ区の海岸線が「海岸の美観のため」という理由からブルドーザーで均されてしまう、という事件が起きたのです。
朝の海岸散歩の際に、いくつかのカレッタ・カレッタの卵を見ていた地元住民は、これらがブルドーザーでつぶされてしまったことに心を痛め、早速運動を起こしました。陳情書を持って市役所を訪れたのです。しかし、受付で「担当者、市長は居ない」と跳ね返され、陳情書も受理されないまま帰ってきました。聞きつけたマスコミに対する市長のコメントは、「私は47年間ここで育ったものだが、カレッタ・カレッタを見たことは一度もない。もしかしていないとも限らないが。私は住民が整備を要請したのでブルドーザーを入れたのだ。ほかの方法では不可能だった」というものでした。
しかし、生物学の大学教授がトルコの中でも第二級のカレッタ・カレッタの産卵地であることをしめしたこの土地に、卵がないという可能性は低いのです。そしてたくさんの動物の、絶滅を目の当たりにしてきたトルコの人たちにとって、このカレッタ・カレッタも、種の保存に人間が努力しなくてはいけない動物だということが、たびたび報道されています。一月前にも、心無い何者かが、産卵のために上陸したカレッタ・カレッタを殴って殺すという事件がおき、このようなことは許されないことであり、皆がこの種の保存に協力するべきだと大きく報道されたばかりでした。
そして当然この事件も大きいニュースになり、翌日市長は再びマスコミの前に立ちました。しかし今度は、問題のあった海岸に、カレッタ・カレッタの模型を乗せた「カレッタ・カレッタ産卵地」の看板を立てる儀式を行うということで、です。市長はなおも、住民の要請でブルドーザーを海岸に入れたことを主張しましたが、同時に「これからは産卵地を守る運動をする」とコメントしました。そして看板を砂浜に打ち立て、カメラの前でポーズを取りました。パフォーマンス好きな、トルコの政治家ならではの対応だと私は思いました。
ところが問題は、この市長の予想以上に大きくなってしまいました。マスコミに大きく報道されたことが原因でしょうが、知事が、この市長に対する正式な調査を行うと宣言したのです。最初にこの報道をした新聞の記事を、報告ととらえて調査を開始するという言葉にも、マスコミの力の強さが伺えます。実際に調査が行われているのかどうかは今のところ不明ですが、マスコミ、ひいては世間が納得するように取り繕うのも結構だけれど、その労力と費用を、この可愛い亀さんたちの環境を整えるために使ったほうが早いのではないか、という気がしてしまうのです。
8月の終わり、孵化して海に向かうことのできるカレッタ・カレッタを、一匹でも多く見ることが出来るように、そして海に帰った彼らが間違ってごみを食べてしまうことのないよう(人間が海に棄てたビニール袋をクラゲと勘違いして食べたカメが窒息死する事件が良く起こります)、私たちが環境を整えることが、ひいては人間にも気持ちのよい環境を作ると思うのです。
画像右上:南トルコ、エーゲ海
画像左下:アンタルヤ県アンタルヤ市の海
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