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トルコのテレビ業界では今、ドラマが大ブームです。各局、毎日それぞれ違った二本以上のドラマを放送するほどで、一人の役者さんが違う局の同じ時間帯のドラマに出演しているというのもよくあります。脚本家が1シーズンに4本の違うドラマを並行して書いているという状態にもなっています。
トルコでは、人気が出たドラマは間に休みを入れずにどんどん続きを製作するので、長寿ものになると3年も4年も休みなしに放映が続いているものもあります。間がまるで切れないので、出演者もスタッフも、そして何よりも脚本家の方は大変なようです。1クール(13回)前提でストーリーを構築していたにもかかわらず、視聴率がいいから続きを取れといわれてやむなく話を広げてゆき、最後にはなんだかわけがわからなくなっている…というドラマをよく観ます。
さらに、人気が上がったためにほかの放送局から大きなお金を積まれて引抜かれ、気がつくと人気ドラマがほかの局に異動して放映していることがあります。それだけでもびっくりですが、人気ドラマを奪われた放送局は腹いせに(?)、そのドラマの過去の放送分を繰り返し放映するということもあります。去年人気が出たホームドラマは、二度も放送局を移動したために、3つの局が同じドラマを同じ時期に放送していました。
しかもホームドラマだったために、チャンネルを替えるたびに子役の大きさが変わっているという変な状態になっていたのです。そのうえ主演女性のスキャンダルが発覚し、役はそのままに役者が代わってしまいました。さらにさらに、父親役の主演男性のスキャンダルも発覚、降板してしまいます。それでも視聴率を取る限り、残ったキャストで放送は延々と続くのです。
トルコのドラマ業界は、視聴率が悪ければ、せいぜい3回放送して打ち切り、ひどくなると1回の放送のみで画面から消えてしまい、ひとたびお金になると踏めば各局の仁義なき奪い合いが繰り広げられます。この戦いで利益を得るのは主に局やプロデューサーで、悲しいかなコピーライトのある脚本家や、出演者、スタッフには何もないのが現状です。
3年前に、とあるテレビ局の二時間ドラマに出演が決まったとき、プロデューサーの方に一枚の紙を手渡されました。それはそのドラマの放送局と交わす「権利放棄書」で、とった作品の再放送、DVDなどのメディアの発売、上映に関しては金銭を要求しないというものでした。そして、それにサインしないとお仕事はもらえないのです。実際、サインもせず、その後権利を主張して裁判を起こしたとある役者さんは、今はどこからもお仕事がもらえず廃業なさったそうです。その後、私の主演したその二時間ドラマは、3年間の間に20回ほど再放送されましたが、私はじめスタッフはもちろん何の金銭的利益も受けていません。先回お話しましたとおり、トルコは海賊版天国であり、DVDや再放送その他の収益を出演者などに分配するなどにお金をかけると、値段がつりあがって、対抗テレビ局や海賊版に負けてしまうというのが彼らの言い訳です。
トルコの海賊版業界は本当にすばやく、かつ法整備されていないことをよく知っていて、莫大な利益を上げているそうです。一時期、日本のアニメ「ポケモン」が流行ったときは、あっという間に「ポキモン」「ポッケモン」などの偽物と、さらにそのまんま「ポケモン」のロゴを印刷した商品が多数出回りました。消費者も、日本のようなブランド信仰が薄いせいか、「そのように見えて機能的に差がなければ安いほうがいい」「内容が同じなのに高いほうを買うのは馬鹿馬鹿しい」という考え方が浸透しています。
先月の偽ラク事件で死傷者が多数出たことや、人気告発番組の影響で、食品に関しては消費者の意識も変わってきていますが、死活問題ではないこのような本やCD、娯楽品などは海賊版に負けっぱなしという状態です。もちろん、製作者や出演者には死活問題なので、歌手や作家や写真家などがたびたび記者会見を開いたりして、消費者に海賊版を買わないように呼びかけていますが、正直なところ、海賊版の安さになれてしまった消費者を正規品に取り戻すのは難しいようです。
テレビという、しかもドラマというトルコの人たちが熱心に視聴している番組の放送に関して、もう少し局が利益優先に走らずに、せめて製作者やスタッフ、出演者の利益をも守るようにすることが出来れば、時間はかかりますが自然とコピーライトというものが視聴者にも意識されるようになると思うのですが、それは出演している側の愚痴に過ぎないのでしょうか。
ヨーロッパ連盟加入に向けて、政府は着々と法の整備を行っています。特に、人権を守るための法の不備が指摘されているため、関連法案は続々と国会に提出されています。実は文学作品の著作権に関しては、数年前に著作権保護法が成立したそうですが、浸透度も低く、また判例も少ないことから、実質は無いようなものになってしまっているようです。
旅行に来たかたは、観光地や人の集まる広場などに、すぐ逃げられるように折りたたみ式のテーブルを出して海賊版のVCDやDVDを売っている人を見かけることがあると思います。また警察の手入れが来て、商品をテーブルごと抱えて路地の陰に隠れている売り子などを見ると、さすが商魂たくましいと私も感心してしまうのですが、同時にちょっと苦々しい思いになるのです。
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