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昨年お話したとおり、2005年1月1日をもって新トルコリラが流通し始めました。マスコミの大々的な宣伝もあって、ちょっとしたお祭りムードでの新札移行でした。まず大晦日の夜11時半から翌1月1日午前12時半まで、各銀行のATMがストップ。また、すべてのクレジットカード支払いのシステムも一時的に止まったため、大晦日の夜お楽しみに出かける人はカードに頼らないように、というお知らせが、連日、新聞やテレビで繰り返されました。
そして新トルコリラは新年とともに街中で見かけるようになりました。もちろん一度に6桁もゼロを棄てるという大断行、消費者の頭の中は少し混乱していますが、基本的に移行はスムースにいっているようです。同じ価値に当たる新札を、色、デザインともに旧札とまるで同じにしたことが役立っているようです。たとえば、今まで1,000,000と書かれていたスペースに大きく1とだけ書かれている紙幣は、なんだかおもちゃのようだし、何よりも同じ価値があるのに安っぽい感じですが、慣れればこれがトルコの新しいお札として浸透するのでしょう。
テレビなどでの街頭インタビューを見ていても、なぜか旧コイン時代にとっくに鋳造もやめ、市場でも流通しなくなっていた10,000リラと同価値の1クルシュ(昔のトルコの貨幣単位で、100クルシュが1リラに当たります)が鋳造されたために、お財布に1クルシュがたまってしまって使いようもなくて困るということのほかは、特に問題はないと街の人もいっています。
しかし問題は、消費者の混乱ではなく、狡賢いトルコ人が起こしているのです。まず新年早々、タクシーメーターの切り替えの列に並んでいたタクシー運転手に、「割引料金でメーターを新リラ対応に切り換えてあげる」と声をかけ、300人近くの運転手からお金を騙し取るという詐欺事件が発生しました。この犯人はまだ捕まっていません。そんなわかりやすい詐欺に引っかかるなんて、なんて間抜けな、と思うのですが、その間の抜けたところがトルコの人のかわいいところというか、狡賢い人たちが暗躍する土台になっているようです。
続いて、海賊版天国のトルコ、新札になって20日も立たないうちに全国各地で偽札が出回り始めました。出版物やCDなどの海賊版問題があとを絶たないトルコですが、偽札に関しても悪者たちは遅れを取らなかったようです。これまでなかった、100リラという一番大きい金額の偽札で少額の買い物をして、釣りを持ってゆくという手口も各地で発生。100リラ札を差し出すと、お店の人は機械に通してみたり、陽に透かしてからおつりを差し出します。貨幣を発行している省庁も、偽札にはかなり警戒していたようですが、あまりの早さにびっくりしていたようです。
そのほか、そこまでひどくなくても、各商店が商品価格を「切り上げ」にしたことが、消費者の反感を買っています。「きりがよい数字に」といいながら、こっそりと大きな値上げをしているところもあるようです。インフレ問題にあえぐトルコが、ここ最近の経済の安定と、EUへの加盟をにらんでのデノミ断行でしたが、思いのほか穏やかに移行は進んでいます。
2005年の一年間は、移行期間ということで、旧トルコリラと新トルコリラで同時に価格表示され、領収証も旧トルコリラ表示が認められるそうです。私の個人的な予想では、ほんとうの混乱は2005年の年末に起きるのではないかと思っています。この一年の間に、レジの機械などを取り替えるのを先延ばしにしていた人たちが、いっせいに機械を取り替えなくてはいけないことになるからです。もちろんそれまでに旧札がすっかり街中から姿をけして、新トルコリラのみに成っていれば何も問題はないのですが。
日本人の私にとっては、きっとこれからも体験することのないであろうデノミ断行、トルコ政府の威信をかけた一大事業であっただけに、マスコミの煽りや街の人の昂揚感が楽しい行事として心の中に残りました。あとはこのデノミの効果があって、トルコのインフレに歯止めがかかり、経済状態が落ち着くことを一消費者として願うばかりです。
画像:上段が新札、下段が旧札。肖像は、“トルコ建国の父”ムスタファ・ケマル・アタチュルク(1881-1938)。
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